クラブこけしには、食材の配達やら、おしぼりの配達やら、
その他もろもろを請け負っている出入りの業者がいる。
その業者の担当者は、“キンゾウ”という男のこけしである。
キンゾウはこの仕事にさほど身を入れて励んではいないのだが、
クラブこけしに行くこと自体はいつも楽しみにしている。
お店にいる沢山のこけし娘達と会ったり、時に会話をしたりするのが楽しいのである。
というか、それ以上に彼は妙な期待をしている節もある。
そんなわけで、お店に用向きで行くときの彼の顔はキリリとしている。
本来のニヤついた顔立ちを今一つ隠しおおせていないが、
年頃の彼はやはり娘達には良く見られたいのである。
キンゾウアップ
ある日、いつものように一通りの配達業務を済ますと、
キリリとした顔(と思っている)で、お店の娘達、とりわけ
いい女とされる部類に声をかける。
「チーママ、何かほかにご用はありますか?電球の交換とか。」
「あらキンちゃん、いつもありがとうね。でも今は大丈夫よ。
デレデレしたキンゾウはまた別の娘に声をかける。
「トキオ姐さん、何か買い物でもあれば代わりに行きましょうか。」
「あら、ありがとうね。また今度何かあったらお願するわ。」
もう、キンゾウはそんな気配りによって、自分の株はきっとうなぎ上りに違いないとウヒウヒしている。
そんなところに、もっふんママと、ゆさこがやってくる。
「じゃあ、キンちゃん、お菓子の“雪の宿”買ってきてもふ。小腹が空いたもふ。
「えー、じゃああたしもポテチ食べたい。キンちゃんよろしくね。」
なんとなくテンションの下ったキンゾウであるが、総合評価を得るためにも
この辺の依頼も無には出来ない。(急がば廻れ)と心の中で念じるのである。
「了解!じゃあ、ぱぱっと行ってきますね。」と気持ち大きめの声で返事をし、出ていくキンゾウであった。
“出来る男”的なアピール意図があってのことであるが、そこまで誰も気にしていない。
もっふんママとゆさこは話している。
「もふーぅ、彼の行動は下心が見え透き過ぎだけど、なんか健気だわぁ。
「便利だから別にいいよ。その為にも姐さん達に優しく接するようにお願いしてるし。
そう言ってフフ
フとニヤける二人であった。
つづく
キンゾウ
○渾名:キンゾウ(南部系)
○工人:高橋金三
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高橋金三工人の藤井梅吉型のこけしです。
南部系は私の中で、これは男性であろうという位置づけのこけしの多い系列です。
こけし棚の中で、そう言った男性こけしが混ざると、
女性に囲まれたパラダイス状態のように見え、その表情も何だかニヤついて見えます。
このこけしについては、ニヤけすぎていて、なんかもう下心があるように見えます。