師走のある日、クラブこけしは年末大掃除の真っ最中、もっふんママが娘達に指示を出している。
「こもっふんちゃん、こっちも掃除機もふ。あ、コラ!ナオシ!怠けずちゃんと窓を拭くもふ!」
ママの檄は同郷の娘たち(蔵王高湯系)には気兼ねが無いせいか、多少強めに飛ぶようである。
「もふ~、この調子じゃ年末が迎えられないもふ。この時期はいつもいつも・・・」
ママがぼやき始めたその時、頭にベンガラ色の髪飾りを付けたこけし娘が、
店に入って来るなり大声で挨拶を始めるのであった。
ベンガラとママ
「蔵王高湯最後の大物娘、ベンガラちゃんよ!オーナーのお声掛けでやってまいりました!ベべベン!!」
何やらまた厄介そうなのが来たとものだとため息をつくもっふんママ。
「またオーナー勝手なことを!店の台所事情も厳しいのにまったく・・・」
「ご安心をママ!私ベンガラちゃん、名門・勝之助の名に恥じぬよう店を盛り立ててまいります!ベベン!」
横で聞いていたナオシ(2568話他)がママにこき使われている腹いせもあり割って入ってきた。
「ベンベンうるさいわよ!なんなのよそれ!」
「ええと、これは三味線を模した私の存在感の大きさを示す効果音です!何せ私は名門・勝之助の・・・」
「そんなにベンベン言う暇があったら便所でも掃除してちょうだいよ!」
「なっ・・わたくしに何てことを・・・!ママ!それは無いわよね?」
驚き顔でもっふんママを見るベンガラ。ママはいつもの様にナオシをつねりにいくと思いきや今回は違った。
「猫の手も借りたい程だし・・・あなたには必要な気がするもふ。ベンガラちゃん、早速よろしくもふ!」
「えええっ!」
こうして、新人と同郷娘には厳しいというママの方針で、入店初日から便所掃除をしたベンガラであった。
後程、ベンガラの為にささやかな歓迎会が催され、そこで彼女は意気揚々と自出を語り、
所々に『ベベン!』と例の効果音を入れるも、その響きは皆に(初日から便所掃除してた娘)と、
不本意なイメージを当分の間呼び起こすのであった。
つづく
ベンガラ
○渾名:ベンガラ(蔵王高湯系)
○工人:大宮正安
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久しぶりの本編、勝之助ファンの方には失礼しました。
あくまでウチのこけしについての勝手な話です。
所有する蔵王高湯系のこけしの型のうち、ひとつ大事なのが欠けているなと
常々思っていた我妻勝之助型、とうとうの登場です。
特徴的な頭の赤い飾りから、入手前からこのこけしを勝手に“ベンガラ”と呼んでいました。
これも今や途絶えてしまった型でしょう・・・寂しいです。