クラブこけしのバイトリーダー、ミナオ(第6話参照)が散歩をしていると、
向かいから別のこけし娘が歩いてくるのに気がついた。
そのボディーバランスに同郷のにおいを感じ、やってくる娘をミナオは気にしながら見ていた。
模様をその胸元や、ゴージャスな膨みのスカートにあしらい、また髪飾りにも梅を用いたその出で立ちは、
洋風の様でも和風の様でもあるが、とにかく派手なものであった。
娘の名は『梅子』といい、クラブこけしのオーナーの愛人経営のモデル事務所に所属している。
梅子も近づいてくるミナオをみて、そのポップカラーな横縞や、耳にきらめくピアスに気を引かれていた。
近づいた2人は互いに挨拶をし、お互いが、クラブこけしとモデル事務所という、
親交のあるところに所属していることを知り、また、同郷であることも判明し、仲良くなるのであった。
梅子とミナオ
「そういうことなら、じゃあ、梅ちゃん、カラオケ行こう!」
「どういうことなの?うーん、あまり得意じゃないけど・・・まあ、いいよ。」
バイトリーダーとしての性癖か、親睦を図るには、とりあえずカラオケだと思っているミナオは、
早速梅子を誘うのであった。
カラオケ店にて、ミナオが無難に1曲歌った後、ミナオは梅子に催促した。
「次、梅ちゃんだよ!!曲入れてあげるよ。どれ?どれ?」
「ううん・・・じゃあ、これで。」
「襟裳岬!?」
「うん、好きなの、これ。わたし、釧路国での生活も長かったし。」
「クシロノクニ?ここ日本国だよ?」
そのあたりのミナオの疑問をスルーし、梅子は歌い始めた。
「北の~町では~もォお~ 悲しみをぉ~ ダハンろでぇ~~♪」
「う・・・上手い!しかも、ものまねまでちゃんと入っている!!」聞き惚れるミナオである。
「えリィィもの~ 春ぅは~ぁぁ 何もぉ ない はァァるですぅぅ~~♪」
拍手喝采のミナオと照れる梅子。
やはり親睦を図るにはカラオケが一番だと思う、
クラブこけしのシフトも組んでいるバイトリーダーのミナオであった。
つづく
梅子
○渾名:梅子(弥治郎系)
○工人:大野栄治
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こけしの裏書きの工人署名の部分“釧路国”というのに、
何やら時代感というか、迫力を感じます。
筆致においても、梅の枝分かれの描写の細かさは、もう驚愕です。
その他の部分も全体的に繊細に描かれており、
寡作な工人さんであったとも聞きますが、納得です。
顔立ちは大陸のにおいを感じます。