こけしブログ クラブこけし物語

クラブこけし物語と題したストーリーによって 所有するこけしを紹介

カテゴリ : 店外編:関東近郊

静岡観光を満喫するシカク、お嬢、よう子の3こけ娘が訪れたのは『三保の松原』。
約7kmの海岸には3万本の松が生い茂り、海と富士山とで織りなす風景は、
2013年に富士山世界文化遺産の構成資産にも登録された、静岡きっての景勝地である。
その日も好天ながらも風が強いこともあり、一行は多少ハイテンションになっていた。
「私、“ミホ”に名前変えるね!」上機嫌のシカクが唐突に言う。
「あ、シカクがおかしくなった。」よう子は冷めた反応である。
「あの・・もしかして三保の松原に来たからそんなことを?」お嬢がおどおど尋ねる。
「そうだけどさ、でも“ミホ”って響きが可愛くない?」
「だからってアンタと関係ないでしょ。脈絡がないじゃない。」よう子が言う。
「私の胴模様に松があるから脈絡ないわけじゃないもん。それに勝手なのは、
私にシカクなんて色気もへったくれもない渾名付けた(店外94)オーナーだもん。」
「そもそも三保は地名よ?何で名前のミホとごっちゃにしてんのよ。」
「ここに来たのが良い切っ掛けよ!ミホ、今日は何だか良い気分!」
「もうミホを名乗り始めてる・・・大丈夫かな。」何となく不安になるお嬢。
記念写真の撮ろうとカメラを構える同行のオーナーに、シカクが高らかに言う。
「さあオーナー、よう子とお譲、そしてミホの写真をこの三保の松原で撮って頂戴!
かくしてシカクの名は羽衣と共に天にお返しするわよ!って、あーれーっ・・・」
三保の松原
三保松原の一角には、天女伝説で知られる羽衣の松があることに掛けた宣言であるが、
その瞬間一陣の風が松原を吹き抜け、直撃を受けたシカクが地面に落下していく。
「ほら言わんこっちゃない。あんたはシカクでいいのよ。」よう子が呆れている。
「神風ね!何かドキドキするけど、シカクちゃんの発想はワクワクもするわ。」
お嬢の胴の爺やが言う。「ミポリンの名曲『WAKUWAKUさせて』の通りですな!」
一方落下したシカクは「ミホがいいの!」と諦めの悪い様子であった。
つづく
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三保の松原が何となく清涼感のある響きなのは、「ミホ」の語幹とイメージでは?
ということで世代を感じる話になってしまいました。
さて、今回は失敗写真の部類なのですが、たまには動き(?)があるのも良いかもと。
納得の写真のためこけしが転げ落ちるのは日常茶飯事ではあります。

「富士山最高!それに超いい天気!」シカク(店外133他)が感激する。
「ちゃ、茶畑も綺麗・・・!」恥ずかしがり屋のお嬢(店外107他)も言葉が漏れる。
「これぞ静岡って景色!穴場なんじゃない?」少ない観光客によう子も上機嫌である。
富士山
一行がやってきたのは富士山を望む静岡の茶畑“大淵笹場”。
茶摘みシーズンではないが、好天に恵まれ雰囲気は十分であった。
「私の胴の松竹梅とお嬢の達磨と、あとよう子ちゃんの顔!なんか縁起もいいよね!」
「ちょっとシカク、私は何で顔なのよ?」よう子が不満そうに言う。
「良い意味でよ?よう子ちゃんの顔って元気が出るというか、ねぇお嬢。」
「えっ!・・・、あの・・・その・・・」急に振られたお嬢はまごついてしまう。
「わかった。お嬢が納得の説明をしてくれるなら受け入れるわ。良い意味としてね。」
よう子にそう言われるも、もじもじするお嬢に達磨の爺や(胴)がささやく。
「お嬢、これは友情を育む第一歩ですぞ!さあ素直な気持ちを言うのですじゃ!」
爺やの後押しもあり、お嬢は意を決してよう子に言う。
「えっと・・・よう子ちゃんの顔・・・私も好き!富士山にはお似合いだと思う!」
「え〜、そうなの〜、お嬢が言うなら仕方ないな〜。」まんざらでもないよう子。
嬉しそうなよう子を見て、勇気の湧いたお嬢は更に言う。
「それに、よう子ちゃんのお顔って、『茶』みたい!今日の景色にピッタリ!」
「茶!?どういうこと?」シカクもよう子も、お嬢の言う意味がよくわからない。
「えっと、だから、漢字の『茶』なの。そのままの。」
よう子の顔をまじまじと見た後、吹き出しながらシカクが納得したようである。
よう子と茶
「あー、『茶』ね!漢字の。なーるほど、でも独特の視点ね、お嬢!」
「えっ!?私の顔が茶の字なの?初めて言われたわ!お嬢、不思議なセンスね。」
「私もうよう子ちゃんが茶柱にすら見えてきたわ。」笑いが止まらないシカク。
茶畑の中で楽しそうな3人を、目を細めつつ爺やは眺めながら、
(お嬢、ルッキズムには近年慎重に触れるべしですぞ!)と内心思うのであった。
つづく
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人生で富士山に最も接近してきました。
伊豆方面はよく行きましたが、この辺の静岡も「らしい」感じで良かったです。
次の日も天気は良かったのですが、富士山はモヤにかかって見えず、
この日が幸運だったことに後から感謝した次第です。

