年の瀬も迫る頃、クラブこけしの外をウロウロしながら、時折怪しげに店を覗いてくるこけしがいた。
黒い外套の様なマントをはおり、同じく黒のシルクハットをかぶったその姿は、
一見紳士然としているが、それらし過ぎて逆に胡散臭くもある。
そんな彼に最初に気がついたのはもっふんママである。
「何だか最近こんなんばっかもふね。どう見ても赤マントちゃん(76話77話)のお父さんもふ。」
そう言いママは赤マントと、その母ろくろマント(
77話)を呼び、
男の姿を見た赤マントは喜び駈けていった。「あ、お父ちゃんだ!お父ちゃ~ん!」
ろくろマントは一瞬驚くも、その顔は相変わらずムスッとしている。
どうやら
77話で走り去っていったと彼女が話していた亭主は実在したようである。
店内にてオーナー、もっふんママ、近くにいた“ゆさこ”も興味深々とマント家族の事情を聞くのであった。
黒マント家族
「黒マントといいます。この度は家内と娘が御迷惑をかけまして、何ともお恥ずかしいことです。」
「恥ずかしいのはあんたよ。何しにきたのよ!」ろくろマントはまだムスッとしている。
「おまえ、まだ怒っているのか。私も遂に新しい仕事が見つかったのだよ!」
「いつもそう言って長続きしないじゃないの!B型の悪い癖だわ!」
「お、おまえ、今度は本当だってば。それに血液型とか関係ないだろ。」
「あるわ!B型って、飽きっぽいクセに反省なく同じ事繰り返すのよ。
時間が経てばみんな忘れて笑顔でシャンシャンとか思っているのも腹が立つわ!」
ろくろマントは亭主の黒マントのことを、B型を絡めて非難を続ける。
その横で微妙な愛想笑いをしているのは、オーナーとゆさこ。実は共にB型である。
痛いところをろくろマントに突かれる黒マントに我が身を重ね、口が挿めない。
「ところでお父ちゃん、今度は何の仕事なの?」
「おお、赤マントよ、良く聞いてくれた!父ちゃんは、今度はモデル事務所のマネージャーになったのだよ!」
「モデル事務所とは、女社長(オーナーの愛人)の、あそこですか?」オーナーが聞く。
「はい。素敵な社長さんで、今度は頑張れそうです。これから忘新年会で、みなさんやってきますよ!」
「なんと、本当ですか!よし、ではゆさこよ、準備とはりきりますか!さあ、黒マントさんもほら!」
こうしてB型3人は、これまでの流れもなんのその、喜々としてパーティーの準備に取り掛かった。
「これだからB型って・・・。」ため息をつきつつも、少し穏やかな顔になったろくろマントにママが言う。
「まあ、良かったじゃない。今年の事は水に流して、新たな年を迎えるもふよ!」
ママは自分の血液型を知らないと言うが、大方判明しているのかもしれない。
こうして、まさかのマント三部作によって2013年は過ぎていくのであった。
つづく
黒マント
○渾名:黒マント(土湯系)
○工人:渡辺忠雄
=====================

渡辺忠雄工人にお願いしていたもう一人のこけしです。
単純な黒ではなく、紫の上に黒を塗っているようで、色むら具合に深みがあります。
こけしというよりも木のお人形に近く感じますが、
顔立が伝統こけしのモノなので、何だか楽しくなってしまいます。
そして、ちゃっちい感じは全然いたしません。素敵なバランスです。

というわけで、クラブこけし物語、本年はここまでとなります。
御愛読していただいた皆さまには大変感謝しております。
それでは、良いお年を!
m(_ _)m