クラブこけしに意気揚々とやってきたこけし娘がいた。
名はりんごちゃん。彼女は、所属のモデル事務所で好評だった一発芸を引っさげ、
それをクラブこけしでも披露して皆を驚かせてあげようとやってきたのである。
一発芸というのは、リンゴ状態から、そのリンゴが上下に分かれ中から自らが現れるというものである。
クラブこけしにこっそり入ると、彼女はまず部屋の隅でリンゴ状態になり人が集まるのを待った。
突如出現したそのリンゴに気がつき、何だこれは?と集まってきたのは、
ナオシ(68話71話ほか)、筒(14話52話ほか)、赤んぼ先生とツタフミ(45話ほか)であった。
りんごちゃんはタイミングを見計らい、(今だ!)と、ポンッと姿を現した。
「ジャーン!りんごちゃんでーす!」
そして、皆の驚きの声や、“カワイイ~
等の声を期待して回りを見渡した。
りんごちゃんと皆
ナオシ「タマだ!サザエさんのタマだ!!ちょっと腰振ってみてよ!」
筒「あ、これ、私もできるやつだ。」そう言い胴に頭をシュポシュポと出し入れする筒。
ツタフミ「先生、物理的におかしいです。リンゴ内に胴が体積的に納まりません!」
赤んぼ先生「うむ、ツタフミよ、これは5次元まで高次元化することで説明出来るでち!」
想定外の感想を耳にしたりんごちゃんは真っ赤になって言う。
「ちょっと、何なのよもう!もっと“すごーい”とか“カワイイ~”とか言うとこでしょ!
サザエさんとか5次元とか知らないから!!」
ナオシが言う。「ちょっとあなた、せっかくだから“ンッガッフフッ”って言ってみてよ。」
「もう、タマですら無いじゃん!サザエさんが何か食べ損ねたとこじゃん!
しかも今もう
“ンッガッフフッ”言ってないからね!ジャンケンに代わってるからね!」
「なんだ、サザエさん良く知ってるじゃない。」
そんな言い合いをしているりんごちゃんとナオシを、赤んぼ先生が仲裁に入った。
「りんごちゃん、先生は十分に驚いたでちよ。
というわけで早速、胴体とリンゴ部分の体積比を計測していいでちか?」
「だからもう、そう言うのじゃないの!もっとわかりやすく感動してほしかったの!!もう今日は帰るわ!」
そう言うとプリプリとしながら帰ってしまうりんごちゃんであった。
りんごちゃんの気を害した事を申し訳なく思った赤んぼ先生は、後日彼女の一発芸発表の場を再び設け、
その時は好評を博し、彼女は再び自信を取り戻すのだか、
客運の悪い時もあるのだと言う事を痛く学んだりんごちゃんであった。
つづく
りんごちゃん
○渾名:りんごちゃん(津軽系)
○工人:阿保正文
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筒の回
14話以来、久しぶりに画像を加工してしまいました。
しかし手を出さずにはいられない可愛らしさですね。
“りんごちゃん”以外の呼びようがありません。
故盛秀太郎工人もりんごこけしを作っていたように、
津軽系こけしは縄文柄もさることながら、りんごのイメージも何だか切り離せません。
創作こけしにジャンル分けされるかもしれませんが、津軽らしい素敵なこけしです。