こけしブログ クラブこけし物語

クラブこけし物語と題したストーリーによって 所有するこけしを紹介

カテゴリ : 店外編:関東近郊

6月の某日、クラブこけしオーナーが紫陽花鑑賞に訪れたのは毎年恒例の鎌倉であった。
お供のこけし娘は、赤んぼ先生の元で書生をしている“ツタフミ”と“一子(イチコ)”(118話他)である。
いま一つ仲のしっくりしない二人に「親睦を図ってくるでち!」との先生の命による花見参加であった。
一子がツタフミの後輩となって約一年、相変わらず彼女は先輩のツタフミに心なしか反抗的である。
鎌倉紫陽花2017
「せんぱ~い、また紫陽花ですよ。この間
『長久院』見たじゃないですか~。あたしもう飽きましたよ。」
「ちょっと一子、先生の命令よ。それにオーナーの前なのよ?シャキっとしなさい!」
南部娘である一子は首をクラクラさせて暇を持て余している様子である。
「は~い。ところでツタフミさぁ?、最近どうなの?」
「はぁ!?」
「だから最近どうなのっかな~って・・・」
「そこじゃないわよ!!アンタ今先輩の私を呼び捨てにしたでしょ!!」
「そこですか?いやー、もう一年経つしそろそろいいかな~って?」
「こけし界の徒弟制度を舐めてんじゃ無いわよ!私の祖父の苦労やウチの家系知って物言ってるの?
まったく!これだからアンタみたいな家柄の、しかもお土産出身みたいなモンは・・・」
「お、お土産!?それに家柄まで出して・・・せ、先輩・・・ひどい!」
一子は首をガックリとうつむかせ震えはじめ、それを見たツタフミも(しまった!)と思う。
「あ、ちょ、一子、そんなつもりじゃ・・言い過ぎたわ・・・悪かったわよ、ちょっと、泣かないでよ・・・」
ツタフミがあたふたしていると、にわかに一子は顔を上げ首をニュっとのばす。
「な~んちゃって!あたふたしちゃって、先輩かわいいわぁ~!」
その後一日ツタフミは一子と口を利かなかったという。
しかし何とも憎めないところもある一子。二人の関係も今は相変わらずであるという。
つづく
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最近紫陽花写真ばかりで恐縮です。明月院入口の橋のあたりでございます。
さて、ツタフミのおじいさんにあたる蔦作蔵工人の経歴は『こけし辞典』で概ね以下のようです。
『7歳で両親を亡くし里子に出され、16歳で佐藤勘内に弟子入り。
年季が明けた後も一年お礼奉公をし、そして独立。』
苦労人ですね。頭がさがります。そんな事を踏まえると、こけし鑑賞もより趣深くなります。

6月某日、東京は谷中にあるお寺『長久院』は紫陽花の盛りであった。
紫陽花を背景にこけし娘“お嬢”(36話)の写真を撮ろうとするクラブこけしのオーナーであるが、
お嬢のお付の“爺”(スカートの達磨)がどうにもうるさく集中できないでいた。
ちなみのこの爺が過保護すぎるため、お嬢は内気でモジモジした娘である。

