クラブこけしの経理部門を担う一人、カニ菊(第18話参照)は、今日もエクセルで帳簿をはじいていた。
「カニカニカニっと。ほんとみんな無駄遣いが多いわぁ。カニカニ・・・」
いつものように独り言を言いながら仕事をしていると、窓の外からカニ菊を呼ぶ声がする。
「カニ菊ちゃーん!ここだよ。元気~!」
窓を見てそれに気付いたカニ菊は、その者の懐かしさに一瞬驚くが、すぐにフーっとため息をついた。
窓の外にいたのはこけし娘で、カニ菊と似たような出で立ちではあるが、
髪には可愛らしいリボンをし、カニの菊模様は、完全なるカニになっている娘である。
「カニ子じゃないの。ひさしぶりね。」
「えへへ。わたしモデルになったよ!!近くだからまた遊べるね!
そのとき、カニ菊の先輩である会計係(第7話参照)がやってきた。
カニ子とカニ菊
「あら、お友達?可愛らしい娘ねえ。あなたも数字に強いのかしら?手伝ってほしいわぁ。
「あの、その、会計姉さん、私達一族は勤勉・勤労をもって社会に還元すべしと育ってきたのですが、
あの娘、カニ子はちょっと・・・その、いわゆる“そっち系”に行ってしまった娘でして・・・
数字はあまり・・。」
「ええ~。もう、カニ菊ちゃんひどーい。そっち系って何よ。プンプン!」
「じゃあ、円周率言えるとこまで行ってごらんよ。」
「えっとー、3!!テヘペロだってモデルに関係ないもん。」
やりとりを聞いて、(なるほど、そっち系か。)と納得する会計係であった。
そんなやりとりに聞き耳を立てていた、たまたま配達に来ていた出入り業者のキンゾウ(第39話参照)が、
自然な流れを装っている体でやってきた。
「おや、おやぁ!どちらさんですかそのカワイイ娘さんは。会計係姉さん、カニ菊さん、ねえ、ねえ!」
めんどくさいのがやってきたわと思った会計係は、二人の娘に声をかけた。
「久しぶりの友達だし、カニ菊ちゃん、今日はもう上がっていいわよ。お茶でもしてらっしゃい。」
喜ぶカニ子と、申し訳なさそうなカニ菊であった。
「やったね、カニ菊ちゃん!どこいく?」
「うーん、じゃあ本屋にでも。」
「もう、カニ菊ちゃんウケる~
「別に狙ってないんだけど・・・」
3人の娘がそれぞれ散っていくのを、手持無沙汰になったキンゾウはキョトンと見ているのであった。
つづく
カニ子
○渾名:カニ(作並系)
○工人:平賀輝幸
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西荻こけし祭で買ったものですが、
髪にはリボン、胴のカニ菊は完全にカニ、そしてウィンクしています。
輝幸工人は結構いろんな要求にこたえてくれる方のようですね。
賛否の声も聞こえますが、私は良いんじゃないかと思います。
平賀系なればこそ、また輝幸工人の筆の正確さがあればこそ、
可能なデザインだと思います。