少し時間は戻って、クラブこけしのハセ子(22話)がまだお店に来る前の話。
オーナーは青森は十和田湖のこけし小屋に、フロアレディーのスカウトに来たときのことである。
こけし小屋では東京からスカウトマンが来るという噂で、娘達がそわとわとする中、
そんな姉様方をハセ子は諭しているのであった。
「姉様方、スカウトマンとか言ってるけど、きっとタダの女衒(ぜげん)野郎よ!」
「ハセ子ちゃん、相変わらずの古風な言い回しね・・・。でも東京よ、東京に行けるかも知れないのよ!」
「騙されないで!それに東京砂漠なんかへ行ったらきっと身も心もボロボロになるのよ!」
こけし娘達がそんなやり取りをしている中、果たしてオーナーはこけし小屋にやって来た。
十和田1
「来たわね女衒野郎!ああ、思ったとおりいやらしい目付きだわ!」
「おお!これはこれは、可愛らしくて元気な娘ではないか。君、名は何と言うのかね。」
可愛いと言われドギマギするハセ子である。
「べ、別にそんな事言われても嬉しくないんだからね!」
「よし、ではみんなの写真を撮ってあげよう!ささ、みんな並んで並んで。」
「ちょ、ちょっと何よ急にこの女衒野郎・・・、ちゃ・・・ちゃんと綺麗に撮るのよ!!」
ハセ子のツンデレぶりにオーナーはニコニコであった。
そんな感じにオーナーは色々と見て廻り、満足げにこけし小屋を後にしようとした時、ハセ子が声を掛ける。
「ちょっと待ちなさいよ女衒野郎!・・・つ・・・次はいつ来るのよ!」
「ううん・・・、まだ予定は立っていないのだよ。」
「今度写真見せなさいよね!別に待ってなんかないんだからね!!」
この頃からハセ子の東京への思いは高まり、後に上京することになるのでる。
ちなみにこのときのオーナーの写真は、その腕の悪さによりピンボケであった。
つづく
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2012年6月に青森の十和田湖に行ってまいりました。
前年高瀬時男工人がお亡くなりになられてりましたが、
工房にストックがたくさんあるよと、奥様が案内してくれました。
十和田2
このときは本当にたくさんありましたが、今はどうなのでしょう。
日焼けしないようにと紙がかけられたり、後ろ向きにされたりと、
静かに待つこけしの姿にはジンと来るものがありました。
皆素敵な人にもらわれることを願っております。