こけしブログ クラブこけし物語

クラブこけし物語と題したストーリーによって 所有するこけしを紹介

カテゴリ : 店外編:関東近郊

クラブこけしの娘“シカク”(124話)が秋田より上京して1年。
東京にも馴染んできた彼女は、何か都会のトレンドにも触れたいと思い始めていた。
そんな話を聞きつけてシカクに声をかけてきたのはギュンギュン(店外編19他)であった。
気合の入った表情が怖かった為、これまでギュンギュンとの接触を避けていたシカク。
ギュンギュンは見た目の割にとても
乙女チックな性格であることをシカクはまだ知らない。
「シカクちゃん、私も流行りの場所で気になるのがあるから一緒に行こうよ。」
「お、お願いします!(怒ってる?!上京1年程度で調子に乗った私を怒ってる?)」
そうして二人がやってきたのは東京の清澄白河にある『ブルーボトルコーヒー』であった。
清澄白川1
「あのギュンギュンちゃん、ここはコーヒー屋さん・・かしら?(合ってるわよね?!)」
「そう、ここはコーヒー界の“Apple”とも呼ばれるブルーボトルコーヒーよ!」
「Appleってコンピューターの・・ど、どういう事なの?(浅はかな質問かしら?!)」
「シカクちゃん、コーヒーのサードウェーブつまり三つ目の波というのはご存知?」
「し、知りません。(ああ、きっと無知な田舎者だとせせら笑う気ね!)」
「まず一波がインスタントコーヒーの普及、二波がスタバとかのシアトル系のブームね。
でこの三波がコーヒー本来の味を重視するという西海岸発のここのスタイルなのよ!」
「確かに若者や外人さんまで行列して・・・凄いトレンドな景色だわ!」
「そのお店の日本1号店が清澄白河のここなの。誰かと一緒に来たかったのよ!」
「ギュンギュンちゃん、いい人ね!私誤解してた!ありがとう!じゃあ早速入りましょ!」
「無理よ・・・。」
「え?」
「オシャレすぎて腰が引けて・・。誰かと一緒なら勇気が出ると思ったけど・・。」
「えええっ!?」
「この空気感分かるでしょ?席ではMacbookとか開かないときっと笑われるわよ?」
「な、なるほど、意識を高く持っていないと太刀打ち出来ない場所なのね・・・!」
「ごめんねシカクちゃん・・・別の普通のカフェに行きましょ。」
何か壮大な勘違いをしている二人だが、お互いこれを機に仲良しにはなったのであった。
つづく
清澄白川2
↑おまけ:清洲橋を背景に
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行列のせいもありますが、当の私もなんか気が引けて入れませんでした・・・。
街としては正直そこまで活気があるわけでは無いのですが、ここだけは別世界です。
コーヒーのサードウェーブというものの影響力の凄さみたいなものは良く分かりました。
機会があれば再トライですが、清澄白河には他にも素敵なカフェがありましたよ。


昨年末の事、恒例の年末温泉旅行でクラブこけしオーナーがやってきたのは箱根温泉。
そして今回付いてきたこけし娘は“さくらんぼっ娘”と“ピピィ”(129話)。
二人とも箱根温泉で叶えたい願いがそれぞれにあっての旅行参加であった。
温泉街の老舗『菊川商店』では、名物の饅頭焼き機前でさくらんぼっ娘はご満悦である。
箱根1
「ここの饅頭を店頭で食べるのが念願だったのうよう!何個でも行けるわね。」
「この機械が何だかレトロで良いわよね。でもさくらんぼちゃん、食べ過ぎじゃない?」
「ピピィちゃん、この犬のパンパンの腹を見てよ。私なんてまだスリムなもんよ。」
「オマエハ顔ガ、パンパンダワン!」
「うるさいわね、てかアンタ喋れたのね・・。でピピィちゃん今回何がしたいの?」
「ウフフ、オーナーと二人で旅館でやることがあるのよ。その時は覗いちゃ駄目よ。」
「なんだかいやらしい響きね・・・。」こうして一行は旅館へと移動した。
旅館では二間続きの客室の一方にさくらんぼっ娘を残し、オーナーとピピィは隣に消える。
怪訝に思うも彼女は一休みしていると、俄に次の間から怪しげな声が聞こえてくる。
「ピピピ、ピピピィ!」
「違う!ピピィちゃん、もっと軽やかな声で!」「ピッピピ、ピピピィ!」
「もっと美しく、それと『ピピィ、ピィ、ピィ』なのだよ!」「ピピィ、ピィ、ピィ!」
「良くなってきた!じゃあもう一回、歌うように!」
何やら分からぬ怪しいやり取りにギョッとしたさくらんぼっ娘は襖をあけ隣を覗く。
箱根2
「大丈夫ピピィちゃん?オーナーに変なことされてるんじゃないの?!」
「あ、うるさかった?実は『姉さんと同アングルの写真撮影』が私の今回の目標なの。
ちなみに私の憧れの姉さんの写真はコレね。オーナーに今回お願いしたのよ!」
ピピィオリジナル
「あ、そう。アンタ変なこだわり持ってたのね・・・。好きにしなさいな。」
気が抜けた彼女は襖を締め、再びくつろぎ始めた。
こんな感じに皆が好き好きに過ごした2017年の年末なのであった。
つづく
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バタバタした話&なんだか説明が足りなくてすいません。
“ピピィ”の由来は雑誌『こけし時代』掲載の佐志馬こけし写真(上)の擬音表現からで、
いつかこれっぽい写真を撮ってやろうと思っていたのを今回実行したものでした。
同工人の作でも時代で変わることが(参129話)改めて良く分かる比較写真です。

