『南部のおしゃれ女学校』を主宰する赤んぼ先生(43参照)は、こけし娘の書生を一人かかえていた。
クラブこけしへの出張講義も定例化してきたところで、
赤んぼ先生は、その娘もアシスタントとして同行させることにした。
娘の名はツタフミ
”と言い、良家の娘さんである。
その特徴的な襟飾りもしっかりと糊がきいており、おしゃれであれ、勉学であれ、探究心旺盛な娘である。
赤んぼ先生の博学さに感銘を受け、弟子入りしていたのであった。
ツタフミと赤んぼ先生
そんなツタフミには独り言をつぶやくと言う変わった癖をもっていた。
本人も無意識のため、そのつぶやきを覚えていないのだが、どうやら本心が漏れ出るようである。
ある日、クラブこけしでの講義に向けて準備をしている時のことである。
「では、ツタフミよ、今日はOHPを使うので、準備をするでち。」
「はい先生!・・・OHPって、今の時代あり得ないわ。パワポが普通じゃない?
「何か言ったでちか?」
「いえ、何も。OHPですね。準備しておきます。」
「うむ。ところで、今日のわたしの身だしなみに変なところはないかね。
「はい先生!今日も凛々しく決まっていますよ・・・あのよだれかけ、やっぱり微妙だわ。今さらだけど。
「やっぱり何か言ってないでちか?!」
いえ先生、何も。さあ、もう出発しましょう!
「う、、うむ。では荷物を持ってついてくるでち。
「はい先生!・・・荷物重たいわぁ、先生も少し持ってほしいわぁ。
意外と鈍い赤んぼ先生とツタフミはいつもこんな調子なのである。
講義では先生のアシスタントをしている彼女であるが、その間も彼女の独り言はつづき、
クラブこけしの受講生の多くはその独り言も楽しみの一つとして聞き耳を立てているほどである。
・・・今日も先生ノリノリだわ。」「・・・その説明さっきもしたわ。等々。
ただ、その独り言の多くは、
やっぱり先生はすごいわぁ。
といったものであり、基本、赤んぼ先生をとても尊敬してはいるツタフミであった。
つづく
ツタフミ
○渾名:ツタフミ(弥治郎系)
○工人:蔦文男
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蔦作蔵工人の実子の方の文男さんのこけしです。
蔦家のこけしの、おかっぱの髪型にさらに鬢が下がっているのが、
特徴的で可愛らしいと思います。
この文男工人のものについては、小寸ながらも胴模様も精緻に描かれており、
丁寧に作られたこけしだなあと思っています。