こけしブログ クラブこけし物語

クラブこけし物語と題したストーリーによって 所有するこけしを紹介

カテゴリ : クラブこけし物語(本編)

お盆真っ只中のある日、何も予定のないクラブこけしオーナーが店でぼんやりしていると、
委員長を筆頭にワイワイとこけしの一行が店を訪ねてきた。オーナーは頭を巡らす。
(確か赤ヘルちゃん、笠子ちゃん、トシオちゃん・・・ダメだ、後は思い出せない。)
ウズラとオカズと土湯一族
彼女等はオーナーの愛人が営むこけしモデル事務所の娘達であった。
「オーナーさんこんにちは!お盆いかがお過ごしでしたか?今私達は親睦を図るべく、
港屋一門で散歩をしてまして、こちらにも挨拶がてら寄らしてもらいましたよ!」
同門と言うだけに皆似通った雰囲気があり、一度紹介を受けた者もいるのだが、
どうやら新顔も混ったりで、正直オーナーには小寸の娘達の区別が最早ついていない。
「ええっと、委員長ちゃん、何だか人数が増えたような・・・」
「よくお気づきで!背丈も似ていて結構見分け辛いんじゃありませんか?」
「いやいや、皆可愛らし娘達ではないか。」とりあえず受け答えるオーナー。
予てより愛人のスカウトに偏りは感じいてたが、彼女は区別ができているのだろうか?
そんな愛人への疑問を禁じ得ない。絶望的に覚えられる自信はないながらも、
一応礼儀としてオーナーは新顔の娘の紹介をしてもらおうと委員長を促す。
「じゃあ、家の近いエノキちゃんが紹介するわね。エノキちゃんお願いね。」
「はい!私の左の娘が“ウズラ”ちゃん。そしてその左が“オカズ”ちゃんですよ!」
オーナーがハッとする。(エノキ、ウズラ、オカズ・・・食べ物繋がりで覚えやすい!)
「私、卵みたいな丸顔なのでウズラといいます。社長(愛人)の命名です!」
「私は父の名をちょっとひねって“オカズ”です。私も社長さんに名付けてもらいました!」
これなら覚えらそうだと、オーナーは笑顔でウズラとオカズに挨拶をした。
今や大所帯となったモデル事務所に於いて、愛人もどうやら命名には苦労し、
それなりに根拠を持たせつつ工夫をしたことを察したオーナーであった。
つづく
ウズラ
○渾名:ウズラ(土湯系)
○工人:
野地忠男
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オカズ
○渾名:オカズ(土湯系)
○工人:
渡邉和夫(二代目浅之介)
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浅之助型、由吉型、粂松型、七郎型・・勉強(興味)不足で、
この辺どれも同じに私には見えてしまう土湯湊屋系列でございますが、今回少~しだけ、
話を作りながら見えてくるものもありました。引き続き地道に精進します。
果たして所有者である愛人は区別が出来ている、、わけではないようですが、
『カワイイから』という感性がモチベーションのようです。好みなんですね。

その日、クラブこけしでは新人フロアレディ採用面接を行っていた。
不景気で売上も横ばいの中、採用ハードルも高くなっている昨今である。
面接に来たのは紅葉のような胴模様のある、全体にさっぱりとした印象の娘であった。
面接官はクラブこけしのオーナー自らが行っていた。
モミジとE
「ではでは、自己紹介からお願いしようかな。」
「はい、岩手から来たエイキチといいます。」
「女の子なのに“エイキチ”とな。もし採用したらお店では源氏名が必要かのう。
う〜ん・・・じゃあ“モミジ”でどうかな?胴模様そのままであるが。」
「モミジですか・・・エイキチ的にはいいんですが、“EIKICHI”が何と言うか・・・。」
「?何を言っているのかな?」
「だから、私的には良いのですが、EIKICHI的にはどうかということで。」
「やっぱり何が違うのかわからんのだが・・・。」
「『メタ認知』ですよ。『メタ』というのは『高次の』という意味です。
高次からの自己認知、つまり自分自身を第三者的視点で客観的に認識することです。」
「わかるようなわからないような・・・。」
「何か決断や判断を迫られた場合、自己の直感以外にそういったメタ的、
つまり第三者的感覚を持つことで、冷静な決断が行えるということなのです。」
「賢げな事を言うのう。どこでそんなことを学んだのかね。」
「先程のは永ちゃんの逸話です。実は私、名前のせいもあり矢沢永吉ファンです!
彼はプライベートの『矢沢』ではなく、スター『YAZAWA』として、
自らを高次から客観視し、そのスター性を高めてきたのです!!
YAZAWAに限らずイチローも然り、つまりオーナーにも必要な大物の理論なのです!」
「私も大物になれるかね!凄い理論を聞いた気がするのだよ!
ついてはOHNAH(オーナー)、君を“モミジ”と命名するがいいかな?」
「モミジOK!やっちゃえ日産!」
上手いことオーナーをおだて上げ、めでたく採用された理論派のモミジであった。
つづく
モミジ
○渾名:モミジ(鳴子系)
○工人:
田山和文
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私は矢沢ファンではありませんが、永吉型という一点に引っ掛けた浅い発想でした。
胴模様は鳥足の方のモミジを何故か連想していますが、本当は菊の花のようですね。
私も良くは分かっていないメタ認知的な話、何となく伝わりましたでしょうか。
言われれば「ふ〜ん」ですが、実践的なところは良くわかりません。

