師走のある日、クラブこけしの“ボクッ娘(74話他)”が新たに店に入ったこけし娘と話していた。
娘の名は“ゴットハンド”。彼女の入店を熱望したのはクラブこけしのオーナーであり、
彼女の同郷の後輩であるボクッ娘がオーナーにせがまれ話を取り持ったのであった。
ゴットハンドはその名の通り、その袖口から手が覗くというこけし界でも異彩を放つ娘である。
ゴットハンドとボクッ娘
「ゴット姉さん、よくオーナーのオファーを受けましたね。」
「話があった時は嬉しかったのよ。このお店に興味もあったし。」
「でもオーナーのはしゃぎぶり見ました?絶対姉さんの『例の噂』のせいですよ。」
『例の噂』とはゴットハンドのもつ不思議なくじ運の良さである。
袖から覗くその手で引くくじは当たり、手に取るミカンは甘いという都市伝説があるのである。
「おほほ、そんな単なる噂なのよう。オーナーさんにもしっかり否定しておいたしね。」
「絶対オーナー納得してませんよ。どうせまたロクでもないこと考えてるわ。」
そんな矢先、案の定下卑た笑いを浮かべながらやってくるのはオーナーその人であった。
「やあやあゴットハンドちゃん、店には慣れたかな。ところで年末ジャンボをこれから・・」
「ほらやっぱり!姉さんにそういう誘いはやめて下さい!卑しいったらありゃしない。」
「おほほ、そうですよオーナーさん。私にそんな力は本当に無いんですからね。」
「何も言っておらんよ。でもせめて景気付けにその団扇で仰いでもらえんかのう・・」
「そういうことは愛人さんにお願いなさいませ。怒られてしまいますわ。」
「むむ、今日のところは仕方ない・・・」渋々とその場は去るオーナーであったが、
いつか彼女の恩恵にあやかってやろうという気配が満々と感じられるのであった。
「まったく・・・、でもゴッド姉さん、実際のところどうなんですか?」
「あら、気になるの?さあてね、秘密よ。」
そう言う彼女の手から火花が一瞬バチリと飛んだように見えた師走の出来事であった。
つづく
ゴットハンド
○渾名:ゴットハンド(木地山系)
○工人:三春文雄
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三春工人作の“アールデコ(第4話)”以来の2本目は石蔵型から、
こけし的にはタブー感あふれる『お手々ひょっこり』タイプ、なんとも面白いものです。
団扇を持つ手に縁起の良さを感じ、本年の締めにふさわしい一本かと思いました。
今年も他愛ないお話にお付き合いただきありがとうございました。
皆さまが良いお年・お正月をお過ごされるよう、クラブこけし一同お祈り申し上げます!