こけしブログ クラブこけし物語

クラブこけし物語と題したストーリーによって 所有するこけしを紹介

カテゴリ : 店外編:国内旅行

「こもっふんよ、富士山はでっけぇなぁ。」
「うん、でっかいね。」
「富士山見てたら何だかパワーがもらえそうよね。」
「うん、もらえそうだね。」
甲府
年の瀬のこと、ナオシとこもっふん姉妹(店外95他)は甲府城跡から富士山を眺めていた。
こういう時の姉は、概ね空疎な語りに入ることを経験上想像がついているこもっふん。
満足そうな姉の語りを、彼女は真に受けずにぼんやりと聞いていた。
「この時期に富士山とは縁起がいいじゃない。何か来年の目標でも決めようか。」
「いいんじゃないナオシ姉ちゃん。」※以降( )内はこもっふん心の声
「私も来年は富士山みたいになろうかな!」
(どういうことだろう?こういうとき姉ちゃんの言ってることはよくわからん。)
「なんかこう、ナオシここにあり!みたいに、富士山の如く名を轟かせたいわよね。」
(子供が言う「大きくなったらキリンさんになりたい」と同じにしか聞こえない・・。)
「だから今来年は大勝負に出なきゃね!ここぞってときは躊躇せず行くわよ!」
(何の勝負だろう?そしてそのタイミングはいつなんだろう?)
「ところでこもっふんの豊富はなんか無いの?」
「ええと、健康かな。」
「は!?健康?富士山を前にそんな細やかな願いでいいの?」
(健康が細やかな願いとは思わないけど・・・)
「私はね、来年はガツンと行くの。富士山の前だもの。ガツン宣言よ!」
(これは姉ちゃんも具体的には何も思いついて無いやつね。ノリで言ってるだけだわ。)
「こもっふんよ、来年の姉ちゃんに期待してなさい!」
「うん分かった!姉ちゃんカッコイイ!!」
「よしよし、なんだか気分が良いから何かおごってあげる!」
こういうときの姉には突っ込まず、機嫌よくしておいた方が得なことを良く知っている、
何だかんだで姉思いのこもっふんであった。
つづく
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甲府まで行けばきっと大きな富士山が見えるんじゃないか、
と実は勘違いしていたのですが、それなりには見えたので一応満足です。
例によって定番『信玄餅』を親族への土産として買って帰りましたが、
この土産の喜ばれ方にハズレが無いことに、改めて感心します。

梅旅行()と称する梅子、ノボ、トミの茨城旅行2日目、梅子から提案があった。
「ねえ、私達梅模様こけしが偕楽園で写真撮ってブログにあげたりしたらさ、
それってもう私達、茨木の観光大使みたいなものじゃない?そうよねノボにトミ。」
「いつも発想がポジティブですね梅子姉さん。ていうかやっと名前覚えくれましたね。」
「でも観光大使だとして、それでなんだっていうんですか?」ノボとトミが問返す。
「茨城って正直田舎臭いイメージでしょ。納豆くらいしか皆知らないじゃない?」
「ま、まあそうですね。あと牛久の大仏くらいかしら。」
「何もないとは言い過ぎだけど・・・でも、何もないかも。」
「そう、何もないってことはね、それはポエティックだってことだと思うの!」
「ポエティック?」梅子の発言の意味がわからず聞き返すノボとトミ。
「何もなさを逆手に詩情あふれる写真を撮るのよ!さあ観光大使として一肌脱ぐわよ!」
一行がまず向かったのは、鹿島臨海鉄道大洗鹿島線の常澄駅近辺の田園地帯であった。
鹿島
「どう?何もなさすぎてポエティックでしょ!本当は田に水が入る頃がいいんだけど。」
「確かに、水田に渡る高架橋は幻想的な景色かも。残念、少し早かった。」
「でも梅子姉さんの言いたいことが何となくわかってきましたよ。」
次に一行が訪れたのはJR日立駅。海を望むテラスのある某有名建築家による駅である。
日立
「ふふふ、どう?これぞポエティックでしょ。ベンチの形もオシャレよね。」
「写真だけ見ればそうかもですけど、何か空疎な活動というか、いまいちな気が・・・」
勢い付いていた梅子だが、ノボとトミの感想により徐々に自信を失っていく。
「梅子姉さん、結局のところ今回の旅行で一番印象的なものって、何だったんですか?」
「・・・干し芋かな。」ボソリと答えた梅子だったが、ノボとトミも大きくうなずく。
「ですよね!干し芋すごい甘いし、さつま芋のつかみ取り盛り上がったし!」
「ほんと、干芋直売所楽しかったです。」ノボとトミの反応に梅子も開き直る。
「ポエティックとかもういいわね。干芋いっぱい買って帰りましょう。干芋大使よ!」
こうして梅娘達の"梅旅行"は、茨城の干芋文化拡散を担いつつ無事終了するのであった。
つづく
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写真は頑張ったつもりですが、まあフツーな出来栄えな気がします。
しかし茨城は干芋王国だったんですね。
無知なため今まで認識していませんでした。
元々干芋が好きなので、直売所では大いに楽しんできました。
品種改良が進んだことにより、ここ数年焼き芋の甘さには目を見張るものがあります。

