北上川の橋から岩手山を眺めつつ、キンゾウが何やら偉そうに行き倒れに語っている。
「だからな、この盛岡側から見る岩手山は、富士山みたく整ってる『表岩手』なわけよ。」
「はぁ、そうなんですねキンゾウさん。」
「おうよ。で、南の雫石や北の八幡平からは『裏岩手』つって、峰が続く見えなわけよ。」
「はぁ、詳しいんですね。」
「ばっかお前、南部の出身なら常識よ。そのくらい知らなきゃ女にもてねぇぞ。」
そんな話を隣で聞いていたもちっ娘は思う。
(ああ、キンゾウさんが‘ぶってる’わ。何だか誇らしげにこっちをチラチラみてるし・・。
そのくらいの話、行き倒れ君だってきっと知ってるのに、彼も人が良いわね・・・)
その後一行は本来の目的である八幡平の温泉地松川温泉へと向かった。
盛岡市からバスで1時間50分、4月初旬とはいえまだ雪の残る山中で、
再びキンゾウが偉そうに行き倒れに語っている。
「だからな、雪からの紫外線てのは馬鹿にできないわけよ。わかってるか行き倒れ?」
「はぁ、そうなんですねキンゾウさん。」
「雪の紫外線の反射率は80%よ?!そりゃお前、もう夏よりケアが大変だっつの!」
「はぁ、詳しいんですね。」
「ばっかお前雪国の常識だっつの!そういうの知らないと女に嫌われっぞ。」
そんな話を隣で聞いていたもちっ娘は思う。
(キンゾウさんがまた‘ぶってる’わ。っていうかやっぱこっちチラチラ見てる。
‘物知りな俺かっけーだろ?’アピールが凄いわ・・・)
キンゾウの間接的なアピールはその後もつづき、もちっ娘も一応ニッコリと
笑顔で対応するのでキンゾウの勘違いは止まらない。
(行き倒れ君も大変ね)と思いつつも、希にキンゾウが本当にトリビア的な事を言うので、
多少為にもなったと思うこともあったもちっ娘であった。
つづく
=====================温泉を絡めた東北旅行というのはなんとも魅力的なものです。
人生2回目の盛岡ということで、前回できなかったことも色々できました。
冷麺を食べたりコッペパンを食べたり、ベタなところですが大満喫です。
温泉地までのバス、中々の時間でしたが、天気も良く東北の景色を楽しめました。
コメント
コメント一覧 (2)
もちっ娘「ハイハイ、此方もちっ娘です。キンゾウ兄さんは今、行き倒れ君に『岩手山薀蓄語り』中ですが、そおゆうご事情なら一寸出て貰いまァーす♪チョイトキンゾウ兄さァーん、こけ無線出て頂戴な~」
行き倒れ(独り言→)「アレ、コイツは一寸意表を突くアクセス…キンゾウ兄さん大丈夫なのだろーか?」
キンゾウ「チョウ?!チョウってあの蝶?!」
もち「ええ、岩手のこの時期の蝶ですって。こけっとりさんが参考に知りたいらしくて。」
キン「・・・行き倒れ、俺の代わりに教えてさしあげろ。」
行き倒れ「ええっ?!僕がですか?」
キン「そうだ。お、俺が教えてもいいけど、お前だってたまには良いとこ見せたいだろ?」
行き「でも僕、蝶なんて知りませんよ。キンゾウさんも本当は知らないんじゃ・・・」
キン「ばっかお前、知ってるっつーの!夏のあれだろ?ちょ、蝶だろ?
・・・ア、アゲハチョウ・・・とか?」
行き「アゲハチョウ?!」
キン「え?え?違うの?じゃあじゃあモンシロチョ・・・ウとか?違う??」
行き「いえ、違うとかじゃないんですけど、何か普通っていうか、知ってるの適当に言ってませんか?」
キン「だ、だから例えばだよ!本命はお前が教えてあげろよ。」
ビリケン子「CQ、CQ、もちっ娘ちゃん、やり取りはだいたい聞こえていますよ!
なんだか無理言ちゃったかしら?」
もち「良いんですよ。最近キンゾウさん調子に乗ってたし。今は涙目ですけどね!」
ビリケン子「キンちゃんには参考になったって伝えておいてね。それじゃ、オーバー!」
(ほんと、キンゾウさんは優しい人たちに囲まれて幸せなもんだわ。
でも、こけっとりさんの登山も素敵なものになると良いわね。)