その日、クラブこけしでは新人フロアレディ採用面接を行っていた。
不景気で売上も横ばいの中、採用ハードルも高くなっている昨今である。
面接に来たのは紅葉のような胴模様のある、全体にさっぱりとした印象の娘であった。
面接官はクラブこけしのオーナー自らが行っていた。
モミジとE
「ではでは、自己紹介からお願いしようかな。」
「はい、岩手から来たエイキチといいます。」
「女の子なのに“エイキチ”とな。もし採用したらお店では源氏名が必要かのう。
う〜ん・・・じゃあ“モミジ”でどうかな?胴模様そのままであるが。」
「モミジですか・・・エイキチ的にはいいんですが、“EIKICHI”が何と言うか・・・。」
「?何を言っているのかな?」
「だから、私的には良いのですが、EIKICHI的にはどうかということで。」
「やっぱり何が違うのかわからんのだが・・・。」
「『メタ認知』ですよ。『メタ』というのは『高次の』という意味です。
高次からの自己認知、つまり自分自身を第三者的視点で客観的に認識することです。」
「わかるようなわからないような・・・。」
「何か決断や判断を迫られた場合、自己の直感以外にそういったメタ的、
つまり第三者的感覚を持つことで、冷静な決断が行えるということなのです。」
「賢げな事を言うのう。どこでそんなことを学んだのかね。」
「先程のは永ちゃんの逸話です。実は私、名前のせいもあり矢沢永吉ファンです!
彼はプライベートの『矢沢』ではなく、スター『YAZAWA』として、
自らを高次から客観視し、そのスター性を高めてきたのです!!
YAZAWAに限らずイチローも然り、つまりオーナーにも必要な大物の理論なのです!」
「私も大物になれるかね!凄い理論を聞いた気がするのだよ!
ついてはOHNAH(オーナー)、君を“モミジ”と命名するがいいかな?」
「モミジOK!やっちゃえ日産!」
上手いことオーナーをおだて上げ、めでたく採用された理論派のモミジであった。
つづく
モミジ
○渾名:モミジ(鳴子系)
○工人:
田山和文
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私は矢沢ファンではありませんが、永吉型という一点に引っ掛けた浅い発想でした。
胴模様は鳥足の方のモミジを何故か連想していますが、本当は菊の花のようですね。
私も良くは分かっていないメタ認知的な話、何となく伝わりましたでしょうか。
言われれば「ふ〜ん」ですが、実践的なところは良くわかりません。