こけしブログ クラブこけし物語

クラブこけし物語と題したストーリーによって 所有するこけしを紹介

カテゴリ : クラブこけし物語(本編)

その日クラブこけしでは、ゆさこ・ピヨピヨ・白玉(店外158他)の3人が、
新たに店に来る後輩のために、出迎えの準備をしつつ談笑していた。
「白玉が来てから早2年か。しかしお前は本当に後輩として役にたたなかったなぁ。」
「そんなこと無いですよゆさこ先輩。それなりに頑張りましたよ。ねえピヨ先輩。」
「今日来るのは私とゆさこちゃんの直系の妹なの。本当に真面目な良い娘なのよ。」
「そうそう、令和の生まれだけど、白玉と違って素直で律儀な妹なのよ!」
そんな言い合いを3人がするなか、果たしてその娘は店に現れたのだった。
チビゆさ達
「ゆさお姉ちゃん、ピヨお姉ちゃん!お手伝いに来ました!よろしくお願いします!」
「おお、来たかチビゆさ!これからしっかり精進し・・・な、なんだと!!」
ゆさこを初め3人が絶句したのはチビゆさの白さと自らのギャップに対してであった。
「ゆ、ゆさこちゃんこれって・・・私達いつの間にこんなに日焼けて・・・」
「ピヨちゃん、私もショックよ・・・、まだ2年の白玉だってチビゆさに比べたらほら。」
「あれれ?ゆさピヨ先輩より私全然白いのに、何で?おかしくない?」
白玉2年、ピヨピヨ8年、ゆさこ12年、歳月は確実に彼女等に変化をもたらしていた。
挨拶も半ばに絶句する姉たちの心中を察したチビゆさがゆさこに言う。
「ゆさお姉ちゃん、その日焼けは勲章なんだよ。お姉ちゃん達はすごいよ。
こうして私が東京に来れるのも、お姉ちゃん達が身を挺して店を支たからなんだよ!」
「チビゆさ・・・あんた本当に良い妹やで・・・!!」
これまで大した努力はしていない割に、ゆさこは何やら感動して涙ぐむ。
「今日からお姉ちゃん達を助けて私も頑張るから。じゃあユニフォーム着るね。」
「ユニフォーム?!」チビゆさの言動を俄かに分かりかねるゆさこ・ピヨピヨ・白玉。
3人を後目に彼女はトイレットペーパーの芯(目出し付き)をすっぽりとかぶった。
チビゆさ達2
「よし、これで完璧!私は日焼け嫌なので!さあお姉ちゃん、何でも手伝うからね!」
(令和世代の新発想か!?わからん!)と3人は再び絶句するとともに、
今後のチビゆさの教育方針について改めて検討会議を密かに行ったという。
つづく
チビゆさ
○渾名:チビゆさ(鳴子系)

○工人:遊佐妙子
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ファーストこけし‘ゆさこ’から12年、鳴子の同店を通りがかった際に購入しました。
頭が出るのはご愛嬌ですが、トイレットペーパー芯と偶然太さがピッタリ!
だから何だという話ではありますが、折角なので日焼けの進行にどれだけ差が出るのか、
このまま継続検証をしたいような気もしています。

クラブこけしの“店長”(店外55他)は、その立場上店の娘達に常に気を配っている。
悩みを抱えた者や困った者がいないか、日々それとなく観察をしているのである。
その日も、ゴヘイ、ボクッ娘、Qという後ろ向きな性格の3人娘(店外14123他)が、
例により神妙な面持ちで話し込んでるが、普段と違うのはこのグループに、
4人目としてイサ子という小柄なこけし娘が、その日は加わっていることであった。
イサ子はゴヘイの妹で、何かしらの用事で姉を訪ねて来ていたのである。
イサ子達
3人娘の声は低く聞き難いが、イサ子の声はさり気なく観察する店長の耳にも届いていた。
「このグループじゃお姉ちゃん達のやる気が出ないのも分かるわ。死んだも同然よ。」
イサ子の話にスタッフのメンタルケア担う店長はギョッとするも、少し様子を見守った。
「3人も踏ん張らなきゃいけないけど、でも結局はメンバー皆で頑張ることなのよ。」
店長は心の中で(そう!イサ子ちゃんの言うとおりよ!)と込み上げるものをこらえる。
「個性?まあ個性は大事かもしれないけど・・・え?数?数は意味無いわよ。
もうお姉ちゃん達、今更何をいってるの!?だからチームワークなんだってば!」
スタッフのモチベーションが上がることを願い、店長はイサ子を心の中で応援する。
「あーしんど!!何もう、あーしんど?!今更話にならないわね!」
励ましの匙を投げ出しそうなイサ子に、とうとう店長が我慢できずに割って入る。
「頭ごなしの否定は逆効果よイサ子ちゃん!もっと優しく!」店長の乱入にイサ子が驚く。
「で、でも店長、お姉ちゃん、今更アルシンドを監督に迎えようとか言い出すし・・・」
「は??アルシンド?」キョトンとする店長。
「サッカーワールドカップで、日本代表の死のEグループ突破の可能性の話です。
でもお姉ちゃん達ったらアルシンド監督だの、ディフェンダー3人が踏ん張ればいいだの、
チームに個性が無いだの、挙句にカズを代表に呼ぼうだの、もうメチャクチャなんです!」
イサ子の話を呆けたように聴いた後、店長はニッコリすると、
「アルシンド監督は無いわね。あーしんど・・」と言い、徒労感と共にその場を去った。
サッカー好きイサ子は皆で盛大に観戦しようと姉を訪ねて来ていたとのことであった。
つづく
イサ子
○渾名:イサ子(鳴子系)
○工人:本田功
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小松五平型の表情は例の如くでムッスリとしていますが、
イサ子ちゃんは不満顔というよりは、ヤレヤレと呆れている感じでしょうか。
さてさて、サッカーワールドカップ2022開幕が迫ってまいりました。
ご多分にもれずこのときだけ似非サッカーファンになる私ですが、
今回はどうなることか。熱くなる展開を期待しております。

