クラブこけしのオーナーと店のこけし娘“豆タンク”と“サクタ”(第116話他)は昼前、台東区に来ていた。
目指すのは、嘗ての吉原遊郭の吉原大門そばの老舗天ぷら屋『土手の伊勢屋』。
オーナーは天丼はもちろん、文化財に指定されている建物にも興味もあることから店を目指し、
努力家の豆タンクは今は無き遊郭の何某か学べるのではと付いてきたのである。
一方言葉に出さないまでも、今日も首を『ん?』と傾げているのは人の好いサクタ。
そもそも親友豆タンクのヘルプで一時滞在のはずが、今なお引き止められている事に疑問を感じていた。
7月半ばのこの日、朝から気温も上がり皆汗だくなだけにサクタの疑問は募り、首傾げも止まらない。
土手の伊勢屋1
「やっと『土手の伊勢屋』に到着である!この暑い中、既に開店前から行列しているではないか!」
「風格のある店っすねオーナー!どうサクタちゃん、来た甲斐あったでしょ!」
「そうね豆タンクちゃん!(なぜ私までこの暑い日に巻き込まれているのかしら?)」
「かつての吉原の香りみたいな?遊女の悲哀みたいな?なんかこう、感じるよねサクタちゃん!」
「そうね豆タンクちゃん!(ああ、豆タンクちゃん、よく分かって無いのに無理してるわ)」
程なく店は開店、席に着いた一同の前に、それは見事な天丼が出て来たのであった。
土手の伊勢屋2
「なんと豪勢な盛り付けの天丼!ではでは、ペロリといっちゃおうかな!」
「美味しそうですねオーナー!(昼からの猛暑に加えそんな油もの、オーナーの胃じゃ無理では・・・。)」
サクタの思った通り、食のペースが徐々に落ち、辛そうな表情のオーナーを豆タンクが励ます。
「頑張るっすよオーナー!遊女の?色んな苦労?を思えばいけるっすよ。ねぇサクタちゃん。」
「そうですね二人とも(ああ、オーナーも豆タンクちゃんも色々無理している・・・)」
サクタは笑顔ながらも、諸疑問から首をかしげ通しである。が、その時サクタはハッと我にかえる。
(まさか二人共私のため?!疑問や無理を抱えつつ人は頑張っていることを暗に伝えているのね?!)
もちろんアップアップの二人にそんな意図はないが、サクタが少し前向きになった夏の出来事であった。
つづく
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常々行ってみたいと思っていた『土手の伊勢屋』さん。
店構えや天丼の旨さ(そしてお値段)等、インパクト大ですが大変満足いたしました。
そして自分(の胃)ももう昔ほど若くないんだと少し感じた日でもありました。
多くのお客さんが記念に天丼を撮影してましたが、
こけしを並べたのはどうやら私が初だったようです。そりゃそうですね。