クラブこけしオーナーにとって一昨年前より恒例となっているのが酉の市参り。
昨年末、新たな一年の商売繁盛を願い浅草の鷲神社に詣でたのだが、
熊手を買うにあたり今回同行を買って出たのは“ゴッドハンド”
113話であった。
彼女曰く「同じ熊手でもその効果には実はムラがあります。くじ運の無いオーナーさんの事、
きっと実の少ないものを掴んでしまうことでしょう。」
「くじ運の悪さを良くご存じで。では今年はゴッドちゃんが代わりに選んでくれるかな!」
「はい、そのつもりです。この袖から覗く幸運の手で選び出してあげましょう!」
というわけで、今年は意気揚々と神社にやってっきたオーナーであった。
混雑する各店を見て回るゴットハンドは、とある熊手の前でオーナーを呼ぶ。
酉の市2017_1
「オーナーさん!この宝船タイプから並々ならぬ運気を感じます。さあ、お店の方と交渉を!」
「そ、そうであるか・・・しかしこれは・・・。」
酉の市の熊手に基本的に値札は無く、ある程度の物は店でその値を交渉するのが常である。
しかし宝船からは明らかにオーナーの予算をオーバーしているオーラが放たれている。
「どうしたんですかオーナーさん?人見知りですか?何なら交渉は私も手伝いますよ。」
「いや、その、明らかに予算を超えて・・・」
「そうなんですか!?多少気にしたつもりですが、あの、ちなみにご予算は?」
「その・・・千円から二千円くらいで・・・。」
「この、貧乏オーナーが!!あ、失礼、つい・・・、ではその前提で頑張りましょう。」
果たして均一コーナーより苦心の末、彼女は一つの熊手を選び出したのであった。
「オーナーさんこれです!これならそこそこのご利益が期待できることでしょう!」
「おお!ありがとうよゴットちゃん!来てもらったかいがあったのだよ!」
彼女はオーナーに労われ微笑むも、秘密の力を使いすぎたその頬はゲッソリしていたという。
こうしてこの熊手は一年間店に飾られることになるのであった。
酉の市2017_2
つづく
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一昨年前初めて行った酉の市の活気に感動して、昨年も詣でておりました。
写真は店の人に断り撮らせてもらいましたが、何のことやらと思われたことでしょう。
着物姿のこけしは季節的にも和の縁起物とも良くお似合いです。
買った熊手を洗濯ばさみで立たせるあたり、うだつの上がらなさが表れています。

