その日、クラブこけしのオーナーのもとにチビこけ衆が大挙をして押しかけて来た。
彼女等はいずれもクラブこけしではなく、オーナーの愛人の事務所に所属の娘達である。
主要メンバーはいつもの、ししおどり、ゆう子、ムグムグ、レインボー(店外編11)だが、
その中、笠をかぶった見かけないこけし娘も混ざっていた。
笠子とチビ衆
まだ新入りの彼女の名は“笠子”。笠が影を落とすせいもあり知的でミステリアスな印象がある。
彼女等のオーナーへの主張は、『どこか遊びに連れて行ってくれ』というものであった。
「最近どこにも連れてってくれないじゃない!おかげで埃かぶってるわよ!」ゆう子がまくしたてる。
「そんな暇人ではないのだよ。真ん中の娘なんか笠もかぶってるし、多少の埃くらい我慢なさい。」
「なっ、なんて言い草!笠子ちゃんも言ってやり。オーナー、笠子ちゃんは怒らせると怖いのよ!」
日が浅くまだお互いを深くは知らない筈のゆう子の無茶振りに、笠子は頑張って答える。
笠子の笠
「オ、オーナーさん、私のこの笠に滴る赤い模様が何だかご存じですか?」
「ちょっとおどろおどろしくもある不思議な線であるが。で、その模様が何だと言うのかね。」
どぎまぎする笠子。チビ衆も「言ってやれ!」と言うが、皆その実何を言うかは知らない。
「こ、これはですね、私の願いを聞き入れなかった者達の・・・返り血よ!」
「な、なんですとぉぉ~!

この驚きはその内容にではなく、皆の想像を超えた笠子の発想に対し向けられた、
(それは流石に無いよ笠子ちゃん・・・)というタイプのものであった。
「か、観念なさい!血の雨を降らすわよ!私は笠があるから良いけど降ったらそりゃあ大変よ!」
「ご、ごめん笠子ちゃん。あなたに頼った私が悪かった気がする。」謝るゆう子。
一見クールで妖しくさえある笠子のこの天然な発想は、皆が彼女を愛するに十分なインパクトがあった。
そして笠子の努力に免じオーナーは「秋まで少し待ちなさい」と皆をなだめたのであった。
つづく
笠子
○渾名:笠子(土湯系)
○工人:佐久間俊雄
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小寸こけし同士、似たサイズで並べると大変可愛らしいです。
佐久間俊雄工人の、例によって小さいながらも非常に繊細な作です。
先に紹介の“トシオ”(61話)のつぶし目と異なり、ぱっちり二重のタイプです。
笠の放射状の模様は、回転の遠心力で散らしたものであること、実は最近知りました。
笠の薄さもあり外に持ち出すのに二の足を踏んでいますが・・・頑張ってみます。