クラブこけしのオーナー愛人の営むモデル事務所に、“ゆう子”というこけし娘が最近所属した。
彼女は、クラブこけしの“ボクッ娘”(第4話第33話参)と郷里を同じくし、
厭世的なボクッ娘に対し、ゆう子はポジティブな妹分的な感じで2人は仲は良かった。
何事にも妙に意欲的なゆう子は、ある日クラブこけしを訪ねて来ては、ボクッ娘に聞くのであった。
「ボクッ娘姉ちゃん、接客業の何たるかを教えてよ。モデル業だといまいち身に着かないのよ。
知り合いがクラブにいるなんて、なかなかないチャンスだわ。」
「うぅーん・・・、教えるほどのことは別にないよ。常識的に女らしく振舞ってればいいのよ。
まあ、その女らしくというのがボクには大変なんだけど。」
基本、イヤイヤ働いているボクッ娘には、人に教えるほどの手練手管は身についていないのだが、
彼女のぶっきらぼうな感じが、逆にお客受けていることを、本人に自覚はないのである。
「ボクッ娘姉ちゃんは相変わらずだわぁ。でも折角来たのに、収穫なくこれで帰るのは残念だわ。」
ゆう子とボクッ娘
そう言い辺りを見回すゆう子は、偶然通りかかった“ギイチ”(第37話)を見ると、目を輝かせ声をかけた。
「お姉さま!突然ですいませんが、日本女性の何たるかを教えていただけませんか!!
日舞でも小唄でも心得でも、何でもよいです!!」
ギイチは(また来た!)と思い、どぎまぎとした。彼女も芸のなさではボクッ娘と同程度なのだが、
その説得力のある日本女性的見た目は、ゆう子の様に、間違ったイメージを見る者に抱かせるのである。
しかし、ゆう子のキラキラした真摯な眼差しに、強く否定することが出来ず、やんわり受け流すことにした。
「ごめんなさいね、お嬢ちゃん。私は何も得意ではないのよ。用事があるから失礼するわね。」
はんなりと去っていくギイチの後ろ姿を眺めていたゆう子は、カッとボクッ娘の方に興奮して向き直った。
「ボクッ娘姉ちゃん!見た!?私は今、日本女性の奥ゆかしさを見たわ!!
能ある鷹は爪を隠す。己は引いて客を立てる!!さすがのお姉さまだったわ!!」
「・・・よかったわね。ゆう子、あんたもう、そろそろ帰りなさい。なんか面倒になってきたよ。」
「わかったわ!今日の収穫としては十分よ。じゃあまたね、ボクッ娘姉ちゃん!」
ばははーいと言って去っていくゆう子を見送りながら、ため息をつきつつも、
そんなゆう子に尊敬に値するところがあるとも感じ、
またギイチについても、改めて得な娘だわと感じているボクッ娘であった。
つづく
ゆう子
○渾名:ゆう子(木地山系)
○工人:高橋雄司
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小さなかわいいこけしです。
いわゆる高橋兵次郎型ではありませんが、
木地山系こけしのかわいらしさ、素朴さが、よく出ていると思います。
ちなみに、タイトル写真更新しました。こけし増えてきました。