ある日、クラブこけしに一人のこけし娘が押しかけてきた。
赤いマント、赤い帽子のその娘は、歳の頃にして十を超えたかどうかというところである。
近くにいた店長(第21話ほか)に詰め寄ると彼女は言いだした。
「赤マントと言いましゅ!大人の女でしゅ!ここで働かせて下しゃい!」
「あなた・・・大人の女って、どう見てもまだ・・・。」
「大人の女なんでしゅ!!働いてお母ちゃんを助けるんでしゅ!」
どうやら何か訳ありの様であるが、困ったものだと悩む店長に茶がま(第28話ほか)が声を掛けてきた。
「店長、その子、ひとまず私に預からせてもらえませんか?そのうち親御さんも迎えに来ると思うし。」
「でも、何だか事情のありそうな子よ。いいの茶がまちゃん。」
「いいんですよ。子供は好きですし、何だか興味のある子ですわ。」
「子供じゃないでしゅ!大人の女でしゅ!!」
こうして赤マントは茶がまの下で一時預かりとなったのである。
赤マントと茶がま
それからというもの、赤マントは茶がまを姉さんと慕い、色々と聞いてくるのであった。
「茶がま姉しゃん!大人の女の接客法を教えて下しゃい!」
「うーん、仕方ないわね。ちょっとだけよ。まず男の人はボディタッチに弱いのよ。」
「ボディタッチでしゅか?!」
「そう。『ホントですか~』とか『すご~い』とか言いながら、膝頭や二の腕に手を置いたりするのよ。」
「そうなんでしゅね!」
「あと、去っていく殿方の袖や裾を寂しそうにつまんで引き留めるのも効果大なのよ。」
「さ・・・さしゅが茶がま姉さんは大人の女でしゅね。」
「あら、丁度カモ・・・じゃないオーナーがやってきたわ。ちょっと赤マントちゃん見てなさい。」
そう言うと茶がまはオーナーに歩み寄り雑談を始め、そして多彩なボディタッチをオーナーに繰り出した。
オーナーはもう茶がまにメロメロで、そんな茶がまを尊敬の眼差しで赤マントは眺めるのである。
「茶がまちゃんは本当にカワユイのう!今後もお店の為に頑張ってくれたまえ!」
そう言い上機嫌のオーナーがその場を去ろうとすると、“今よ!”と茶がまが赤マントに目配せをした。
赤マントはオーナーの元に駆け寄り、服の裾をギュッと掴んだ。
「お、赤マントちゃんか。どうしたのかな。一人でトイレに行くのが怖いのかな?」
「ち・・・違いましゅ!!私は大人の女でしゅ!!」
(そう簡単には行かないか)と思う茶がま、そして一部始終を遠くで見ていた店長は
(赤マントちゃんを茶がまちゃんに預けて良かったのかしら?)と少し後悔していた。
赤マントには果たしてどんな事情があるのか・・・請うご期待。
つづく
赤マント
○渾名:赤マント(土湯系)
○工人:渡辺忠雄
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帽子とマントでハイカラながらも、足元から伝統の香りもする素敵なこけしです。
渡辺忠雄工人の描くこの特徴的な「ムン!」とした強気な表情がとても可愛らしいです。
渡辺忠雄工人、お会いしお話もましたが、
こけしに対しては歳を感じさせないくらい、とても情熱的な方でした。
お話を切り上げるタイミングが掴めないくらい・・・いえ、素晴らしいことです。