クラブこけしで働くこけし娘の内、女だてらにダンディと名高い“男前”(132話)と、
自分の親の名を偽って店への採用を目論んだ“タケニ”(135話)の二人は、
その日、男前がタケニを誘う形で、遥々と東京町田市までやってきた。
普段さほど二人に接点は無く、タケニはなぜ自分が誘われたのか分からない。
そんな二人が程なく到着したのは、かの白洲次郎の住宅であった『武相荘』。
武相荘1
農家の造りながら、何とも品良く風情ある建物で、現在は一般公開されている。
ここは白洲次郎を心の師と仰ぐ男前がかねてより訪ねたかった場所である。
武相荘2
「タケニさん。ここが戦後GHQを相手に堂々と渡り合った白洲の家ですよ!」
「ええと、うん、まあ、和風だけど垢抜けた家というか、なんというか。」
「流暢なイギリス英語を話し、従順ならざる日本人とアメリカに言わしめたお方です。」
「はぁ、気骨のある人だったんだね、そのシラス・・・さん?」
「秀逸なのは白洲の服装やルックス!英国仕込みのダンディズムがたまらないのです!」
「そ、そう、男前ちゃんが彼を凄く好きだってのはわかってきたけど、なぜ私・・・?」
タケニはなぜ自分が男前に誘われたのか、何となく聞けずにソワソワしている。
「タケニさん、あなた、今朝方泣いていましたね?」
「別に泣いては・・・!まさか、あの時の!?」
確かに朝方、タケニは足の小指をタンスにぶつけ、うずくまり泣いていた。
「聞けばタケニさん、あなた、自出を偽って店に採用を目論んだとか。
それを気にして時折泣いているんですね?でも大事なのは中身なのです!」
「あ、あれは別に、私的にはどうでも・・・(なんか色々勘違いされてる!)」
「ありのままの自分で勝負すればいいんです!そう、白洲次郎のように!」
男前がダンディに語るムードに、色々訂正するのも面倒になり、
「そうだね・・・男前ちゃん!」と返したタケニ。
男前は時折彼女の思うダンディズムに酔い、おせっかい気味に人を巻き込む癖があるが、
悪気は無いゆえ、今回のタケニを始め皆、それなりに楽しく付き合っているという。
つづく
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武相荘、オシャレな家でしたが内部が撮影禁止の為あまりお伝え出来ず残念。
茅葺屋根の元農家なのに設えはスッキリとして、こけしが大層に合いそうです。
白洲次郎についても、これまで名前ぐらいしか知りませんでしたが、
多少人となりも何となく分かり、それなりにいい機会となりました。