師走の寒空の下、クラブこけしのお店の前をうろうろしているこけしがいた。
黄色い帽子と返しろくろ柄のマントを羽織った彼女は、心配そうに店をチラチラと覗きこんでいる。
丁度、赤マント(76話)の相手をしていた茶がま(28話76話ほか)が店内から気がついた。
「あれ、どう見ても赤マントちゃんのお母さんよね。良かったわね、お迎えが来たわよ。」
「え?ホントだ!お母ちゃ~ん!!」
赤マントは嬉しそうに駆け出していくと母に抱きつき、続いて来た茶がまに挨拶をする彼女。
「初めまして、ろくろマントといいます。この度は娘が御迷惑をおかけしまして、本当にすいませんでした。」
一同店に戻ると、オーナーやもっふんママを交え、この度の顛末を説明するろくろマントであった。
ろくろマントと茶がま
話を要約すると、彼女が仕事の続かない亭主を責めると喧嘩になり、亭主は家を飛び出してしまい、
嘆く彼女を見て、何やら使命感に火の着いた赤マントが翌朝いなくなり、そして今に至るのだという。
「本当に御迷惑をおかけしました。娘を探すのに手間取ってしまいまして・・・。」
「あら、全然いいもふ。それに赤マントちゃんも良く頑張っていたもふよ。」
茶がまも寂しそうに言う。
「お母さんもお迎えに来たし、もう帰っちゃうのね・・・。赤マントちゃん、あなたはもう立派な大人の女よ!」
「ちゃ・・・茶がま姉しゃん!ありがとうございましゅ!」
涙を浮かべしんみりする茶がま。その時ろくろマントがおずおずと、かつ、気持ち色っぽい声で言いだした。
「あの、その事ですが・・・、人妻の私を雇っていただけませんか?人妻はダメですか?」
「どうするもふ、オーナー?確か、男と既婚女性に興味ないって言ってたもふよね。」
「やっぱり人妻はダメですか・・・。人妻ですものね。人妻なんて、人妻でしかないのね・・・。」
やたらに“人妻”を連呼するろくろマントに茶がまがハッとする。(まさか・・・この女!!)
案の定、オーナーはもうグラグラしている。ろくろマントへの同情心もさることながら、
連呼される“人妻”という蠱惑的な響きに、新たな感性を揺り動かされるのである。そして叫ぶ。
「人妻、大歓迎ですぞ!!人妻って・・・何
かもう、何だろうこれ?とにかくウェルカムですぞ!!」
「本当ですか!ありがとうございます!人妻ですが頑張ります!」
「もっふんママ!これからは募集の張り紙に、『人妻歓迎!』の一文を足してくれんかね!」
「するか!いやらしい!!オーナー、一遍死んだらいいもふ!」
あきれるもっふんママ、火照っているオーナー、喜ぶろくろマントを尻目に茶がまは思う。
(したたかな女!何処までが仕組まれていたのかしら?子を持つ女の強さ、恐るべしね。)
果たしてろくろマントの話は何処まで本当だったのか?走り去った亭主は実在したのか?
モヤモヤ感を残しつつも、喜ぶ赤マントを見てまあ良いかと思う茶がまであった。
つづく
ろくろマント
○渾名:ろくろマント(土湯系)
○工人:渡辺忠雄
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話がくだらなくてすいません・・・。
さておき、このろくろマントは
渡辺忠雄工人に、お願いしてそうしたものです。
マントは返しろくろ柄が土湯っぽくていい!とか、帽子は黄色がいい!とか、
ムンッとした強気の顔立ちに!とか、
ロウ引きしてほしい!とか
生意気なリクエストをしてしまったものだと後で思っていました。
そして、忘れた頃に届くこけし。
全てのリクエストに答えていただいた上、お願いした時のイメージ以上に良くできており、
工人さんには大変感謝しております。