クラブこけしオーナーの愛人経営のモデル事務所から、“ケイコ”というこけし娘が店に来ていた。
彼女は同郷の先輩“もっふんママ”をすこぶる慕っており、本当はクラブこけしに採用してほしいのだが、
なかなかお声がかからないため、とりあえずモデル事務所に籍を置き様子を伺っているのである。
ケイコは同郷の“ナオシ”(25話34話64話68話、他)を捕まえ愚痴をブスブスと言っていた。
「なんでナオシみたいのがここにいて、私に声がかからないのよ!私、超優秀なのに!」
「知らないわよ。代われるもんなら代わってほしいわ。」
そこにもっふんママがやってきた。
ケイコともっふんママ
「あら、ケイコ、久しぶりもふ。元気にやってる?」
「はいママ!日々自分を磨いていますわ!これ、お土産です。お茶を入れますね!」
ケイコはママの大好物『雪の宿』を渡しお茶を入れ始めた。
それはそれは美しい所作でお茶を入れ、すごいでしょうと言わんばかりに差しだし、チラリとママを見た。
しかしもっふんママはもう雪の宿に夢中で、「やっぱりこれ美味しいもふ。」と言うだけであった。
ケイコががっかりしていると、偶然“行き倒れ”(35話63話、他)が通りかかるのを見て、
気を取り直して虚弱体質の彼に話しかける。
「ちょっとあなた!効率的な栄養の取り方を教えてあげるわ!まずビタミンB1を・・・」
ケイコはフラフラしている行き倒れに、栄養学的な知識を教授し始めた。
その間も(ママ、私の博学ぶりを聞いているかしら)と、もっふんママをチラチラと見ている。
しかし、やはりもっふんママは雪の宿をうまそうに頬ばっているばかりである。
それを見て再びがっかりしているケイコであったが、
「はっ、もうお稽古の時間だわ。ママ、また来るわね!」と言い、店を後にしていった。
ナオシがもっふんママに言う。
「ババア、何かもっとケイコを誉めてやった方が良かったんじゃないの。」
「もふぅ。あの娘は優秀だけど、私の評価を気にしすぎるもふ。
一皮むけて、もっとのびのび出来るまでは、モデル事務所で鍛えてもらうもふよ。」
「ふーん、ババア、ちゃんと気にしてたんだ。」
「当たり前よ、可愛い妹分もふ。そして、ババアを連呼したお前はこうもふ。」
もっふんママはナオシの頬をつねりあげる。
「イタイイタイ!ちくしょう、聞き流してなかったか!」
「あんたはもっとケイコを見習うもふ。」
ナオシをつねりあげながら、次は少しケイコを誉めてやろうかとも思うもっふんママであった。
つづく
ケイコ
○渾名:ケイコ(蔵王高湯系)
○工人:田中恵治

=====================
田中恵治工人の栄治郎型、もっふんママに次ぐ2本目です。
“もっふんママ”をスケールダウンしたもので、
顔立ちを見比べると、どこがどう違うと言えない程の微差なのですが、
何だか印象が違うのです。
“もっふんママ”より真面目な感じです。
同じこけしは2つと無いもんだとつくづく思いました。