珍しく男子こけしがクラブこけしを外から恐る恐る偵察していた。
先日、彼の知り合いの“のど自慢”と“コーラス”(8990話)が店に採用されたと聞き、
同じく音楽、とりわけギターで身を立てることを夢見る彼は、
自分も雇ってもらえる芽が無いものかとやってきたのである。名を“瀬谷たこ”という。
偵察などせず、すぐに店に入れば良いものをそうしないのは、単に彼はビビリなのである。
普段、ギターを片手に「ロックだぜ」と言う割りに、
そのロックを盾に言い訳がましいところのある、そんな“瀬谷たこ”なのであった。
足をガクガクさせて店を覗き込みながら、彼はつぶやく。
「いきなり乗り込むのはやっぱロックじゃないぜ。偵察の上、確かな情報を元にした行動が、
今の時代は寧ろロックな気がするぜ・・・。うん、きっとそうだぜ。」
彼がオドオドしている矢先、店から出てきたのは、定期訪問を終えて出てきた大ママ(1140話ほか)、
キイチ姉さん(2650話ほか)と、それを見送りに出たチーママとひで子(68話)であった。
たまたまではあるが、いずれも大人の女こけしとして箔のある面々である。
そんな彼女等は瀬谷たこに気づき彼を取り囲んできた。
瀬谷たこと皆
大ママ「あら珍しい、たこ坊主じゃない。ギターもって何コソコソしてるのよ。」
キイチ姉さん「妾(わたし)も久しぶりに見ましたよゥ。何だい?一曲披露してくれるのかぃ?」
チーママ「あなた、誰かに用?だったらこんなとこにいないで中に入りなさいよ。」
ひで子「わぁ!ギターですか!楽しみ楽しみ!」
これは瀬谷たこにとってチャンスの筈である。が、姉様方の迫力にもうビビッてしまい上手く声も出ない。
「え・・・あぅ・・・そのー、ギターで・・・、な、何でも無いです!失礼すまスた!!」
語尾に「ぜ」を付けることも無く、挙句おかしな丁寧語を残し彼はその場を逃げ出した。
ひとしきり逃げ、一息つくと彼は言う。
「ふーぅ。危ねえぜ。俺のロックを安売りしちまうところだったぜ。しかしすげえ迫力だったぜ。
さすがは夜の蝶の姉様達だぜ・・・。」
口では強がってみたものの、内心(一人じゃ絶対無理!)と結論付けたビビリの彼は、
(アイツを誘ってもう一度トライしてみるぜ)と思うのであった。
“アイツ”とは果たして誰なのか?事の顛末やいかに、またも乞うご期待です。
つづく
瀬谷たこ
○渾名:瀬谷たこ(土湯系)
○工人:瀬谷重治
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たこ坊主は強烈な個性の割に女性に人気と言う噂も。
カラフルさと愛嬌はあると思いますが、これに最初に飛びつく人って、
ある種すごいこけポテンシャルを持っているのでは!?
(これも私の愛人が入手したものです)
単に私が男だからか、基本メンズこけしにあまり興味を持たないのかも知れません。
やっぱりこけしは娘っこい方がいいなぁ。