こけしブログ クラブこけし物語

クラブこけし物語と題したストーリーによって 所有するこけしを紹介

カテゴリ : クラブこけし物語(本編)

その日クラブこけしに一人のこけし娘と、お付の一体のダルマ爺がやってきた。
娘は着物ともんぺ姿に可愛らしい帽子をかぶり、名を“モガ”という。
爺の方は、心なし犬っぽい顔立ちであることから、名を“ダルマ犬”という。
そのダルマ犬、店の前で正に犬の如く大層興奮した様子である。
モガとダルマ犬
「モガお嬢!とうとう爺の念願が叶いそうですぞ。」
「良かったわね犬爺、私のお付き卒業は寂しいけど。“下駄番”さんってどんな方なの?」
「“下駄番”様といえば下足一つから全てを見通す伝説の番頭さんなのです!」
先日、クラブこけしオーナーがあつみ温泉を旅行した際に下駄番の存在を聞きつけ、
ダルマ犬はこの度満を持してあつみ温泉の『阿部こけし店』より上京したのであった。
「爺はダルマこけしとして、阿部家とモガお嬢に仕えてまいった一方で、
下駄番様の弟子となり、“仕える”というもの神髄を、再び学ぶ事を夢見ておりました。」
嬉々として語るダルマ犬を見ながらモガは思う。
(物心ついてからというもの、犬爺には色々と我儘も言い苦労をかけてきた。
恐らく長らく我が家に仕え、犬爺ももう結構な歳ではあろうが、今や人生100年時代。
わたしも我儘はやめて、犬爺には心置きなく第2の人生を歩ませてあげよう。)
そうこうしているうち、約束の時間となり下駄番が現れた。
モガとダルマ犬と下駄番
下駄番(赤)「ようこそダルマ犬さん、オーナーから話は聞いていますよ。
私の元で修行したいとは高い理想をお持ちでなによりです。まだお若いのに。」
「よろしくお願いします下駄番様!」しかし、このやり取りを聞いたモガは怪訝に思う。
「あれ?犬爺って若いの?」「・・・・・。」黙るダルマ犬。
下駄番(黒)「お嬢ちゃんと同い年くらいじゃないの?同時期の作よね。」
「ああ、下駄番様、それをモガお嬢に知られては爺の威厳が!」
「犬爺・・・それってまだ第一の人生中じゃない?移り気が過ぎるわ。お付き継続ね。
とりあえずジュース買ってきて。微炭酸でよろしく。私もここに留まるわね。」
「ははッ!」と条件反射のように嬉々として対応するダルマ犬は、正に犬の如しである。
こうしてモガのお付きをしつつの、ダルマ犬念願の修行は始まったのであった。
つづく
モガ
○渾名:モガ(蔵王高湯系)

ダルマ犬
○渾名:ダルマ犬(蔵王高湯系)
○工人:阿部進
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先日あつみ温泉に行った際、阿部進矢氏にお願いしたこけしとダルマです。
進矢氏のダルマはホント犬ぽく見えてしまいます。予てよりほしいと思っていました。
こけしの方のちょっと吊目で我儘な感じは、最近の工人の作風と思われます。
帽子こけしとダルマは目線がからむようお願いをし、可愛らしく仕上がりました。

クラブこけしオーナーの愛人が営むこけしのモデル事務所でのこと。
でこぱっち(店外36他)と、最近所属した“清見”というこけし娘が話していた。
清見とでこぱっち
「あー、目がシバシバする。この時期は花粉で本当に大変よ。」
「それ花粉のせいだったの清美ちゃん?でも年中そんな目してるじゃない。」
清美の目や眉は、しかめたようなクセのあるラインなのである。
「だから年中花粉症なのよ。私の一族は皆そう。杉やヒノキ以外にも、
夏はブタクサ、秋はススキ、とにかく一年中なのよでこぱっちちゃん。」
「じゃあ冬とか花粉の飛ばない季節はそんな目つきじゃないの?」
「そうよ。冬場のいっときだは、眉シャッキリ、お目々もぱっちりよ。」
「そうだったんだ・・・何だか清美ちゃんの一族って大変ね。」
アレルギー体質の一族を不憫に思う一方、でこぱっちは清美に嫉妬するものがあった。
「でもさあ清美ちゃんて、名前が美しいよね。名字もあるんだっけ?」
「うん、大泉ね。」
「“大泉清見”!!何なのよその綺麗な名前!凄い清涼感!私なんて“でこぱっち”よ!」
名前コンプレックスを持つでこぱっちは、清美の名前が羨ましいばかりである。
「清美ちゃん。もしだけど花粉症治るのと、名前が”でこぱっち”になるのどっちを選ぶ?」
「そりゃあ花粉症治る方かな。それに“でこぱっち”なんてカワイイじゃない。」
「よし、じゃあ決定!これからクラブこけしのオーナーのとこに行こう!
“でこぱっち”の名付け親の彼に、まず私と清美ちゃんの名前入れ替えてもらおう!」
「え?!何言ってるのでこぱっちちゃん?」
「花粉症は私が全力で治療に付き合うから!それでいいよね?」
「ちょ、花粉症はそんな簡単には、そうだ、私医者行って薬もらわなきゃ!」
「清美ちゃん、やっぱ”でこぱっち”嫌なんじゃん!」
「そ、そんなんじゃないけど、あ、時間だわ、じゃあねでこぱっちちゃん!」
名前の交換などできないと高を括っていた清美だが妙な現実味を帯びるにあたり、
そそくさとその場を去る、実は結構自分の名前を気に入っている清美であった。
つづく
清見jpg
○渾名:清見(弥治郎系)
○工人:大泉清見
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本田家系統の弥治郎こけしが持つ独特な目つきおよび眉つき。
独特の下瞼の線はありませんが、大泉清見工人の一本で気に入るものがありました。
しかし名前の響きの素敵な工人さんですね。女性とばかり思ってましたが男性でした。
この方も若くしてお亡くなりになられたとのこと、なんとも口惜しいものです。

