その日は月1回の、顧問役員によるクラブこけしの店舗視察の日であった。
クラブこけしの顧問役員は大ママ(第11話参照)である。
視察とは名ばかりで、業界OGの大ママがおしゃべりをしたいだけの会でり、
茶菓子を飲み食いしながら、世事やら昔話やらを、もっふんママや若いスタッフを相手に話すのである。
大ママは、いつも茶菓子は持参するようにしており、それらを買おうと商店街を歩いているのであった。
ふと見ると新しく大福屋が出来ていた。
ショーケースを見ると、もち部分厚めで、あんこ少なめの大福が並んでいる。
「あら、あたし好みの大福だわ。オーナーもこんなのが好きだったはず。
これにしようかしら。ちょっとー、これ下さいな。」
大ママがそう言うと、中から大層愛想の悪いオヤジが出てきた。
「今予約でいっぱいで売れるものは無いよ。コラッ!サボらずしっかりやれ!」
オヤジは奥の従業員に向かって激を飛ばしている。
「は、はい、旦那さま。」
もちっ娘と大ママ
涙目でせっせと動いていたのは色白の、まるで大福もちの生地のようなこけし娘であった。
大ママはその娘を見て(
もちっだわと見た目で命名する。
オヤジは
もちっ娘に激を飛ばし続ける。
「まったくこの鈍間が!田舎に送り返すぞ!ちょっとおばさん、そういうわけだ。もう帰ってくれ。
おばさんと言われ大ママはブチ切れる。
「ふざけんじゃないわよ!だったらケースに大福並べるんじゃないわよ!
あとその
もちっ娘。私が引きとるわ。あんたの所じゃ不幸になるわ!もちっちゃん、いらっしゃい。
「勝手なことぬかすんじゃねえぞこの婆ぁ!」
そう言うオヤジを大ママがギロリと睨みつける。
大ママのギョロ目からほとばしる目力はすごく、オヤジは竦んで何も言えなくなる。
「さあ、
もちっちゃん、こっちにいらっしゃい。
「あ、ありがとうございます。でも本当にいいんですか。」
「心配無くってよ。あなたを紹介した時のオーナーの顔が想像できるわ。」
そうして、立ちすくむオヤジを残し、大ママと
もちっでクラブこけしに到着するのであった。
いきさつをオーナーに説明する大ママ。それをフルフルと目を輝かせて聞いているオーナー。そして、
もちっ娘は大歓迎じゃぁぁ!」と大喜びのオーナーである。
オーナーはもちの類は大好きな上、そう言った質感を連想するものも大好きなのであった。
今までにない歓待を受け、
もちっ娘もうれしく思い、「よろしくお願いします。」と頭を下げるのであった。
つづく
もちっ娘
○渾名:もちっ娘(南部系)
○工人:煤孫盛造
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原作者が不詳とよく紹介されている南部系の型のこけしです。
さすが木地とフォルムで魅せる煤孫系のこけしだけあり、
とてもきめ細やかで、色白さも際立ち、
まるでもちもちしっとりとしただんごのようです。
余談ですが、工人も機嫌のいい時ばかりではありません。
訪ねる際はアポイントをとっておくほうが良いということを学びました。