その日、クラブこけしでは採用希望のこけし娘の面談があった。
対応したのは店のトップ“もっふんママ”とナンバー2の“チーママ”である。
「じゃあもっふんママ、始めますね。お待ちの方、どうぞお入り下さーい。」
男前ともっふんママ
現れたのは
目元がキリリとし、女性ながらもダンディな魅力漂う弥治郎娘であった。
「フフフッ、コモエスタ、セニョール。」彼女の雰囲気にはお似合いの挨拶であるが、
面談第一声としての有得無さにため息を付くもっふんママとチーママであった。
「ま、まあ続けましょうか。あなたのお名前は?」
「“男前”と申します。以降お見知りおきを。」
「そ、そう、女の子なのに頼もしい名前ね・・。ええと、どちらからいらしたの?」
「そんな昔のことは覚えていない。」
この娘のノリを理解し始めたチーママである。
「じゃあウチで働くにあたっての目標はあるのかしら?」
「そんな先のことはわからない。」
「はい・・・だいたいわかりました。じゃあもっふんママどうしましょうか。」
「不採用もふ。おつかれさまもふ。」
「お、お待ちください!調子に乗りすぎました!これ、推薦状です!」
それはクラブこけしオーナーが先日弥治郎こけし村に来た際、彼女を気に入り渡した物であった。
「すいません、私の人となりを多少紹介できればと思いまして・・・。」
「だったら最初から見せるもふ!まったく、どこのゆとり世代かと思ったもふよ。」
その後もダンディトークながら男前の面談は進み、
彼女の度胸や物腰をそれなりに認めるところとなり、無事採用に至るのであった。
「ありがとうございます。では、君の瞳に乾杯!フフフッ」
どう突っ込んだものか最早分からず、微笑み返すだけのもっふんママとチーママであった。
つづく
男前
○渾名:男前(弥治郎系)
○工人:佐藤英雄
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先の旅行では弥治郎こけし村にも寄っており、そこで出会ったこの顔立ち。
なんとも言えぬ男前なムードから目がは離せず入手してしまいました。
佐藤英雄工人は伝内のひ孫にあたる方で、師匠は佐藤辰雄氏とのことですが、
どれに似てるともあまり感じない(勉強不足か)力強い表情の一本でございます。
なお、映画『カサブランカ』も実はサラリとしか知らない勉強不足な者です。