クラブこけしのオーナーと店のこけし娘“豆タンク”と“サクタ”(第116話他)は昼前、台東区に来ていた。
目指すのは、嘗ての吉原遊郭の吉原大門そばの老舗天ぷら屋『土手の伊勢屋』。
オーナーは天丼はもちろん、文化財に指定されている建物にも興味もあることから店を目指し、
努力家の豆タンクは今は無き遊郭の何某か学べるのではと付いてきたのである。
一方言葉に出さないまでも、今日も首を『ん?』と傾げているのは人の好いサクタ。
そもそも親友豆タンクのヘルプで一時滞在のはずが、今なお引き止められている事に疑問を感じていた。
7月半ばのこの日、朝から気温も上がり皆汗だくなだけにサクタの疑問は募り、首傾げも止まらない。
土手の伊勢屋1
「やっと『土手の伊勢屋』に到着である!この暑い中、既に開店前から行列しているではないか!」
「風格のある店っすねオーナー!どうサクタちゃん、来た甲斐あったでしょ!」
「そうね豆タンクちゃん!(なぜ私までこの暑い日に巻き込まれているのかしら?)」
「かつての吉原の香りみたいな?遊女の悲哀みたいな?なんかこう、感じるよねサクタちゃん!」
「そうね豆タンクちゃん!(ああ、豆タンクちゃん、よく分かって無いのに無理してるわ)」
程なく店は開店、席に着いた一同の前に、それは見事な天丼が出て来たのであった。
土手の伊勢屋2
「なんと豪勢な盛り付けの天丼!ではでは、ペロリといっちゃおうかな!」
「美味しそうですねオーナー!(昼からの猛暑に加えそんな油もの、オーナーの胃じゃ無理では・・・。)」
サクタの思った通り、食のペースが徐々に落ち、辛そうな表情のオーナーを豆タンクが励ます。
「頑張るっすよオーナー!遊女の?色んな苦労?を思えばいけるっすよ。ねぇサクタちゃん。」
「そうですね二人とも(ああ、オーナーも豆タンクちゃんも色々無理している・・・)」
サクタは笑顔ながらも、諸疑問から首をかしげ通しである。が、その時サクタはハッと我にかえる。
(まさか二人共私のため?!疑問や無理を抱えつつ人は頑張っていることを暗に伝えているのね?!)
もちろんアップアップの二人にそんな意図はないが、サクタが少し前向きになった夏の出来事であった。
つづく
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常々行ってみたいと思っていた『土手の伊勢屋』さん。
店構えや天丼の旨さ(そしてお値段)等、インパクト大ですが大変満足いたしました。
そして自分(の胃)ももう昔ほど若くないんだと少し感じた日でもありました。
多くのお客さんが記念に天丼を撮影してましたが、
こけしを並べたのはどうやら私が初だったようです。そりゃそうですね。

6月のある日クラブこけしオーナーは店のこけし娘“キイチ”と、
その姉である“キイチ姉さん”(店外編26他)に声をかけ、東京墨田区の『向島百花園』に来ていた。
江戸時代から続くという歴史ある草花鑑賞を主とした花園である。
「キイチちゃん、キイチ姉さんのご両人!ついに満を持してのこの時が来たのだよ!」
「私たちを誘ったってことは・・・ですよねオーナー!
!ほらキイチ姉さん、私の言った通りですよ!
「うむ!菖蒲(アヤメ)と、アヤメこけしと言われる君たちの念願のツーショット写真撮影会なのだよ!」
「いやっほぅ!流石オーナー!予想通りだわ!」
それぞれに念願が叶ったと浮かれるオーナーとキイチだが、キイチ姉さんはため息をついている。
向島百花園1
「やっぱりね、妾ァこんなことなんじゃァないかと思っていましたョ。はぁ・・・」
「むむ、いかがなされたキイチ姉さん。テンションが低いではないですか。」
「オーナーさん、こいつァ菖蒲(アヤメ)じゃァないのョ。花菖蒲(ハナショウブ)ですョ。」
「ハナショウブ!?」
キイチ姉さんは、オーナーとキイチに『ショウブ』『アヤメ』『ハナショウブ』、
そして『カキツバタ』の違いを滔々と説明した。(詳しくはコチラにまとめてあったりです)
向島百花園2
「そ、そうだったのか・・。」
「まァ浮かれた妹も妹ですョ。さァキイチ、賭けは妾の勝ちだ。甘酒をおごっておくれョ。」
「くっ・・やっぱり姉さんが賭けを持ち掛ける時は乗るもんじゃないわ・・」
「どういうことかねキイチちゃん。」
「いえ、姉さんが菖蒲(アヤメ)が撮れるか否かで賭けをしないかって・・・楽勝だと思ったのに。」
結局責任を感じたオーナーが皆に甘酒をおごってあげたという初夏の出来事であった。
つづく
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蒸し暑い日だったので冷やし甘酒が美味しかったです。
しかし今回のアヤメなど、こけしがらみで思わず勉強になることが時折あります。
(このなるほど感をいつまで覚えていられるか自信はありませんが。)
こけしの模様にちなんだツーショット写真は今後も続けられたら楽しいなと思っています。

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