6月某日、東京は谷中にあるお寺『長久院』は紫陽花の盛りであった。
紫陽花を背景にこけし娘“お嬢”(36話)の写真を撮ろうとするクラブこけしのオーナーであるが、
お嬢のお付の“爺”(スカートの達磨)がどうにもうるさく集中できないでいた。
ちなみのこの爺が過保護すぎるため、お嬢は内気でモジモジした娘である。

お嬢と紫陽花
「オーナー殿、お嬢を美しく撮って下されや。お嬢はもう少し上を見る感じがよろしいですぞ。」
「え、あ、はい・・は、恥ずかしい・・」
「あの爺やさん、アングルとかの支持は私がしますから少し黙ってお願いします。」
「失礼。お嬢の晴れ舞台につい浮かれ申した!何せ今年の『紫陽花ガールオブザイヤー』ですしのう!」
「いえ、そんな大した位置付けじゃないですけどね。なんかこの爺さんやり辛いな・・」
爺もうるさくお嬢の緊張も中々ほぐないので、オーナーは気さくな会話を交えながらカメラを構えた。
「はいじゃあお嬢ちゃんリラックスして!はいそのまま、目線だけこっち向けちゃおうか!」
「しばし待たれよオーナー殿!少しお嬢に馴れ馴れしくはないですかな!」
「は!?」
「やはりお嬢にはこの爺が指示しましょう。直接はいかんですぞ!」
「そんな回りくどい。ジジイ、失礼爺やさん、ホント黙っていただけませんかね。」
「そうは行きませんぞ。お嬢はとても繊細故、爺が守ってやらねば。この爺の目が黒いうちは・・」
やり取りをモジモジしながら聞いていたお嬢がついに言葉を発する。
「じ・・爺やは黙ってて!す、すいませんオーナーさん。」
お嬢の強い態度にショックを受けた爺は一瞬言葉に詰まるも号泣し始める。
「ご自分の意見をしっかり・・・お嬢も立派になられて!爺は爺はうれしゅうございますぞ〜!」
結局、爺は終始うるさいまま撮影は進んだのであった。
つづく
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一昨年前にお亡くなりの阿保金光工人の“お譲と爺”、久しぶりの登場でございました。
この独特のテイストのこけしがもう生み出されないことを残念に思います。
目の下の青が号泣しているように見える過保護な達磨の爺と困り顔のお嬢。
クラブこけしスタンプ(第2弾)のスタンプも、そんなイメージからなのです。

お嬢スタンプ