6月の某日、クラブこけしオーナーが紫陽花鑑賞に訪れたのは毎年恒例の鎌倉であった。
お供のこけし娘は、赤んぼ先生の元で書生をしている“ツタフミ”と“一子(イチコ)”(118話他)である。
いま一つ仲のしっくりしない二人に「親睦を図ってくるでち!」との先生の命による花見参加であった。
一子がツタフミの後輩となって約一年、相変わらず彼女は先輩のツタフミに心なしか反抗的である。
「せんぱ~い、また紫陽花ですよ。この間『長久院』で見たじゃないですか~。あたしもう飽きましたよ。」
「ちょっと一子、先生の命令よ。それにオーナーの前なのよ?シャキっとしなさい!」
南部娘である一子は首をクラクラさせて暇を持て余している様子である。
「は~い。ところでツタフミさぁ?、最近どうなの?」
「はぁ!?」
「だから最近どうなのっかな~って・・・」
「そこじゃないわよ!!アンタ今先輩の私を呼び捨てにしたでしょ!!」
「そこですか?いやー、もう一年経つしそろそろいいかな~って?」
「こけし界の徒弟制度を舐めてんじゃ無いわよ!私の祖父の苦労やウチの家系知って物言ってるの?
まったく!これだからアンタみたいな家柄の、しかもお土産出身みたいなモンは・・・」
「お、お土産!?それに家柄まで出して・・・せ、先輩・・・ひどい!」
一子は首をガックリとうつむかせ震えはじめ、それを見たツタフミも(しまった!)と思う。
「あ、ちょ、一子、そんなつもりじゃ・・言い過ぎたわ・・・悪かったわよ、ちょっと、泣かないでよ・・・」
ツタフミがあたふたしていると、にわかに一子は顔を上げ首をニュっとのばす。
「な~んちゃって!あたふたしちゃって、先輩かわいいわぁ~!」
その後一日ツタフミは一子と口を利かなかったという。
しかし何とも憎めないところもある一子。二人の関係も今は相変わらずであるという。
最近紫陽花写真ばかりで恐縮です。明月院入口の橋のあたりでございます。
さて、ツタフミのおじいさんにあたる蔦作蔵工人の経歴は『こけし辞典』で概ね以下のようです。
『7歳で両親を亡くし里子に出され、16歳で佐藤勘内に弟子入り。
年季が明けた後も一年お礼奉公をし、そして独立。』
苦労人ですね。頭がさがります。そんな事を踏まえると、こけし鑑賞もより趣深くなります。
お供のこけし娘は、赤んぼ先生の元で書生をしている“ツタフミ”と“一子(イチコ)”(118話他)である。
いま一つ仲のしっくりしない二人に「親睦を図ってくるでち!」との先生の命による花見参加であった。
一子がツタフミの後輩となって約一年、相変わらず彼女は先輩のツタフミに心なしか反抗的である。
「せんぱ~い、また紫陽花ですよ。この間『長久院』で見たじゃないですか~。あたしもう飽きましたよ。」
「ちょっと一子、先生の命令よ。それにオーナーの前なのよ?シャキっとしなさい!」
南部娘である一子は首をクラクラさせて暇を持て余している様子である。
「は~い。ところでツタフミさぁ?、最近どうなの?」
「はぁ!?」
「だから最近どうなのっかな~って・・・」
「そこじゃないわよ!!アンタ今先輩の私を呼び捨てにしたでしょ!!」
「そこですか?いやー、もう一年経つしそろそろいいかな~って?」
「こけし界の徒弟制度を舐めてんじゃ無いわよ!私の祖父の苦労やウチの家系知って物言ってるの?
まったく!これだからアンタみたいな家柄の、しかもお土産出身みたいなモンは・・・」
「お、お土産!?それに家柄まで出して・・・せ、先輩・・・ひどい!」
一子は首をガックリとうつむかせ震えはじめ、それを見たツタフミも(しまった!)と思う。
「あ、ちょ、一子、そんなつもりじゃ・・言い過ぎたわ・・・悪かったわよ、ちょっと、泣かないでよ・・・」
ツタフミがあたふたしていると、にわかに一子は顔を上げ首をニュっとのばす。
「な~んちゃって!あたふたしちゃって、先輩かわいいわぁ~!」
その後一日ツタフミは一子と口を利かなかったという。
しかし何とも憎めないところもある一子。二人の関係も今は相変わらずであるという。
つづく
=====================最近紫陽花写真ばかりで恐縮です。明月院入口の橋のあたりでございます。
さて、ツタフミのおじいさんにあたる蔦作蔵工人の経歴は『こけし辞典』で概ね以下のようです。
『7歳で両親を亡くし里子に出され、16歳で佐藤勘内に弟子入り。
年季が明けた後も一年お礼奉公をし、そして独立。』
苦労人ですね。頭がさがります。そんな事を踏まえると、こけし鑑賞もより趣深くなります。