5月初旬、駒込の旧古河庭園のバラ祭りが近いと聞き、クラブこけしオーナーはカメラ携えやって来た。
くっついてきたのは暇を持て余していたという“りんごちゃん”(80話)であった。
「見たまえりんごちゃん!これから盛りというバラの蕾がなんとも初々しいではないか!」
「本当ですねオーナー。ではそんなバラとりんごちゃんを思う存分写真に撮って下さいな!」
りんご一発芸を持つりんごちゃんは、それだけに『私を見て!』という主張が強い娘である。
「いや、りんごちゃん、綺麗なバラと趣深い洋館で、被写体としては十分なのだよ。」
「何を言ってるんですか。私が加わることで更に華やかになるじゃないですか!」
そう言い彼女は写真にグイグイと入ってくる。
旧古川庭園1
そんな写真を当初渋々と撮っていたオーナーだが、ある時点より急に前向きになり始めた。
「そう!そこで止まってりんごちゃん!いいよいいよ!じゃあもう一枚!」
「え、何オーナー、突然積極的に。」
しばらく従っていたりんごちゃんだが、怪訝に思いデジカメを覗きこむと全てを理解した。
旧古川庭園2
「はいオーナー、アウトです。通報します。私を出汁にまったく。」
「ええ!?何故だね?蕾のバラと蕾の少女達を掛けた芸術的一枚ではないか!」
「その言い方がもう変態です。前に鎌倉でもこんな出歯亀の所業をやってませんでしたっけ?」
「失礼な!ただ若さを写真に焼き付けたいだけなのだよ!青春を焼き付けたいのだよ!」
「オーナー、もう年なんですね・・・。」
「な、何を、そんな、私はまだまだ・・・」
りんごちゃんの言葉を否定しようと思うも言葉につまるオーナーであった。
つづく
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次の週からバラ祭り本番というタイミングで、まだ蕾も多い状態でしたが、
咲き始めのせいかバラの香りが濃く、とても良かったです。
若々しいバラに、自撮り棒を持った今どきの女の子。
そんな風景には古品よりも今どきのこけしがお似合いの気がします。
生気あふれる良い写真だと思っているのですが。