お嬢と紫陽花
「オーナー殿、お嬢を美しく撮って下されや。お嬢はもう少し上を見る感じがよろしいですぞ。」
「え、あ、はい・・は、恥ずかしい・・」
「あの爺やさん、アングルとかの支持は私がしますから少し黙ってお願いします。」
「失礼。お嬢の晴れ舞台につい浮かれ申した!何せ今年の『紫陽花ガールオブザイヤー』ですしのう!」
「いえ、そんな大した位置付けじゃないですけどね。なんかこの爺さんやり辛いな・・」
爺もうるさくお嬢の緊張も中々ほぐないので、オーナーは気さくな会話を交えながらカメラを構えた。
「はいじゃあお嬢ちゃんリラックスして!はいそのまま、目線だけこっち向けちゃおうか!」
「しばし待たれよオーナー殿!少しお嬢に馴れ馴れしくはないですかな!」
「は!?」
「やはりお嬢にはこの爺が指示しましょう。直接はいかんですぞ!」
「そんな回りくどい。ジジイ、失礼爺やさん、ホント黙っていただけませんかね。」
「そうは行きませんぞ。お嬢はとても繊細故、爺が守ってやらねば。この爺の目が黒いうちは・・」
やり取りをモジモジしながら聞いていたお嬢がついに言葉を発する。
「じ・・爺やは黙ってて!す、すいませんオーナーさん。」
お嬢の強い態度にショックを受けた爺は一瞬言葉に詰まるも号泣し始める。
「ご自分の意見をしっかり・・・お嬢も立派になられて!爺は爺はうれしゅうございますぞ〜!」
結局、爺は終始うるさいまま撮影は進んだのであった。
つづく
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一昨年前にお亡くなりの阿保金光工人の“お譲と爺”、久しぶりの登場でございました。
この独特のテイストのこけしがもう生み出されないことを残念に思います。
目の下の青が号泣しているように見える過保護な達磨の爺と困り顔のお嬢。
クラブこけしスタンプ(第2弾)のスタンプも、そんなイメージからなのです。

お嬢スタンプ

5月のある日、クラブこけしオーナーは藤の花が見たいと急に思い立つ。
ネットで検索しやってきたのは根津にある“ルクシネ”というケーキ屋さん。
木造の古びた建て構えの店先には藤棚もあるという何ともメルヘンな雰囲気のお店である。
何故か付いてきたのは、最近自分たちのロックの方向性に悩んでいるという、
タコボーズの“瀬谷タコ”と“荒たこ”(9596話)の二人であった。
「なあ瀬谷たこ、何でオーナーに付いて行こうなんて言い出したんだよ。」
「何でって荒たこ、藤はロックな気がしたからだぜ。創作のヒントにでもと思ったけど・・・残念だぜ!」
「まったくだぜ!花もうパサパサだぜ!シーズン過ぎてるぜ!」

藤とタコボーズ1
これには一同がっかりであったが、ふとあることに気がついたオーナーがタコボーズの二人に言う。
「そんなに落ち込むことはないぞ二人とも。今ここにあるロックのヒントに気付かないかね!」
「そんなこと急に言われても・・・ん!?待てよ瀬谷たこ、ゆっくりと後ろを見てみろよ!」
「何だよ後ろって・・・、ま、まさかアイツ!?」

藤とタコボーズ2
皆が気付いた先にいたのは、店先のベンチで一人シュークリームを食べる若い男の姿であった。
「そうだぜ瀬谷たこ・・・まあまあの良い男が一人で嬉しそうにシュークリームを食ってやがるぜ。」
「彼女連れでも無し、男一人で洋菓子の買い食いかよ・・・凄ぇ勇気だぜ、なあ荒たこ。」
「全くだぜ。男一人で臆さずメルヘンな店に入り、店先で直ぐに食う・・・これは正に!」
「どうだね二人とも、これは最早一つのロックスピリッツでは無いかね!」
「オーナーさん、凄ぇロックインスピレーションを受けたぜ!早速形にしなきゃだぜ!」
何かを掴んだタコボーズの二人。
そうして後日『ロンリーシュークリーム』というそこそこの名曲が生まれたのであった。
つづく
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タイミングが良ければ藤の花も見れる上、ケーキも食べれるという一石二鳥のお店。
ですが時既に遅し、他に何カ所か当たりましたがどこもシーズンは過ぎていました。残念。
藤をちゃんと見たことがないので、来年こそは然る場所で再チャレンジいたします。
なお、お店では私もしっかりとシュークリームを買い食いさせていただきました。
連れが一緒なのでメンタル的にそんなに臆することなく、こけし写真も撮影できました。