「遂にやってきたわね2号!念願の梨狩り!」
「感無量だね1号。オーナーの夢だったようだけど、梨狩りは全人類にとっても憧れよ。」
残暑盛りの9月、松戸の果樹園『初清園』で語り合ううんきち1・2号(店外132他)。
梨狩り
「これ全部食べ放題なんだよ。遠慮なくどんどん食べていいんだよ2号!」
「じゃあ1号も食べなよ。あたしはもう限界、ウップ、2個で十分だった・・・」
「実はあたしも限界。暑いし。結局涼しい家で食べるのが一番じゃない?」
「ほら見て、オーナーも汗だくで詰め込んでいるけど、もう顔が青いわよ。」
なんとか元を取ろうと足掻くオーナーを尻目に、1号2号は木の上で語り合う。
「ところで2号、今回の店外編が紹介されるのは12月頃だって。」
「え、そうなの?季節感もへったくれもないわね。じゃあ年末っぽいこと話そうか1号。」
「そうね。じゃあ2号、今年一年どうだった?何か変わったことあった?」
「それが・・・あったのよ!!聞いて驚くなかれ1号、私に大量の妹がいたのよ!」
「そりゃあ父ちゃん(鈴木俊之工人)も健在だし、妹だって増えるでしょうよ。」
「そういことじゃないの!そもそも私の出生の秘密は知ってるわよね1号?」
「注文したオーナーが工人にわがまま言ってリボンつけてもらったって話でしょ?」
「そう!!(第83話)だからリボン型こけしは私が初めてだったのよ!?」
「・・・ということは、その妹達っていうのは、まさか?!」
「そう!私と同じリボン型が鳴子のお店にズラリと並んでいたのよ!!」
「ひえー、そうなの?じゃあ初代として妹たちに恥じないようにしなきゃね2号!」
「どこまで私が関係してるかわからないけど、とにかく身が引き締まるわ!」
「じゃあそんな2号に一つ今年を総括してもらいましょうか。しかも謎掛けで!」
「すごい無茶振り!えー、じゃあ素人の梨狩りと掛けまして、私の妹達と解く。」
「はい、素人の梨狩りと掛けて、うんきち2号の妹達と解く、その心は!!」
「熟(売)れてんだかどうだか良く分かりません!」
「おい!何か失礼だな。2号の妹達きっとバカ売れだよ!あと梨も十分おいしかったよ!」
2号につっこみつつも、無茶振りの割に上手いこと言うなと思った1号であった。
つづく
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梨のもぎかた等勉強になりましたが、
蒸し暑さとか蚊との闘いとかで意外と落ち着かず
経験的には1度で満足といった感想です。
そうこうしている間に年末が近づいてきてしまいました。一年の速さが恐ろしい。
更新がなかなかはかどりませんが、年内もう1回いけるか?

