クラブこけしのあるこけし地域の担当配達夫は“多兵衛”というこけし男子であった。
重い荷物も軽々と運ぶ、力持ちで寡黙な彼は、店のこけし娘達からも好感度は高い。
その日、クラブこけしに集荷に寄った彼は、
偶然居合わせた御用聞きの出入り業者“キンゾウ(3970話ほか)”に絡まれていた。
多兵衛とキンゾウ
「おやおや多兵衛君!精が出るねぇ!佐川男子気取りかい?モテるんだろうねぇ!」
「あ、どうもキンゾウさん。そんな、自分は仕事してるだけっす。」
下心半分で店の姉様方の御用聞きをしているキンゾウは、多兵衛人気が面白くないらしい。
「多兵衛ちゃ~ん、本当はキミもここの姉様方好きなんでしょ?見に来たんでしょ?」
「いや・・・自分、そんなつもり無いっす。単に仕事っす。」
「またまた~。じゃあ何、ここの姉様方嫌いなの?どっちなの?二択で言ってごらんよ。」
「に、二択っすか・・・、なら好きっすよ・・・。」
キンゾウが鬼の首を取ったような笑みを浮かべ、大声で周りに響くように言い出す。
「ほっほ~う、多兵衛君もなかなかの下心ですなぁ!でもいかんよ~。それはいかんよ~!」
「ちょ、キンゾウさん!何言ってるんすか!違いますよ!」
「まあまあキミの下心も分らんでもない!でもねぇキミ、褒められたものじゃぁないねぇ!」
「じ、自分、妻もいるっすよ!!」
多兵衛のその一言に衝撃が走るキンゾウ。
「な、何だと?!貴様、結婚していたのか・・・?こっちは彼女もいないというのに・・・。」
「ええ、もうずっと前からっす。」
床に崩れるキンゾウ見て、ようやく解放されたと思い、多兵衛はそそくさとその場を後にした。
このやり取りを何となく聞いていた店の娘達は、キンゾウを義理で一声二声励まし去って行った。
多兵衛の嫁とは誰なのか?キンゾウは立ち直れるのか?次回お楽しみに。
つづく
多兵衛
○渾名:多兵衛(津軽系)
○工人:佐藤善二
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佐藤善二工人のこけし初入手は多兵衛型となりました。
このガッチリ体型とムスッとした顔立ちに、パワー溢れる愛嬌を感じてしまいました。
『多兵衛』なんて、何とも力強い名前です。
昔の人名は今やカッコいい名前が多い様に思います。
治助、太治郎、重之助、源吉、丑蔵。。。多々、中々の迫力名前です。