ある日、クラブこけしのバイト青年行き倒れ(店外35他)の姉“嵐子”が店を訪ねてきた。
黒目になることを夢見て日々励む弟の激励と言うが、単に東京観光のついでである。
嵐子と行き倒れ
「しかし渋谷も様変わりしたわね。どう元気?ちょっとは目に色ついてきた?」
「この物価高に東京観光ですか。嵐子姉さんはいつもお気楽でいいですね。」
「あんたまだ全然白目じゃない。ちょっとまだ苦労がたりないんじゃない?」
「ぼ、僕は日々努力してますよ。姉さんこそ何の苦労もしてないじゃないですか。」
「ムッ、言ったわね。あんた私や父さんが過去にどれだけ苦労したか知らないの?」
「何だって言うんですか?」
「いい機会だからよく聞きなさい。昭和の暮れに父さんが私を生んだ時ね、
そりゃあ意気揚々よ。山形テレビに『新鶴岡こけし』だって紹介されちゃったりしてね。」
「羨ましい話じゃないですか。どこが苦労なんですか。」
「問題はここからよ。山形こけし会から‘そんなの伝統じゃない!’ってケチがついてね。
ちゃんと伝統工人のもとで修行しなきゃ認めないっていうのよ!」
「そうなんですか!?なかなか世知辛い話ですね・・・。」
「それから父さん苦労したわよ。誰も弟子にとってくれないってんだから。
で、困り果てて身延山に願をかけたわけよ。日蓮宗の総本山ね。そしたら何と!!」
「ど、どうなったんですか?!」
「青森の大鰐温泉の間宮正男工人から弟子にしてもいいって声がかかったのよ!」
「へー!はるほど、それで今の僕が生まれたと言うわけなんですね。」
「そう。だからあんたも父さんを見習ってもっと苦労しなさいってことよ。」
「話はよくわかりました。けどそれって嵐子姉さんの努力じゃないですよね。」
「あんた、もう許さないわよ、南無妙法蓮華経〜南無妙法蓮華経・・・」
「な、何ですか姉さん突然法華経なんか唱えだして。」
「今あんたの黒目修行リセットしたから。またゼロから徳を積み直しなさい。」
「えええっ!嵐子姉さん非道い!!」
無論嵐子にそんな力は無いが、父の不思議な話もあり、大層落ち込んだ行き倒れであった。
つづく
嵐子
○渾名:嵐子(津軽系(なのかな?本人型))
○工人:五十嵐嘉行
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おぼちゃ園さんのブログ「017: 五十嵐嘉行 ①」をガッツリ引用してしまいました。
嵐子の作風があまりに津軽(間宮家の型)らしくないので、来歴を調べたところ、
な〜るほどと、おぼちゃ園さんには感謝でございます。
師となった間宮家には、五十嵐氏が願をかけた日蓮宗の仏壇があったとの話も。
何とも不思議な話です。

