クラブこけしオーナーの愛人が経営するこけしのモデル事務所に、
“もり子”という津軽娘が所属していた。
名門の出なのだが、事務所の社長である愛人からは、
「あなた、存在感はあるんだけど、まだ何か決定打が出てない気がするのよ。」
と葉っぱをかけられており、こけしモデルとしての方向性を目下模索中であった。
あるオフの日、彼女は親友の“お嬢”(店外107他)と待ち合わせ、散歩に行く日があった。
先に来ていたお嬢のもとに、程なくもり子は現れた。
「お嬢、おまたせ!」
「!?もり子ちゃん?何そのサングラス??大門団長!?」
「ちょっと新しい方向性を出していこうと思ったんだけど、だめかしら?」
「もう渡哲也だよ。何だかショットガンを構えてほしいくらいよ。」
「ええ〜ショック!いけてると思ったのに。じゃあこっちは?知的?」
「知的というか、もり子ちゃんの笑顔ベースだと、巨泉的なウッシッシ感が・・・。」
「ええ〜、だめじゃない!私らしい決定打って一体何かしら?」
「そもそもメガネじゃないんじゃないの?」
「だって私、社長が言うように、お嬢の"爺や"みたいなインパクトとか無いし。」
もり子はお嬢のスカートの爺やを見て言い、爺やがそれに答える。
「もり子殿、大事なのは見た目より中身ですぞ。日々己を磨けばいずれ輝きますぞ!」
「そんなんですかねぇ、爺やさん。」
「とはいえ、そのサングラスなかなか洒落ておりますな。お嬢もかけてみなされ。」
もり子からサングラスを渡されるとお嬢は装着した。
「ああ!いつも自信なさげなお嬢からなんと逞しく、そしてマスキュリンな魅力が!!
ハリウッド女優も真っ青ですぞ!これならお嬢はもう無敵ですぞ!!」
ハイテンションでお嬢を褒め称え始めたお嬢バカの爺や。
そんな爺やを見、もり子は冷静な自分を取り戻していくのであった。
つづく
こけしにメガネをかけさせてみるという比較的斬新な遊びだったでしょうか。
最近自分が人生初のメガネをかけはじめたこともあり、突如思いつきました。
割とおとなしい印象の一本ですが、何だかんだで嫌いではありません。
コメント
コメント一覧 (2)
みつ子「どーしてひで子姉ちゃんみたいに沢山のファンが未だつかないのお~?でしょー?」
もり子「流石姉妹同士、みっちゃん分かりが早くて助かるわァ♪…ひで子姉ちゃんってサ、可愛い風貌と嗜みの好さだけじゃなくてなンかこう…見えない深ーい『何か』を確かに持ってて、そこがアタシ達の『どーしても辿り着けない処』だったりするの…かナ?」
みつ子「…もしかするとお客サン達には、ひで子姉ちゃんの姿や瞳の向こうの『秀太郎祖父ちゃんの生きよう』が見えてたりするのかもネ……倒木事故で胸を打って肋骨二本も折ったのに、『自分が家を離れたり仕事をしなかったりしたら家族が飢えてしまう』って、二年もお医者に行かないで働いてた程の無私な人だったって。」
もり子「うわー、それホント凄いわ!将に『旧き善き家長の鑑』ね~。」
みつ子「ひで子姉ちゃんもきっと、そんなお父ちゃん譲りの剛さを持っているのネ…でもちっとも角々しい処が無い、其処がお客さんを惹き付けて放さないンだわ♪」
↑もり子ちゃん&みつ子ちゃん、「明日からのの自分に必要なコト」がなんとなく見えてきた様子…盛秀氏の骨折の行はご本人四十代頃の実話だそうです。
ひで子「・・・zzz、肋骨2本くらいナンボのもんじゃい!」
もり子「おしとやかな姉さんから時折出るこの雄々しい寝言!」
みつ子「こけっとりさんのおかげで、やっと謎の寝言の理由が分かったわね。」
なんて感じで知っていれば楽しい話に膨らめていたかも^^
なお私は骨折などした日には痛いの辛いのとわめき、皆に易々と同情を求めるタイプの人間だと思われます。