その日、クラブこけしの“ナオシ”と“こもっふん”(27話他)宛に封書が届く。
送り主は“委員長”(64話)。何かとツアーを計画してはナオシとこもっふんを誘う仕切り好きである。
封書の中身は昨年の『鎌倉紅葉狩りツアー2017
の際の写真で、
「楽しかったね!また何か計画したら声かけるね!
という一文が添えられていた。
鎌倉秋2016
写真を眺めるナオシとこもっふんは神妙な面持ちである。
「この写真の撮ってたときはまだ皆意気揚々としてたよね、ナオシ姉ちゃん。」
「そうね、この時まではね・・」
「この後ナオシ姉ちゃん、おみくじで『凶』引いて荒れてたよね。」
「うん、あれはへこんだわ。そう言うあんたも風邪気味で、途中から体調を崩してたじゃない。」
「あの日は寒いし雨降るし電車に乗り遅れるしで、食欲も結構なかったっけ。」
「でも委員長の引率はパワフルだっね。私たちのテンションお構いなしというか・・・正直過酷だったわ。」
委員長には善意しかないのだが、そのツアー内容はいつも濃厚で、
付き合うには結構な肉体的&精神的体力要求されるのが常である。
「でも写真って不思議だねナオシ姉ちゃん。何だかすべて良い思い出に感じてくるわ。」
「それがこのタイミングで写真をよこした委員長の狙いね。もはやプロ魂を感じるわ。」
「そこが委員長の凄いところよね。誘われたらまた参加したいような気持にもうなってるもん。」
「・・・まあ、そうね。」
何だかんだで委員長のツアーの誘いを断らない二人であった。
つづく
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昨年2016の紅葉ガールの写真でございました。
(ちなみに歴代紅葉ガール′15はこちら。′14はこちら
この日は天候不良やら
おみくじで『凶』やら不測の事態やらで疲弊したことが思い出されます。
一方それを良い思い出に変えてくれるのもまた写真の素敵な力だと思います。
何はともあれ記憶力が弱いので、写真を後に見るというのはまた新鮮に楽しめます。

クラブこけしの中でもエリート意識の強いタジ子(59話店外編40他)とキイチ(85話店外編26他)。
いつも張り合っているそんな二人が、横浜中華街の関帝廟に観光に来ていた。
中華街
こけし好きからは『中国料理風』『濃厚』『ねっとりした情味』等と評されるタジ子。
そんな訳で普段タジ子を『中国女』と揶揄するキイチだが、夜の関帝廟の美しさには心を奪われていた。
「はぁ~、ライトアップされるとエキゾチックで素敵だわ・・・。」
「あら、キイチ。中国的なものは私を含め嫌いなんじゃなかったかしら?」
「えっ!?もっ、もちろんよ!別に好きじゃないわよ!こけし女子たるもの日本命よ!」
「あっそう。まあいいわ。私これかから中華街を満喫するから。キイチはもう帰りなさいよ。」
「ま、まあ、そうね・・・。じゃあ帰ろう・・かしら・・・」
「さあて、どの中華屋さんに行こうかな。『濃厚』で『情味』あふれる『中国料理』!楽しみだわ!」
「の、『濃厚』な『中国料理』を・・・、これから食べるのタジ子?」
「もちろんよ。年末だしパアっとね。アンタは帰って日本人らしくお茶づけでも食べたら?」
キイチはお腹をグルグル鳴らし遂に堪らずに行ってしまう。
「わ、私だってたまに「京劇のメイクみたいね!」って言われるし!」
「ほう、それで?」
「アンタのことは嫌いだけど、別に中華料理は嫌いじゃないし!」
「フフフ、まあヨシとしてあげるわ。」
「何よその勝った的な感じ!一人中華なんて絵的に痛いだけよ!逆に感謝してほしいわ!」
結局は忘年会ということで中華街へと向かう二人。
こうして2016年は暮れていくのであった。
つづく
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こけし辞典における太治郎型こけしに対する表現が独特で好きです。
『中国料理風』『濃厚』『ねっとりした情味』などなど、
評者の中華に対するイメージとは何だったのか、私ごときには計り知れないものがあります。
喜一型の京劇風な顔立ちは、関帝廟の中華な景色に妙にお似合いなのですが、
太治郎型に対する先人の評は、そんな表面的で浅はかな話ではないのでしょうね、きっと。

といったところで、年内はここまで!皆様良いお年をお迎えくださいませ。

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