クラブこけしオーナーの愛人が営むこけしモデル事務所には近年多くの津軽娘が所属する。
元号が『令和』となって間もないある日、クラブこけしの“ひで子”の元に、
それら津軽娘の内、盛の家系の娘が集合する会が設けられた。
開催を呼びかけたのは最近事務所に所属した“よう子”である。
皆が集まると開口一番、よう子が意気揚々と会を仕切り始めた。
「皆さん、本日は我ら盛一族、よくぞお集まりいただきました!」
よう子と盛家
ひで子「相変わらずよう子ちゃんは元気が良いわね。」
鉄子「ひで子姉さん、元気ってより、よう子はただ仕切りたいだけなのよう。」
もり子「っていうか相変わらず面白い顔してるわね、よう子。」
よう子「煩いわもり子。それよりもそのメガネ、似合ってないから。ねえみつ子。」
みつ子「どうでしょうねぇ。そうかもしれませんねぇ。」
仕切りたがりのよう子を中心に、一同近況報告等でひとしきり盛り上がった後、
よう子はひ一つ咳払いをすると再び皆に話し始めた。
「え〜皆さん!この会の趣旨はですね、遂に私達の時代が来たことのお祝いのためです!」
「私達の時代ってどういうことなのよう子ちゃん?」
「ふふふ、ひで子姉さんお気づきになりませんか?『令和』ですよ、『令和』!」
「もったいつけないで、どういううことか早く教えなさいよ。」
「そのメガネを外して鏡を見てご覧なさいもり子!そのあなたの眉毛を!!」
「眉毛?私達の眉毛がなんだっていうの?・・・まさか!?」
よう子と令和
「そう!!令和の『令』の主部「ひとやね」は、正に我らが一族の下がり眉!
こんな目出度い眉毛をした一族が他におりましょうか!!」
一同よう子の主張に(なんてこじつけ!)と思いつつも、皆何だか悪い気はしいない。
「ぅう〜ん、まあ、よう子ちゃんの主張はともかく、一族団結して行きましょうね。」
ひで子が会をしめくくる横でみつ子が小さな声で呟く。
「私は違いますねぇ・・・でもお目出度いことかもしれませんねぇ。」
つづく
よう子
○渾名:よう子(津軽系)
○工人:
奥瀬陽子
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盛家のこけしがここ最近集まってまいりました。
奥瀬洋子のものが手に入ったのを機にちょっと並べてみました。
常々思っていたのは、この型のまつ毛もさることながら、下がり眉毛の独特さです。
この角度の眉の描き方は他の系統も含めほぼ見ることは無いような気がします。

