クラブこけしには“ギュンギュン(85話)”という気合顔No1のこけし娘がいる。
とても大人しく、乙女チックな娘であるが、その気合の入った顔立ち故誤解される事の多い娘である。
パフェ1
ある日、伊豆方面をドライブするクラブこけしのオーナーと共に、とある見晴らしの良い喫茶店での事。
景色に浮かれたギュンギュンは乙女心に火が付き、パフェを注文したい気分になっていた。
が、そんな乙女チックなものを注文したら、自分の見た目とのギャップにより、
皆から奇異の目で見られる恐れがあることも自覚しており、一計を案じるのであった。
白羽の矢が立ったのは、クラブこけしの虚弱No1の白目のバイト君“行き倒れ(35話ほか)”である。
ギュンギュンは優しい雰囲気をかもしつつ行き倒れに話しかける。
「ねえ、行き倒れ君、パフェ食べると体力付くよ。私は別にいいんだけど・・・とにかく食べなよ!」
彼女は気さくに話しかけたつもりだが、
行き倒れは彼女の気合オーラにオドオドとしている。
二つ返事をした彼の前に果たしてやってきたのは、山のようなメロンパフェであった。
パフェ2
(ギュ・・・ギュン姉さん、この量を僕に食べろと・・・無理だ・・・)
行き倒れはガクブルになりつつ恐る恐るギュンギュンに言う。
「あ・・・あの・・・ギュン姉さん・・・これはちょっと・・・む・・・」
「何?食べないの?」
これもギュンギュンはさりげなく答えたつもりだが、その顔からは、
『ワシのおごりが食えんのか!!』と訴えている様に行き倒れには見えてしまう。
半ば死を覚悟した行き倒れに対し、ギュンギュンは(予定通りだわ♪)と内心ウキウキしている。
「まったくもーう♪仕方ないなあ。じゃあ私が食べてあげる☆」
「ス・・・スイマセンです姉さん!!自分、もっと体力をつけていつかきっと・・・」
パフェを美味そうに食べるギュンギュンに、行き倒れの弁明はもはや届いていない。
(ね・・・姉さんが体を張って気合を僕に教えてくれている!気合で乗り切れんものはないと!)
ギュンギュンに対しより誤解を深めた行き倒れであった。
つづく
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うちの大内工人のこけしの強烈な表情は、いつも何かを訴えております。
こけしブック(青幻社)では『岳のおてんば娘』(だったかな?)と紹介されているので、
ちょっとおてんばな話を妄想してみました。
こうして自分の勝手なイメージで話を作っているのですが、
文章化と言うのはなかなか強烈で、それがそのこけしのエピソードとして
あたかも事実になり、性格を作り上げていきます。
ブログの場を借りて楽しくやらせていただいております。