クラブこけしのオーナー愛人はモデル事務所を経営しており、多くのこけし娘が所属、活躍している。
その所属に、“ひろ子”というこけし娘がいる。
くりくりとした目が特徴的で、胴模様もモノトーン調の横縞の中に、椿が一輪という、
なかなかに乙女スタイリッシュなもので、上背もあるので、モデルとしての素養は十分な娘である。
ひろ子アップ
そんな彼女は日ごろから何やら思う所があるようで、その日は社長に相談に来ているところだった。
「社長、これからのモデルは、笑いを取れる力が必要に思うのですが。」
「そうかしら?私今のお笑いブームみたいなのあんまり好かないのよね。」
「でも、芸人ブームや、アイドルを見ててもそうですが、バラエティー対応が必要というか・・・。
というわけで、私もネタを作ってきたので披露します!」
「やるの?これから?まあ良いわ。見せてみなさいな。」
ひろ子は持ってきたラジカセのスイッチを入れると、バラード調の曲に乗せ、語り系のネタを始めた。
「・・・ひろ子です。
胴模様の一部が、楽譜みたいだと言われるけど、そんな意図はなかとです・・・
・・・ひろ子です。
胴には黄色の横縞もあったけど、とんで消えたとです・・・
・・・ひろ子です。
実家のこけし製作が、知らぬ間に長期休業になっていたとです・・・
・・・ひろ子です、ひろ子です、ひろ子です・・・
そうしてラジカセを止めるひろ子でった。
「どうでした、社長。」
「・・・突っ込みどころが満載だわ。まず、どこかで聞いたことあるし。それに何であなたが九州弁なのよ。
何よりも、その自虐ネタは笑うよりも、何だか切なくなってくるわ。」
「でも、その辺もろもろ込みで、ジワジワきませんか?」
「ダメダメ!ひろ子ちゃんはそんな事しなくても大丈夫だから、自信持ちなさいよ。」
「うぅーん・・・では、今日のところはこれで失礼いたします。」
しぶしぶと退出するひろ子であったが、諦めていない感がにじみ出ており、ため息をつく社長であった。
しかしその日の夜、
社長はひろ子の昼間のネタや、彼女の努力等、もろもろ込みでジワジワと来たらしく、
プスプスと思わず吹いてしまうと、ひろ子の次回作を密かに期待し始めるのであった。
つづく
ひろ子
○渾名:ひろ子(土湯系)
○工人:阿部広史
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顔立ちも物によって結構雰囲気が違い、
面白いデザインだと思うのですが、
阿部広史工人の後継者の阿部計英工人は
長期休業中とのことで、残念です。
結構女性に人気の型なのかなと感じております。