クラブこけしのスタッフ数も増え、その面々は個性的な者が多いので、
オーナーは、「ここはひとつ、しっかり者を採用し、全体の引き締めを図ろう。」と思い立つ。
そして、兼ねてより「あの系統の娘はきっと芸達者でしっかり者に違いない」と思っているものがあり、
早速スカウトしてくるのであった。
ギイチアップ
採用されたこけし娘の名は“ギイチ”という。
こけし界でも名門の娘で、その特徴的な鬢の下りや、落ち着きのある眼差しは、
正に凛とした日本美人の出で立ちである。
採用に当たってオーナーはギイチに言う。
「ギイチちゃん、うちの娘達はおてんばなのも多いので、
ちょっと“これぞ日本女子”的なことを教えてあげて下さい。お琴でも日舞でも何でも良いですぞ。」
「はあ、私はあまりそう言ったことは得意ではありませんので・・・。」
「またまたご謙遜を。まあ、追々で良いので頼みますぞ。」
「はあ・・・最善は尽くす様にいたします。」
また、とある別の日のもっふんママとギイチの会話である。
「ギイチちゃん、お花いっぱいもらったから生けてみたもふよ。どうかしらん。」
「はいママ、大変綺麗にまとまっていると思いますよ。」
「もふーう。なんかギイチちゃんに言われると照れるわぁ。おはずかしいもふよ。」
もっふんママは、ギイチを生花に長けた者と思っているようである。
ここまでくればお分かりのように、そうなのである。
ギイチは別にお琴も日舞も生花も、その他日本的なものの嗜みを特に身につけてはいない。
ただ単に見た目でそう思われているだけなのである。
確かに物腰は清楚なので、見る人のイメージを勝手に暴走させるらしい。
本人もそのことに気付いており、否定することもあるのだが、信じてもらえない事が多い。
クラブこけし内でも、チーママ(第5話)等の聡い娘はギイチの素性に気付いているが、
勘違いしている者たちを正すことは無いし、それに意味は無いと思ってもいる。
寧ろ、ギイチの出で立ちや物腰から発するオーラに学ぶところがあると思っている。
ある日、チーママがギイチと話す。
「ギイチちゃん、これはとても得な事なのよ。説得力があるって、すごいことなのよ。」
「得ですか・・・。では内面ももっと追いつくよう頑張ります。」
いずれにせよ、ギイチは働き者だし良い娘なので、皆の手本にはなっているのであった。
つづく
ギイチ
○渾名:ギイチ(鳴子系)
○工人:高橋義一
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横浜人形の家にて、高橋義一(よしかず)工人に挽いてもらいました。
鳴子こけしの中でも、この勘治型のこけしの表情は、
なんと言うか説得力があるのです。
何の説得力かと言えば色々なのですが、とにかくあるのです。
目力の強さや、鬢や、大輪の菊模様等、総合的に迫力があるのです。
私も、中身の研鑽にも精進いたしますが、
見た目にも説得力のある人間になりたいとも思うことは多々あります。