クラブこけしのスタッフは増えたが、業務に対し自覚の薄い者がいるともっふんママは常々感じていた。
のほほんとした者、いやいや感のある者、本業以外の活動に精を出すもの、等々。
そんな娘達の刺激にしようと、もっふんママはエリートこけし娘を一人、招集するのであった。
娘の名は“タジ子”。こけし界三大少女の一人と謳われる家系で、本人もその自覚とプライドを持つ娘である。
一方、クラブこけしに昔からいるエリートと言えば“キイチ”である。(第9話
キイチの売上成績は、管理職を除いては概ねトップであり、この“キイチ”、“タジ子”という、
二大エリートの切磋琢磨する姿に、皆を奮起させようと言うのが、もっふんママの狙いであった。
特に、クラブこけしの言いだしっぺ“ゆさこ”にはもう少し頑張ってほしいとママは思っていた。
始業前のミーティングで、タジ子を紹介するママであったが、早速キイチとのエリートバトルが勃発した。
タジ子とキイチ
「タジ子じゃないの。何しに来たの?このお店は私がいれば十分よ。」
「あら、キイチ、いたの?相変わらず化粧が濃いわね。スッピン見た人に訴えられるわよ。」
2人とも平生は素直な人あたりの良い娘なのだが、相対するとすこぶる相性が悪い。
それぞれがエリート意識を持っており、古くからの因縁も
何やらあるらしい。
「タジ子がウロウロすると、お店が中国臭くなるから、あまり出しゃばらないでね。」
「キイチもその風船頭でうろついて、私の邪魔しないでよ。」
「売上トップは、タジ子には譲らないわよ!」
「せいぜい今のうち言ってなさいよ!」
ピリピリした中にも、
2人の仕事への前向きさに、娘達は引き締まるものを感じながらも、
あまりのギスギスぶりに場の空気が荒んでいるのを、もっふんママは見てとっており、
(想像以上だったわね。刺激が強すぎたかしら。)とママは思い始めていた。
そんな時、対峙している2人の間を1匹の巨大なゴキブリが、カサカサと横切って行った。
「ギャアアアアァッ
!!」と悲鳴を上げ、卒倒せんばかりのタジ子とキイチである。
するとゆさこがパパッとやってきて、丸めた新聞紙一閃、あっさりゴキブリを仕留めるのであった。
「まったく、最近のゴキの巨大化には目を見張るものがあるわ。」
そう言い、ティッシュでくるみごみ箱に捨てるゆさこに、娘一同大拍手で、場の空気は和むのであった。
この娘なりの強みもあるか・・・。少し様子を見るもふ。)と思うもっふんママであった。
その後も、タジ子とキイチの売上バトルは白熱し、他の娘にも良い影響が出ている様で、
もっふんママはホクホクしているが、ゆさこの、のほほんさ加減ににさほど変化は見られないという。
つづく
タジ子
○渾名:タジ子(土湯系)
○工人:斎藤弘道
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土湯温泉のまつや物産店にて手に入れました。
こけし三大少女のうち、中国娘として扱われる斎藤太治郎型ですが、
表情は弘道工人独特のものになっています。
太治郎型に対し、こけし辞典で“中国娘”との言い回しは分かるのですが、
中国料理の情味”や“中華料理のねっとりとした”みたいな言い方に、
「?」を感じつつ、先人たちの感性は独特だなと思いました。