梅旅行と称して茨城県観光をする梅子、ノボ、トミの一行は鹿島神宮を訪れた。
武神を祀り、今日も武道では篤く信仰される東国随一の古社である。
清涼な湧水の御手洗池(みたらしいけ)前で、感慨深そうに梅子が話りだす。
鹿島神宮
「鹿島神宮はね、NHKのBS時代劇『塚原卜伝』のロケ地だったのよ。」
「へー、誰ですかそれ。知ってるトミ?」「知らない。」興味のないノボとトミである。
「知らないの?全くもう、鹿島新當流(かしましんとうりゅう)の塚原卜伝よ?」
「もう響きがマニアックすぎです。知りませんてば。」
「仕方ないわね。教えてあげる。そもそも卜伝の父は鹿島神宮の神官だったのよ。」
「だから別にいいですって梅子姉さん。もうホテルで休みましょうよ。」
一日梅子の世話をしてきたノボとトミ。二人はもうお疲れである。
「卜伝は剣士であり兵法家でもあるの。無手勝流の話を教えてあげるわ。」
時代劇好きらしい梅子は、高ぶった思いのままノボとトミの疲労など気にしない。
その思いが発散されるまで収まらないことをこの一日で知った二人は黙って聴く。
「無手勝流とは字の通り、無手、つまり戦わずして勝つということなのよ。
ある日卜伝ね、琵琶湖を渡る船中で知り合った剣士から、決闘の申し出を受けるの。
しつこく煽ってくるし他の客にも迷惑だから、渋々小舟に移って近くの小島に行くのよ。
で、島に近づくとその剣士が早って先に船を降りてね、こう剣を構えて卜伝を待つのよ。
でもそれ見るや、卜伝は船をまた漕ぎ出して、剣士を残したまま小島を去るの!
そして言うのよ。戦わずして勝つ。これぞ無手勝流だってね。どう、かっこよくない?」
「・・ずるいっすね。ていうか、恨み倍増で根に持ちますね。」ノボが言う。
「でもその場を無難に収めることも大切じゃないかしら?」
「う〜ん、そうかもしれませんけど・・絶対また来るような・・」トミも言い淀む。
「まあいいわ、二人とも今日は色々ありがとうね。じゃあホテル行くわよ!」
話すだけ話し、気が済んだ梅子から出た簡単なねぎらいの言葉を聞き、
一日苦労したという気持ちを二人は収めつつあったが、その時にハッとする。
そして自分たちは梅子式の無手勝流にハマっている可能性に気がつくのであった。
つづく
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神社によって、その場の空気感の良さには結構差があると感じているのですが、
個人的には鹿島神宮は大変気持ちの良い部類に入る神社でした。
境内に『塚原卜伝』のロケ地だとあり、誰だっけその人?と思って思わず調べ、
微妙な逸話だなーと思った話のご紹介でした。

