ある日、クラブこけしオーナーが一人のこけし娘を店に連れてきた。
引き合わされた店のママ“もっふんママ”はキョトンとしてオーナーに言う。
ネムリともっふんママ
「オーナー、この娘は誰もふ?なんだか寝てるようだけど・・・。」
「いや・・・あの・・・、フロアレディーに採用しようかと思って、その、ママに面接を・・・。」
それを聞きもっふんママの顔色が変わる。
「ちょっと!!ちょと誰か~!!オーナーの頭が遂におかしくなったもふ!!
寝てる娘なんて雇えるわけないじゃない!!ただでさえ経営難もふよ!!」
「いや、ママ、その辺は大丈夫なのだよ。ね、ネムリちゃん。」オーナーがこけし娘に話しかける。
「はい!ちゃんと聞こえてますよ!zzz・・・」
「もふっ!?あなた起きてるの?でも“zzz”って。」
「私“ネムリ”といいます。寝てますけれどちゃんと皆と同じように聞こえるし動けますよ!zzz・・・」
「ややこしいもふね。ちょっとオーナー、どうなってるもふ。」
「フフフ、彼女の凄さがママも分かってきたようだね。異色の新戦力で話題性も大、売上もUPなのだよ!」
「もふ~ぅ・・・そうかしらねえ・・・そうなるならいいんだけど・・・」
しばらく思案していたもっふんママはネムリにたずねた。
「ところでネムリちゃん、あなた昔からそんな感じで眠っているもふか?」
「ええと、昭和15年からかれこれ75年は寝続けてますzzz・・・」
「75年?!御見それしたもふ!分かったわネムリちゃん。採用よ。採用もふ!いいかしら?」
「zzz・・・」
「ねえ、ネムリちゃん?採用よ?」
「・・・zzz、え?何ですか!」
「本気で寝てたもふ!!」
もっふんママは不安を抱えながらも、久しぶりのクラブこけし新規採用なのであった。
つづく
ネムリ

○渾名:ネムリ(津軽系)
○工人:
川越謙作
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久しぶりの本編でございました。
こけしの製作年が本当に正しいか分かりませんが、
裏に鉛筆書きで“昭和15年”と入っております。
とすると我が家でも最古参のものになります。
異色のこけしですが最近ツボに来るものがあって入手いたしました。
何とも安らかなたたずまいをしております。