クラブこけしでは常にフロアレディ募集の貼り紙が店の扉に貼りだされているのだが、
お店の人員もある程度足りてきていることもあり、採用基準が高くなっているのが現状である。
つまり、優秀さや一芸に秀でているなど、スタッフの質の高さがこのところは求められている。
そんなある日、1人の採用希望のこけし娘の面接が予定されていた。
娘は名を“ハワイ”といい、福島はいわきから来たという、胴に一輪椿をあしらった素朴な娘である。
面接が始まる前、一人待たされていたハワイはとても緊張していた。
「ああ、緊張するわぁ。この緊張に勝つために、一曲歌っておこうかしら。ゴホン、では・・・
♪行こう、行こう、湯の国へ~♪ 行こう、行こう、ハワイアンズ♪
♪湯の国、湯の国、湯の国、湯の国~♪ ハワイアンズ!!
・・・ふぅ、多少は緊張が和らいだかしら。」
それはハワイの故郷、ハワイアンズのCMソングであった。
ハワイともっふんママ
その曲を遠くに聞きながら、面接のためオーナーともっふんママがやってきた。
「楽しそうな曲だのう。では面接を始めましょうか。何か特技はありますか?」
「う・・・えっと、頑張ることです!」といった感じで面接は始まったのである。
色々話はしたものの、オーナー的には少し物足りないものを感じ、内心(不採用かな)と考えていた。
「ハワイちゃん、今日はどうも御苦労さま。結果は後日連絡します。」そうしてハワイの面接は終わった。

次の日、もっふんママが何やら鼻歌を歌っているのがオーナーの耳に入ってきた。
「♪もっふ、もっふ、もふもふふ~♪ もっふ、もっふ、もふふもふふ♪
♪もふっ
もふっ、もふっもふっ、もふっもふっ、もふっもふっ~♪もふふもふふ!!
「もっふんママ、もしかしてその歌は?!」
「そうもふよ。あのリズムが頭から離れないもふ。ノイローゼレベルもふ。」
「ママもでしたか。実は私も気が付くと口ずさんでしまうのですよ。」
「今や伝染して、みんなが口ずさんでいるもふよ。こんな後からジワジワくる娘ははじめてもふ。
オーナー、採用するもふか?」
「・・・とりあえずそうしましょうか。」
と言うわけで、ラッキーにも採用が決まったハワイであった。
本人も不採用だと思っていた反動で、大喜びでハワイアンズの歌をよく口ずさんでおり、
その伝染力により、時折店内はハワイ以外誰も行った事のないハワイアンズの大合唱になっているという。
つづく
ハワイ
○渾名:ハワイ(土湯系)
○工人:渡辺鉄男
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このこけしはハワイアンズのお土産として人から頂いたものです。
自分で買ったものではないので、最初はさほどでも無かったのですが、
ずっと見ているとそれなりに愛着が湧いてきました。
良く知らなかった工人の事や、型の由来などを調べる機会にもなりました。
しかしながら、ハワイアンズの歌は時折何故か口ずさんでしまいます。