師走も押し迫ったその日も、クラブこけしの台所は大忙しであった。
「この時期の忙しさは異常ね!まんさくちゃん(店外33他)、そっち火加減どう?」
「は〜い、めし炊き姉さん(20話他)!」こなれた動きでをサポートするまんさく。
「ほんとウチも年々大所帯になって・・あ、セチ子ちゃん、お皿出してくれる?」
「は、はい!こ、こっちのお皿でいいですか?」
セチ子とめし炊きとまんさく
まだたどたどしい動きで必死に台所を駆け回っているのはセチ子。
年末の忙しさを予期し、めし炊きが採用した新人である。
「セチ子ちゃん表情が硬い硬い。リラックスしないともたないわよ!」
「そうよセチ子ちゃん!料理は愛情!そして笑顔よ!」
「は、はいぃっ!」
おせち料理がそれなりに得意ということで採用されたセチ子だが、
まだ日が浅く台所の勝手や、環境に慣れていないため動きは硬く、
その表情は何かストレスに耐え得ているかのような切ないものとなっていた。
そんな光景を傍から眺めていたのは、クラブこけしのネガティブ3人組、
ゴヘイ(48話他)、ボクッ娘(74話他)、Q(店外123他)であった。
セチ子とQとボクッ娘とゴヘイ
「セチ子ちゃんだっけ。名前の通り世知辛いって訴えてるような表情ね。」
「仕方ないよ。この時期他の皆はイベントを楽しんでいるのに、準備側なんだから。」
「そりゃ世の中恨めしいって顔にもなるわよね。絶対にあの娘、私達の側の娘ね。」
ネガティブな3人の勝手な解釈により一方的に同情され始めるセチ子。
そんな中、近くを通りかかったオーナーがセチ子に声をかける。
「セチ子ちゃんガンバなのだよ!今年のブログの大トリなのだよ!」
声を聞いたセチ子は一瞬微笑むと、また難しい表情に戻り仕事に集中し始める。
「良く分からないけど大トリだってセチ子ちゃん。ちょっと救いがあってホッとしたわ。」
こうして勝手な解釈の3ネガ娘は、その後セチ子とは親しくなっていったというが、
当のセチ子は実際何を思っているのか、その表情から読み取るのは難しいという。
つづく
セチ子
○渾名:セチ子(遠刈田系)

○工人:佐藤文男
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グッとくる表情のやつを一本!と常々思っていた丑蔵型の一筆目こけしですが、
佐藤文男さんの作に納得でした。世知辛そうな表情なのでセチ子です。
切なげな表情が見るものの気持ちを写すようでなんともたまりません。
といったところで本年最後の更新となります。
皆様が良いお年を迎えられるよう、こけしを乾拭きしつつお祈り申し上げます。

