ある日のこと、クラブこけしオーナーの愛人が営むこけしのモデル事務所では、
“清見”(本編148話)と友人の“コバナ”が何となしの会話をしていた。
コバナと清見
「あー、目がシバシバする、ブタクサかしら。ホント年がら年中アレルギーだわ。」
アレルギー体質の清美はその日も目と眉毛をしかめている。
「清美ちゃんはいつも大変そうよね。同情しちゃうわ。」
相槌をうつコバナだが、コンパクトを眺めながらのその言葉に同情味はさほどない。
「もうコバナちゃんコンパクトばっか見て。自分の小鼻が余程気に入っているのね。
でも私の話にももっと共感してほしいわよまったく。」
「あ、ごめんごめん。でも別にそんな小鼻ばっかり見てるわけじゃないんだから。」
「そうなの?別にどうでもいいんだけど・・・ってちょっと待った!!」
久しぶりにコバナの顔をマジマジと見た清美はあることに気が付く。
「コバナちゃん!そんなまつ毛あったっけ?!」
「あ、やっと気がついてくれた?ちょっとやってみたの。まつエクってやつ!」
「まつ毛エクステンション?!」
コバナの目元はまつ毛によって、この数日来パッチリとしていのだが、
目がシバシバしていた清美にはよく見えておらず、遅まきながら気づいた次第であった。
「どう?可愛くなったかしら?」
「でもまつエクって色々健康被害の噂も聞くし、何だか心配だわ。」
「清美ちゃんを見て、私もまつ毛でもつけてみようかしらって思ったのよ!」
「そうなの?」
「清美ちゃんみたく眉毛とか目元にひと癖あったほうが、なんか魅惑的というか・・・」
「あ、あらそう?私魅惑的?そうね・・コバナちゃんもその小鼻と
まつ毛が相まって繊細な顔立ちになっているわよ!いいんじゃない?」
褒められて悪い気がしなかった清見はコバナのまつ毛を褒めに転じた。
単にまつエクに興味があっただけのコバナだが、お互い気分の良い会話となった。
つづく
コバナ
○渾名:コバナ(弥治郎系)

○工人:井上ゆき子
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井上ゆき子さんの少寸物ですがその表情は大変繊細に描かれています。
撥鼻は単純な線というよりも小鼻っぽく描かれており、結構生々しい表情と感じます。
そしてこれまた繊細な表現のまつ毛。化粧っ化漂う存在感があります。
女性工人さんの作ということで、何だか納得です。