クラブこけしのオーナーの愛人が経営するモデル事務所に“しのぶ”というこけし娘が所属している。
彼女の服にはお付きの寡黙な達磨がおり、そのあご髭には『忍』の文字が刻まれている。
この達磨のあご髭は、しのぶのストレスバロメーターでもあり、この髭がタプタプになってくると、
彼女は息抜きをしたくなってくるのである。
そんな時、同郷の後輩であるクラブこけしの“トキオ”(13話)と“ハセ子”(22話)を誘い、
女子会を開くのであった。あらかじめ断っておくと、しのぶを始め3人そろって天然系の娘である。
しのぶとトキオハセ子
その日も、ストレスが溜まり、達磨の髭もタプタプになったしのぶは、
トキオとハセ子を誘い、渋谷でケーキバイキング女子会を行っていた。
「モデル稼業も何かとストレスが溜まるのよ。もう達磨の髭がタプタプよう。」
「しのぶ姉さん、今日は沢山スイーツを食べて息抜きしましょうね。ハセ子ちゃんもね。」
「はい!ところで、トキオ姉さん、あの駅前のハチ公って何なの?」
「ああ、あれね。忠犬だって噂だけど誰の犬かしらね。しのぶ姉さん知ってる?」
「もちろんよ!ええと確かあれね・・・西郷・・・西郷輝彦の犬よ!!上野に犬引いてる像もあったわ!」
しのぶのお付きの寡黙な達磨が「ブーッ」と噴き出している。
ハセ子は羨望の眼差しでしのぶをみた。
「凄いわしのぶ姉さん!さすが東京歴が長い分物知りね!でも西郷さんは何で渋谷にはいないの?」
「それはあれよ、西郷さんの帰りを一人で待ってるんだから忠犬なのよ!」
「なるほど。」
トキオとハセ子は感心し、しのぶもとても気分良くストレスが解消されていくのを感じていた。
「ふーう、今日は本当にストレス発散になったわ。トキオちゃん、ハセ子ちゃん、いつもありがとうね。」
「でもしのぶ姉さん、達磨のひげがまだタプタプよ。」
「あら、変ねえ。でも私はスッキリだから気にしないでね。じゃあまた誘うからね!」
そうしてお開きとなった女子会の帰り道、しのぶのお付きの寡黙な達磨がボソッとつぶやいた。
「隆盛・・・、そしてハチ公関係無い・・・。」
「え、何か言った?」
「いえ、別に・・・。」
ストレスを発散しスッキリのしのぶであったが、達磨自身がストレスを溜めたようで、
その髭の『忍』は相変わらずタプタプであるが、寡黙な彼は胸にしまうのである。
この3人の女子会では良くあることだと言う。
つづく
しのぶ
○渾名:しのぶ(鳴子系(外鳴子))
○工人:高瀬時男
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高瀬時男工人のこけしは好きなので何本か持ているのですが、
達磨付きの目を引くタイプのものでした。
髭の中の『忍』の文字により、忍耐強い達磨に見えます。
一説では、当時津軽系の達磨入りこけしが人気の中、
高瀬時男工人も達磨を描き入れるのだけれど、
いまいち売れ行きの伸び悩み、それに耐えるべく『忍』の文字を入れたとか。
本当かどうかはわかりません。