その日、一人のこけし娘がクラブこけしに入ってくるなり口上を述べ始めるのであった。
「ごめんなすって皆々様。アタイは姓は奥山、名は“のど自慢”。その名の通りの流しでございます。
この度はアタイの歌でコチラさんに置いていただきたく、山形より流れ流れてまいりました。
どうか一曲、ご拝聴願い申し上げます。」
なかなかに古風な作法の娘である。
たまたまその場に出くわしていたのはクラブこけしのオーナーであった。
「討入り?何?!歌?ああ・・・面接ね。歌うのね。ああびっくりした。じゃあちょっと待っててね。」
そう言いオーナーは面接要員としてもっふんママと、
クラブこけしのカラオケ番長“
ミナオ”(44話ほか)を呼び、のど自慢の歌面接は始まるのであった。
のど自慢とミナオ
「えー、では、のど自慢ちゃんだったかな。じゃあお願いします。あ、マイクとかいるんだっけ?」
「ご心配なく!マイマイクならここに!!」のど自慢は自らの胴のチューリップを誇らしげに指差した。
「それマイクだったの?チューリップ型のスタンドマイクなの?」
「そうでございます。このマイク一本で渡世してまいりました。ではリクエストはございますか?」
「じゃあ『蕾(つぼみ)』!春だしコブクロの『蕾』がいいわ!」無邪気に言うミナオ。
「うっ・・・、『蕾』でございますか、ハモりが・・・。ええい、ままよ!リクエストに答えてこそ流し。いざ勝負!
しからば、右や左の旦那様。アタイの歌い上げます『蕾』、どうぞお聴き下さい。」
「旦那一人だけもふよ。」というもっふんママの突っ込みをよそに、
のど自慢は高らかに歌い上げるのだが、ハモりが売りの楽曲だけに今一つ精彩を欠いた印象である。
「いかがでしたか皆々様。アタイの人生を込めて歌い上げました。」
「うぅーん・・・。上手だったけど、私のカラオケでもそれくらいは・・・。」ミナオの感想である。
「おっと、お嬢さん、カラオケと一緒にしちゃぁいけません。込めた魂の重さが違いまさぁね。」
カラオケをバカにされたようでカチンときたミナオである。
「オーナー、不採用で!
(≧皿≦メ)
「ちょっ、待って下さいお嬢さん!悪気は無いんです!決してカラオケをバカにしてはないんですよ!!」
しかしミナオはふくれっ面のままであり、オーナーともっふんママもどうしたものかと思案していた。
確かに人並み以上に歌は上手いが、何か決め手に欠くものを感じていた。
「アタイ、このままでは山形で笑い者になっちまいます!チューリップにかけて、もう一曲、
何卒!!」
果たしてのど自慢に起死回生の光は差すのか、そしてミナオの曲がったへそは戻るのか。
顛末は次回をお楽しみに(引っ張ってすいません)。
つづく
のど自慢
○渾名:のど自慢(山形系)
○工人:奥山広三
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このこけし、首がちょっと曲がって付いており、
初めて見たときに、その首の曲がりと胴のチューリップが相まって、
「一曲いかが?」
とこちらに問うているように何故か感じてしまったのです。
もうチューリップがマイクにしか見えませんでした。
そんなわけでこんな渾名になております。
とぼけた表情と、大胆なチューリップ。大変愛嬌のあるこけしですね。