都内の地味目な名所探訪(前回こちら)をライフワークとしているこけし娘のゆき子。
今回の探訪先は『目黒区総合庁舎』。かの巨匠村野藤吾設計の現代建築の名作である。
ゆき子は今回、庁舎近所のお洒落カフェ等、おまけ部分の調査にも余念がなかった。
というのも、この探訪趣味にはいつもクラブこけしから同行者を募っているのだが、
これまでの参加者達は暇つぶしや興味本位で適当にやってくるため、多少遊びが無いと、
直ぐに飽きたり、疲れたと言い出したり、ある種失礼な者ばかりであった。
しかも今回建築というお硬いテーマなこともあり、ゆき子はより気を使ったのだった。
果たして今回参加したいと手を上げたのはベレー。(店外186ほか)
ベレー帽にもんぺという奇抜な出で立ちの、独特な(ハイ?)センスのこけし娘である。
ゆき子はベレーとは初対面だが、この趣味を通して新しい友人を作ることも、
彼女がこの探訪に同行者を募る一つの理由であり楽しみなのである。
目黒区総合庁舎
「ゆき子さん、興味深い企画に感謝します。しっかり建築探訪しますわね。」
「始めましてベレーちゃん。参加ありがとね。後でお茶もできるからね。気楽にね。」
最初は張り切っても後で皆疲れて来ちゃうのよネと、内心思うゆき子をよそに、
目黒区総合庁舎を眺めながらベレーは熱く語りだした。
「建物に角があることを嫌った村野先生の特徴がふんだんに盛り込まれているわ。」
「先生呼び!?すごい入れ込みようね。気楽でいいのよ。後でケーキもあるわよ。」
「アルミ鋳型の外装とバルコニー作る奥行きにより、建物が光を吸い込んでいるみたい!
日光が建物から周囲へ反射することすら、“角”と捉えた先生のお答えがこれなのね!」
「べ、ベレーちゃん、あまり飛ばすと疲れちゃうわよ。むしろもうお茶にしよっか?」
これまで参加の娘達を疲れさせてしまった経験から、ゆき子は気が気ではない。
「ウフフ。ゆき子さんは花よりお団子ですね。建築探訪はお茶の口実かしら?」
悪気なく言い放ったベレーにゆき子は何ともいたたまれない気持ちに包まれた。
「(何この悔しさ!?いつもあなた達があんなだから今回気を使ったのに!)」
気持ちを180度切り替えた彼女は、ベレーとハイレベルな建築談義を戦わせたという。
そしてその後は互いの知見の深さを讃え合い、素敵なティータイムを過ごしたという。
つづく
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かつては戸棚やブラウン管テレビの上に昭和感をみなぎらせていたこけしも、
昨今はお洒落インテリアとなった今日この頃。そんな流れを後押しすべく、
現代建築の名作とともにこけしの新たな魅力を演出しようとしましたが、
そこまで上手い写真にもなっていない気がし、自らのセンスの無が残念です。

ボクッ娘とQと紫陽花
「ちょっと待った!この写真撮ったの2022年だよね?去年だよねボクッ娘ちゃん!?」
「うん、1年以上前だね。だからボクたちの扱いはそんなもんなんだってばQちゃん。」
いつも後ろ向きに物事を考えがちなボクッ娘とQ(店外123他)が、
鎌倉某所で紫陽花の花を前に時空を超えたメタ的なやり取りをしている。
「お蔵入りになりかけた写真を今頃しれっとブログ掲載するとは・・・」
「それにしても紫陽花ガールシリーズ長いよね。ちょっとボク調べてみようか、ええと・・
〇2022年7月15日 店外編185(ゆさこ、ピヨピヨ、白玉)
〇2020年8月21日 店外編158(モガ、ダルマ犬)
〇2019年9月2日 店外編144(デンゴ、筒)
〇2018年7月30日 店外編126(ししおどり、ムグムグ、ゆう子)
〇2017年8月21日 店外編108(ツタフミ、一子)
〇2017年8月7日 店外編107(お嬢)
〇2016年9月5日 店外編81(もちっ娘)
〇2014年11月10日 店外編14(ゴヘイ)
ということらしいよ。」
「もう9年目なんだ。よくやるよねオーナーも。」
「いい加減こけしと紫陽花並べてコメントしようにもネタが尽きたんじゃないの?」
「いやいやボクッ娘ちゃん。紫陽花を前に私たちがどうふるまうかがきっと大事よ!」
「あれ?Qちゃん、今日はやけに前向きなんじゃない?」
「だってさ、一応さ、1年遅れだけど第9代目紫陽花ガールなわけじゃない?」
「『紫陽花ガール』の響きにやられたわけだね。うん、まあ悪い気はしないか。」
普段後ろ向きな二人も久しぶりに軽い気持ちになっていた。
「でもボクッ娘ちゃん、ゴヘイちゃん初代紫陽花ガールなんだね。聞いてなかったよ。」
「そうだね。後ろ向き仲間だと思ってたのにね。後でちゃんと説明してもらおうね。」
相変わらず人の幸せに一言言いたくなるものの、多少機嫌の良い二人であった。
つづく
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日々忙殺され写真紹介がなかなか追い付いていない状況ですが、
季節感は合わせたいので、1年ずれのご紹介になったりしています。
紫陽花こけし写真、
確かに何度も繰り返している気はしていましたが、
もうそんなになるものかと、今回しみじみ再確認させていただきました。

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