少し前の事、クラブこけしに採用されたこけし娘がいた。
目力があり古色も帯び、ある種オーラはあるが、いかんせん無口な娘である。
一応自己紹介もあったが、その時の彼女の挨拶は「チス、ンゴッス、シャス。」であった。
ゴニョゴニョした小声で、何と言ったのか皆よくわからなかったが恐らく、
「こんにちは、ンゴです。よろしくお願いします。」だろうと判断した。
“ンゴ”という変わった名のシャイな娘が採用されたものだと皆思っていた。
そんなある日、店に居候中の重鎮“サク子”(店外23他)が小旅行から帰ってきた折、
店を一眺めして驚愕の声を上げた。「デ・・・デンゴちゃん?!」
デンゴとサク子
「ネサン。サシブリッス。」(姐さん。お久しぶりです。)
「相変わらずのシャイな喋り方ね・・・。でもここで会えるなんてビックリよ!?」
「タシモマタエテレシッス。ネサンオッテキタッス。」(私もまた会えて嬉しいです。姐さんを追ってきました。)
“ンゴ”ではなく"デンゴ"と聞き、大層な家柄の娘である事に、皆やっと思い至る。
サク子と旧知であることにも納得しつつ、二人のやりとりを聞いた。
「追って来たって、コミュ障・・失礼、奥手なあなたがよくまあここまで?」
「ナナネン…」
「え?7年?」
「オーナーノサイフノヒモ、カタクテ、ナナネンッス。」(オーナー財布の紐が固くて7年かかったのです)
「あなたの身請けはにオーナーもさぞ気張ったでしょうけど、どう納得させたの?」
「メ、アワセツヅケタッス。クルタビ。」(オーナーが店に来る度、目を合わせ続けました。)
「何と迂遠な・・・でもデンゴちゃんらしいわ。ともあれ、またよろしくね。」
「シャス、ネサン!マタエテレシッス!」
目力と忍耐でオーナーを納得させたデンゴの力量に店の一同も称賛を送った。
そんな目力を、デンゴは時折お菓子等を食べている者にジッと向けてきたりもする。
見られた者は「なんかズルい!」と思いつつも彼女にお菓子を分ざるを得ないが、
「シャス」と嬉しそうに言われると憎めない、無口だが愛されキャラのデンゴである。
なおデンゴの見受けの出費により、このときオーナーはまだ寝込んでいたという。
つづく
デンゴ
○渾名:デンゴ(弥治郎系)
○工人:
佐藤伝伍
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おちょぼ口で無口なデンゴに、某店の隅からず見られていました。
そして7年の月日が流れ、とうとう腹を決めての入手となりました。
中々に値が張った理由は作の古さもありますが、鈴木鼓堂という
蒐集家の図録に掲載の作という理由もあるようです。(補足:ちょっと一息23
蔦作蔵の影響というどんぐり眼、私のツボでした。

クラブこけしで定期的にこけしのメイク術講座を開催しているササ子(店外80他)が、
その日は特別講座として講師に招いたのが鉄子であった。
身の丈一尺の長身ながらも小顔で、美しいくびれも持ち合わせた鉄子は、
クラブこけしオーナーの愛人の営むモデル事務所所属の、こけしのスーパーモデルであり、
メーキャップアーティストのササ子とは旧知の仲でもあった。
鉄子とササ子
かくして『スーパーモデルの鉄則』と題された鉄子の特別講義は始まったのである。
「本日はお招き感謝します。今日はスーパーモデルになるための鉄則を3つ、
みんさんにわかりやすくお話できればと思います。」
笑顔も素敵な鉄子に、講義に参加した店の娘たちは大いに好感は抱いた。
しかし皆、自分がスーパーモデルになれるとは正直思ってもいない。
果たして鉄子はどんな鉄則を教えてくれるものか、一同興味深く講義を聞いた。
「鉄則のその1,好き嫌いせず何でも食べること!健康第一ですよ皆さん!
そして鉄則その2,よく眠ること!十分な睡眠でお肌もスベスベです!」
“ああ、予想通り、実の伴わない空疎な話か。”と、一同内心思い始めた。
「鉄則その3!実はこれが一番大事なのですが・・・」
期待しないなりに、どのようなオチがつくのか皆注目をする。
「そもそも恵まれた体型であること!!こけしなので後からは正直どうにもなりません!
そう、私は生まれながらスーパーモデルなのです。ありがとう、産みのお父さん!」
一同“コイツ臆面もなく核心を言いおった!ていうか、1と2必要だったか?”と思う。
しかしながら、中途半端におもねった話をされるより、素直で明朗快活な、
鉄子の語り口に、一同好感を持つのであった。
その後もモデルの実情や裏話など、皆楽しく耳を傾け、有意義に講義は終了した。
「みんな分かった?鉄子や私みたいになるには運も必要ってことよ!」
講義の締めのササ子のこの発言に、一同突っ込んでいいものか悩み鉄子を見る。
「君子危うきに近寄らず。これも鉄則ですよ!」そう言い鉄子はニッコリ笑った。
つづく
鉄子
○渾名:鉄子(津軽系)
○工人:
奥瀬鉄則
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奥瀬鉄則(テツノリ)さんを私はテッソクさんと呼んでいるが為のこんなお話でした。
本こけしは、一尺でスラリとプロポーションも良いのですが、
何よりも新品と見紛う程の状態の良さに驚き手に入れました(愛人が)。
恐らく前の持ち主は大事にしまわれていたものなのでしょう。
多少申し訳なく思いつつも、ウチでは棚に置き愛でております。

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