伊根1
拝啓 お父さん
僕は今、京都の北、伊根湾に臨む伊根の舟屋にやってまいりました。
日本一周の旅行のさなか、クラブこけしの前で力尽きてからというもの(35話)、
僕の白目が元気な黒目になるようにと、店の皆さんにはバイトとして大変良くしてもらっています。
今回もオーナーのはからいで、目標の一つだった場所に来ることができました。
本当は自力で来たかったのですが、相変わらず虚弱な僕には未だ厳しかったことでしょう。
頑張ってはいるのですが、僕の白目はなかなか黒くなりません。
しかしながらこの舟屋群、高潮は大丈夫なのでしょうか?
住んでいてジメジメしないのでしょうか?
そんな不安で今の僕には住めそうにありませんが、素晴らしい景色です。
いつかここで漁師になれるくらいの力強い青年になって見せます。
決してお父さんを恨みますまい。
この白目はお父さんが与え下さった試練と思い、立派な黒目になって見せます。
どうかご自愛ください。オーナーに撮っていただいた写真を同封いたします。

行き倒れより

追伸
黒目になることを願い丹波の黒豆を食べました。
つづく
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今回もシュールな話にお付き合いいただきありがとうございます。
京都の北、伊根地区の舟屋群(重要伝統的建造物保存地区)です。
伊根2
一階が船用に海側への開口となった民家が連なっております。
写真では海の翡翠のような色合いが、
こけしの緑の線とはからずしも結構マッチしております。
常々見てみたいと思っていたところで、期待を上回る景色で感激いたしました。