クラブこけしの出入り業者の一人に“トウフ”という娘がいる。
その名の通り豆腐屋の娘で、平たい頭の形も豆腐の様で何とも似つかわしい名の娘である。
クラブこけしの豆腐の発注量は大所帯のため非常に多く、それらはトウフが届けに出向いてくれるのである。
「毎度有難うございます。お豆腐30丁届けに上がりました!」
「いつもありがとうございます。今日のまかないは湯豆腐かしら。楽しみだわ。」
受取に出たのは、昔、大福屋で働いていたところを大ママに引き抜かれた“もちっ娘”である。(40話参照)
「あら、もちっ娘ちゃん。今日も豆腐みたいに色白で美人さんね。」
「トウフさんの所のおいしいお豆腐のおかげですよ。」
そんな女子トークをしていると、もう一人の出入り業者“キンゾウ”(39話)、がたまたまやってきた。
トウフとキンゾウ
「やや、もちっ娘ちゃん。今日も可愛らしいですなあ。何かご用があれば聞きますよ!」
同じ出入り業者として、トウフはどうもこのキンゾウが何だかいやらしくて気にくわない。
「何してるのよキンゾウ。用が済んだんならとっとと帰りなさいよ。」
「何だ、トウフか。なんでお前にそんなこと言われなきゃならないんだよ。」
「どうせまた下心で姉さん方の御用聞きしてるんでしょうが、いやらしい!」
「いやらしいとは何だよ、ねえ、もちっ娘ちゃん。ほんと今日もモチモチっとしてて麗しい。」
「聞いた?もちっ娘ちゃん。何かこいつ、あなたの質感を妄想してるわよ。」
「はっ!キンゾウさん!そんな目で私を見ていたんですか?」もちっ娘がブルッとしている。
「え!違いますよ!っていうか、トウフだってさっき豆腐みたいだって言ってたじゃんか!」
「あんたは本当にバカね。豆腐は白の例えの代名詞よ。もちと一緒にしないで、このエロガッパ!」
「うっ・・・くっ・・・違うから!違うからねもちっ娘ちゃん。また来るからね!」
そう言ってキンゾウはバツが悪そうにピューっと去って行った。
「ふう、清々したわ。もちっ娘ちゃんもあんまりあいつを甘やかさない方が良いわよ。」
「ウフフ、やりすぎたかしら。でも、キンゾウさん気さくで良い人ですよ。」
「そうかねぇ。私はどうも気にくわないけどね。じゃ、今日はこれでね。」
そう言うとトウフも豆腐屋に帰っていった。
キンゾウをやり込めるトウフと、そんなキンゾウの姿を見るのが、
何だか好きだと言うクラブこけしの娘は多いという。
つづく
トウフ
○渾名:トウフ(蔵王高湯系)
○工人:石山和夫
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石山和夫工人のつくるこの顔立ちのこけしは、
その超然とした表情が何とも味わい深いです。
ちなみにトップのこけし棚の写真を更新しました。
かなり密度が上り、窮屈になってきています。
昔はこんな棚を見たらギョッとしていたでしょうが、
へっちゃらになってしまいました。