クラブこけしオーナー愛人が経営するこけしモデル事務所の梅子(店外149他)は、
その春茨城観光を計画をしていた。梅模様が自慢の彼女の満を持しての偕楽園観光である。
この話を聞いたクラブこけしに居座り中の円子(店外181他)は、
彼女のお付きのこけし娘“ノボ”と“トミ”にこの旅行への同行を勧めた。
二人は大いに喜んだ。小柄な二人の胴にも、それぞれ梅があしらわれている。
日頃のお付き仕事への計らいでもあるらしいが、そう言う円子の笑みは意味深であった。
ともあれ、主の目を離れ、のびのび旅行が満喫できると二人は円子の提案を快諾し、
かくしてその日は訪れ、春の偕楽園には梅子、ノボ、トミの3人の姿があった。
偕楽園
「素敵!満開じゃない!私達にぴったりよね。二人ともそう思うでしょ!」
「ハイ!梅子姉さん!」
「しかしまだ四月初めなに暑いわね。ノボだっけトミだっけ?お茶買ってきてよ!」
「ハイ!梅子姉さん!」
大先輩の梅子を前に、結局ノボとトミは円子に対すると同様の付き人状態であった。
「あの、梅子姉さん。もしかして私達の名前と区別がついていないのでは・・・」
「だって二人とも大きさとか模様とか似てるんだもん。そうだ!もうコウメでいい?
あなたがコウメ1で、あなたはコウメ2。はい決定!梅は最高ねコウメ!」
梅子に押し切られ、ノボとトミ改めてコウメ1・2となった二人。
梅子に悪意はないと思うものの、彼女らの主、円子よりも質が悪いと感じていた。
「そうだコウメ、舞ってよ。梅を背景に優雅にね。」
「ええっ舞い?!なんと急な無茶ぶり!舞いなんててやったことないですよ!」
「いいのいいの雰囲気で。細かいこと言わないわよ。」
梅子の無茶ぶりに追い詰められたノボとトミは腹決める。コウメと言えばあれしかない!
「♪チャン、チャカチャンチャン、チャチャンチャ、チャンチャン、
気楽に旅行ができると思ったら〜♪いつも通りコキ使われました〜♪チッキショ〜!!」
コウメ太夫のネタをパクっただけだが、上機嫌の梅子には爆受けであったという。
つづく
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梅の聖地(?)偕楽園に、満を持して梅模様のこけし達と来ることができました。
やはり大野栄治の梅こけしと梅の花の共演には貫禄が漂います。
東京暮らしなのですが、同じ関東でも割と知らない茨城県。
今回良い時期に各所巡ってまいりましたので、一部ですがご紹介していきます。

「見なされお嬢様方!なかなかの絶景ですぞ!」
感嘆の声を上げるダルマ犬。モガのお付きのダルマ爺である。
今回ダルマ犬の希望により、クラブこけしオーナー共々やってきたのは岩手県奥州市。
胆沢平野を見渡す高台から見えるのは、水田や畑の中に家屋と林が点在する、
日本の農村原風景の一つ、いわゆる散居集落の風景である。
散居集落
「へ〜、これは確かになかなかの景色ね犬爺。」
「そうでしょうモガお嬢。笠子お譲と赤ヘルお嬢(店外167他)もいかがですかな?」
「うん、すごいすごい!確かに日本の原風景ね。ねえ笠子ちゃん。」
「そうね赤ヘルちゃん。ちょうど笠が日除にもなって、風も気持ちいいね。」
「お嬢方、爺の言う通りにすれば間違いはないのですぞ!」したり顔のダルマ犬。
今回の旅行先の提案をしたダルマ犬だが、彼が旅行参加条件として挙げたのは、
“日射病予防のため帽子をかぶること”である。過保護がダルマ爺全般の基本特性である。
彼が世話をするモガが常に帽子をかぶるのは、その方針によるものである。
「しかしすげ笠とヘルメットでのご参加とは、この爺も泡を食いましたぞ。
しかしまあ趣旨からずれば全く問題はありませんからな。」
「笠子ちゃんに赤ヘルちゃん、犬爺のわがままに付き合ってくれてありがとね。」
「いいのよモガちゃん。ていうか、いつもの格好のままだし。」
「本当は爺としてはオーナー殿にも帽子をかぶってほしいんですけどな。」
それを聞いたオーナーは憮然とした面持ちで答える。
「子供じゃないんですから勘弁してくださいよ。蒸れて禿げでもしたら嫌だし。
何なら帽子なんて熱がこもって逆効果なんじゃないんですか?」
「やれやれ、全くわかっておりませんな。いつか痛い目にあいますぞ。」
帽子をかぶらなかったオーナーは、果たしてそのせいでボーっとしていたのか。
この撮影中にこの辺で高額定期券を落としているのだが、
それに気が付いたときには疾うに後の祭りであった。
つづく
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一昔前の磁気カード定期券の再発行はできないようですが、
今のSuica等のIC定期券は紛失しても再発行が可能なのです!冷や汗ものでした。
思いの外散居集落風景に見応えがあり、つい浮かれてしまいました。
なお私は帽子がどうにも似合わない星の元に生まれてしまったようです。

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