その日、クラブこけしの清見(店外170他)を訪ねて二人のこけし娘が押しかけてきた。
「清美ちゃんいるの?いるなら早く出てきて頂戴!イズミもほら早く呼んで!」
「清美ちゃん急かしてごめんね。亀姉さんも少し落ちつてください。」
「よ、ようこそ亀子姉さん、イズミ姉さんも、お早いお着きで・・・」
亀子とイズミ
亀子は皆から「姉さん」と呼ばれる程に年季の入った出で立ちには見えないが、
せっかちにまくしたてる亀子の風格と勢いにはイズミも清美もタジタジである。
ドタバタとした雰囲気を感じてクラブこけしオーナーも現れた。
「あらオーナーさん?これからよろしくね。私達もうモタモタしてらんないのよ!」
「ええと、ウチの採用には面接とか、その、色々手順がありまして、、」
「そんな暇ないわよ!もう決定。こっちのイズミもよろしくね。」
「す、すいません押しかけた形になってしまいまして。」恐縮するイズミ。
「じゃあ、店の私達の立ち位置は一番明るいあそこよ。いいわねオーナー。」
「そ、その、いいですが時間によっては結構日当たりがあって暑い場所ですが、」
「だからよ!こちとら何年暗がりにいたと思ってるの?!イズミ!説明してあげて!」
「は、はい!亀姉さんと私は前の主のご都合で、かれこれ30年以上箱の中にいたのです。
それなりのご収集家だったようですが、仕舞われてそのまま忘れられたというか・・・」
「やっと日の目が見れたのよ!おかげで年季も入らず黄色も紫もこんなピカピカよ!
2,3年なら『箱入り娘です!エヘッ』とか言ってられるけど、30年よ?!
いい加減辛抱たまらんわ!15で不良と呼ばれる人もいるのに、何なのよ30年て!!」
「小原の花と唄われお淑やかだった亀姉さんも、お陰でこんなにやさぐれた次第で・・」
「とりあえずシャバがどうなってるか見に行くわよ!青春を取り返すのよ!
その辺の盗んだバイクで走り出すわよ!イズミ!清美!ついてらっしゃい!!」
「亀姉さん、最低限のモラルはどうか守って下さい!」
こうして新たにクラブこけしに亀子とイズミが加わったが、
今日も店の一番日当たりのいい場所で二人は力強く存在感を示しているという。
つづく
亀子
○渾名:亀子(弥治郎系)
○工人:本田亀寿
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イズミ
○渾名:清見(弥治郎系)
○工人:大泉清見
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この2本はどうやら前主がセット保管して(忘れられて)いたもののようです。
工人の没年齢からして30年以上の間かと。昨日作られたような鮮やかな発色です。
30年コンビをまとめて面倒をみてほしいとの某店のオファーに納得で頂いてきました。
こけしの幸せが何かはわかりませんが、私は仕舞わず棚に置いて愛でる派です。
なお本ブログではゲット順にご紹介しているですが、色の綺麗なうちにと思い、
異例の追い越し紹介となりましたが、まさに亀子さんの生き急ぎ方が現れております。

クラブこけしにはセチ子(147話)というお手伝いさんのこけし娘がいる。
去る年の年末に急遽田舎から東京に出てきて早2年以上の月日が流れ、
仕事と都会生活を両立させる、粋なシティガールとして自らを認識するようになっていた。
そんなセチ子の元に、ある日双子の姉妹“ベレー”が所用ついでに訪ねてきた。
ベレーとセチ子とシンヤ
「セチ子ちゃん元気にしてた?なんだか表情にも自信が出てきたんじゃない?」
「日々充実しているわよ。ベレーちゃんも相変わらず自由な感じね。」
堅実を信条とするセチ子に対し、ベレーの自由さはそのファッションによく現れている。
着物・羽織に赤いベレー帽、頬にはチークでほんのりと明るみを入れている彼女、
極め付きはかの時代の婦人標準服モンペ履きという、正に自由な発想なのである。
都会での洗練を自負するセチ子は、ベレーのこのちぐはぐとも言えるセンスが、
特にモンペなどは改めて見るに正直田舎臭いと思い始めていた。
「ベレーちゃん、今日もその格好なんだ・・・、良いブティック紹介しようか?」
「ふふふ、セチ子ちゃんには分からないかしら?気にしないで!」
少し都会風を吹かせたセチ子だが、ベレーに意に介した様子はない。
そんな二人の横を通りかかるのは、クラブこけしのおしゃれ番長“シンヤ(19話他)”。
彼女はベレーを二度見すると、驚愕の表情でセチ子に問う。
「ちょ、セチ子ちゃん、このお方はどこのビッグメゾンのスタイリストさんなの?」
「え?!ただの私の姉妹のベレーちゃんですけど・・・」
「もんすごいファッショニスタがおるで!これはもうこけし界のサンローランや〜!!」
あまりの驚きで彦摩呂風におかしくなるほど衝撃をうけたらしいシンヤ。
「バルーンでもサルエルでもない、袴式モンペに羽織にベレー帽!一体東京に何用で?」
「初夏のモンペ歌会に来ました。ちなみにモンペの季語は夏です。」
「モンペ歌会?何それ?最早すべてが異次元!お見それしました!!」
シンヤの驚きを目の当たりにし、ちょっと都会風を吹かせた自分に恥入るセチ子。
ベレーの奥深さを見直し、双子の姉妹を誇らしくも思い始めるセチ子であった。
つづく
ベレー
○渾名:ベレー(遠刈田系)

○工人:佐藤文男
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工人にヒアリングしたい程のファッションセンスの一本。
何故かモンペとベレー帽の組み合わせには、そこはかとない文学的な薫りすら漂います。
その奇抜なセンスとは裏腹の達観した丑蔵こけ特有のお顔立ち。もうたまりません。
さて、"ブティック"は死語なんですかね。バブル用語は一周して華を感じます。

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