六月某日、鎌倉の御霊神社にクラブこけしのモガとダルマ犬(149話他)は来ていた。
「東京の紫陽花もなかなか良いもんですなモガお嬢。」
「そうね犬爺。江ノ電とのコラボも良いし、何より空いてて快適だわ。」
鎌倉モガとダルマ犬
そんな会話の横で、一眼カメラを手にオーナーは何やら打ち震えている。
「空いてて快適どころではないのだよ!これは最早奇跡なのだよ!」
「どういうことなのオーナー?」モガが問う。
「この時期のココはもう人だかりで落ち着いてカメラなんて構えられんのだよ!
昨今の自粛ムードによって、まさかこんな奇跡に巡り会えるとは・・・。」
「確かにこんな素敵な感じの場所ならみんなスマホで撮りたいもんね。」
「それが問題なのだよ!インスタだか何だか知らんが、今や一億総カメラマン時代。
しかしこちとら気合いが違うのだよ!奇異の目にさらされながら、
ひざまずいたり寝転んだりしてるのだよ!スマホ連中にそんな根性人はいるかね!?」
「いるわよ。やだやだ、素人の癖になんかカメラマン気取りで。ねえ犬爺。」
「お嬢の言う通りですな。そういう選民意識の輩こそ風紀を乱すことも多々ですしな。」
「し、しかし一眼とは被写体との真剣勝負!スマホポチポチと混同されては!」
「オーナー殿、そもそもカメラブームは一眼カメラが70年代に安価になったからですぞ。
流行り物という意味では、当時のそれと今のスマホも一緒ということですな。」
「さすが犬爺!結局オーナーが時代に乗れていだけないんじゃないの?」
「むむむ、何だか説得力があるような・・・
とにかく今はチャンスなのだよ!あ、また電車来る!さあもう一枚!」
色々と否定的なことをオーナーに言ったモガではあったが、
どうせ写真を撮ってもらうならスマホよりも
昔ながらのカメラの方が何となく緊張感があって実は好みらしい。
つづく
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旅先でカメラを構えていると、よく別の人からスマホ写真を頼まれることがあります。
カメラを持ってるついでだし、頼みやすいというだけなのでしょうが、
自意識過剰な私は「この人良い腕持ってそう!」と思われてると思って、
頑張って期待に応える一枚を撮ってあげようと努力します。伝わらないでしょうが。