モデル事務所(クラブこけしのオーナー愛人が経営)に所属のこけし娘が、
今日も一人クラブこけしに遊びに来ていた。
彼女の名は“でこぱっち”と言い、くびれのある洒落た衣装を着た、
幼げな顔立ちの娘である。
この“でこぱっち”という渾名は、クラブこけしのオーナーに命名されたものであるが、
それについての疑問をクラブこけしの“ナオコ”(第38話)と相談しているところであった。
「ねえ、ナオコちゃん。ここのオーナーが何で私を“でこぱっち”と命名したのか、由来がわからないのよ。
普通、見た目とか、生みの親の名をもじったりして渾名って付けるもんじゃない。私、別におでこ広くないし。」
「それを言ったら、私の“ナオコ”だって微妙よ。オーナーの初恋の人の名らしいけど、私関係ないし。
たまにオーナーが私を呼んで、遠い目をしているのが、何だかキモいのよ。」
「でも、響きが女性らしくてうらやましいわ。“でこぱっち”って、何なのよいったい?
ちょっとオーナーに掛け合って、もっと可愛い渾名に替えてもらうわ!」
「でも、まだマシな渾名だと思うわよ。下手に話して、もっと変になったら嫌じゃない?」
でこぱっちとナオコ
そんな相談をしている二人に、通りすがりの虚弱そうなこけしが声をかけてきた。
「ナオコねえさん、おつかれさまです・・・。皿洗いが終わったので、今日はこの辺で失礼します・・・。」
「あ、お疲れさん、“行き倒れ”。ちゃんと食べるのよ。」
「はい・・・。」
そう言いフラフラと去っていく行き倒れ(第35話)を見送りながら、でこぱっちが愕然としていた。
“行き倒れ”?!何それ、彼の渾名なの?ひどい・・・」
「あれ、初めてだっけ?彼、店の前で行き倒れていたの。で、渾名もそのまま“行き倒れ”。」
「それにしたって、そのまんまじゃない!あなたのところのオーナーのセンスを疑うわ!」
「でしょう。そんなオーナーに本当に相談に行くの?」
「・・・やめとくわ。“でこぱっち”でとりあえず良しとしておくわ。」
「うちもスタッフが増えてきて、オーナーも渾名付けには苦労してるのよ。あまり恨まないであげてね。」
いつもオーナーをキモいと言っているナオコであるが、思いやりの心も多少はあるようである。
ナオコになだめられたでこぱっちは、
「くわばらくわばら」
と言いながら、モデル事務所に戻っていくのであった。
つづく
でこぱっち
○渾名:でこぱっち(弥治郎系)
○工人:井上ゆき子
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所有しているこけしには渾名をつけてめでております。
結構愛着が湧くので、オススメをしたいところであります。
佐藤春二型のこけしの目つきには、キリリとした仏目タイプと、可愛いらしい目タイプの
大きく2タイプあるのですが、
この可愛らしい目タイプに、おでこの広い特徴的なものがあったため、
このタイプはすべてひっくるめて“でこぱっち”と、勝手に呼ぶようになっていました。