こけし達の活動をサポートするこけし業界団体の一員の大ママ(50話他)は、
師走の稼ぎ時のこの時期、こけし達を奮起すべく各店舗を回っており、
その日はアシスタントの‘キク’と共にクラブこけしを訪れていた。
キクと大ママ
「もっふんママ分かってるの?稼ぎ時なんだからしっかり頼むわよ!」
「わ、分かってるわ大ママ、最善を尽くす・・・もふ。」
「最善じゃダメなの。結果なのよ!ホント頼むわよ!それにしても忙しいわ。」
大ママの眼力に今日もタジタジのもっふんママは話を変える。
「ところで大ママ、その娘は?」
「キクちゃんよ。忙しすぎてアシスタントに付いてもらってるのよ。」
その娘はまるで大阪名物“みたらし小餅”の如くふっくらとした顔立ちである。
「初めましてキクです!申し訳ありませんが大ママにお茶などをただけると・・・」
多忙な大ママを気遣ってか、しかしその目は店先の干し柿を見ている。
「これは失礼したもふ。丁度干し柿もあるし、筒(店外24他)ちゃん準備よろしくもふ。」
大ママの来訪時から何故か側にいた筒は、程なく干し柿を添えお茶を持ってきた。
しかし大ママは忙しく「もう時間だわ!すぐ次にいかないと!」と席を立つ。
キクと筒
実はこれこそ筒が予想し、ママ達の側にいた理由。彼女はここぞと口を開く。
「では、この干し柿はもったいないので私が!」
しかしこの事態を同じく予想し、同時に同じ言葉を発していたのはキクであった。
彼女は素早い手捌きでサッと干し柿をかすめ取ると、パクリと口に放り込む。
筒はハッと気付く(ま、まさかこの娘が“早手のキク”!)
そんな筒に勝ち誇った目線を送るキク(フフフ、脇が甘いわよ“底なしの筒”)
互いの噂だけは聞いていた二人の、これが初の出会いであった。
「行くわよキクちゃん!それにしてもこんな忙しいのにアンタ痩せないわね。」
首を傾げつつも慌ただしく去っていく大ママとキク。
もっふんママはホッとし、筒は歯ぎしりをしつつ二人を見送ったのであった。
つづく
キク
○渾名:キク(肘折系)

○工人:佐藤きく
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佐藤きくさんによる、夫である巳之助氏の本人型となるでしょうか。
所謂の肘折系とはちょっと異質な丸頭ですが、特筆すべきはこのほっぺたの豊かさ!
この量感にきくさんの女性らしさが表れてい気がします。ツボでした。
首から下がるのはスケジュール帳のつもりの、購入店の商品タグです。
なお現在、吊るしで頂いた干し柿をこけし棚に引っ掛けています。

クラブこけしでは従業員の福利厚生として定期的に教養講座を開催しており、
主に講師を務めているのが“赤んぼ先生”(店外76他)である。
ある日、先生は書生で助手の“ツタフミ”と“一子(イチコ)”(店外108他)を呼び出した。
「急に呼び出してすまんでち。実は次回の講義日の都合が悪くなったんでち。」
「そうですか先生。じゃあクラブこけしに休講の連絡をしておきましょうか?」
赤んぼ先生を心より尊敬する有能な書生のツタフミが気を使い確認をする。
「それには及ばんでち。私の知り合いで“若先生”という若者がいるんでち。」
「若先生!?」
「うむ。若いのに非常に優秀で中々の好青年。彼にピンチヒッターを頼もうと思うでち。」
ツタフミは何やら面白くない。尊敬する先生から高い評価を得る若先生とやら、
聞けばコケボンヌ大学の非常勤も務めるという。勤勉な書生であるツタフミからすれば、
大学と言えばサークル、合コン、男女の刹那的交際等、浮ついたイメージしかない。
彼女は金髪で色黒マッチョなサーファー男子を漠然と想像しつつ先生に聞く。
「その若先生ですか?そんな学生みたいなのに先生の代わりなんか務まるんですか?」
「君達には当日助手も頼みたいし、今日は彼を呼んでいるでち。若先生、カモンでち!」
「そんな、私、先生以外の助手なんて嫌ですか・・・ホゥッ!?」(BGM♪
若先生と赤んぼ先生
現れたのはツタフミの予想に反し、まだあどけなさすら残る小柄な青年なのだが、
その表情や物腰は気品とインテリジェンスに溢れておりツタフミは息を飲む。
「初めまして、若先生と申します。よろしくマドモアゼル!」
「マ、マドモアゼル!?・・・私、ギャップ萌えかもしれない・・」
赤ん坊姿なのに博識でにキリリとした眼差しの赤んぼ先生を尊敬するのも、
その"ギャップ萌え"からであろうが、そんな自分をツタフミは自覚はしていない。
「かもしれないって、今更かいな・・・」そう言い一子はため息をついていた。
なお自己紹介直後「マドモアゼルを惑わせちゃったかな?」との若先生のオヤジギャグが、
ボーっとしているツタフミの耳には入らなかったのは幸いかもしれない。
つづく
若先生
○渾名:若先生(南部系)

○工人:佐々木覚平
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鎌倉の某店でこの覚平こけしを見たとき、あ、『若先生』だ!と思いました。
ご当地の宮沢賢治を意識したマント型のデザインと思われますが、
その優しい顔立ちも相まってアカデミックなイメージを抱いたせいでしょう。
覚平のキナキナではないのを見るのは初めてで、珍しいとつい手が出ました。

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