クラブこけしのオーナーの愛人の経営するモデル事務所に所属のとあるこけし娘から、
「クラブこけしの見学がしたい」との申し入れがあった。
正確にはその娘ではなく、お付きの爺(じい)からである。
お付きの爺というのは、その娘のスカートの柄として住み着いている達磨のことである。
娘が小さい時から子守役としていついており、娘にはおせっかいなくらいに過保護である。
そのため、ただでさえ引っ込み思案な娘は、余計に口ごもるシーンも多い。
そんな娘に社会勉強兼、友達作りをとの、爺の提案による見学なのであった。
お嬢と爺
「お嬢!着きましたぞ!ここがこけし娘の営むクラブですぞ!」
「ムグゥ・・・緊張する・・・」
「しゃんとしなされお嬢。今日はとくとお仲間の働きぶりを見て、友達も作りましょうぞ!」
そうして、店に入るお嬢と爺である。出迎えたのはもっふんママであった。
「いらっしゃい。話は聞いてるもふ。好きにみていってちょうだい。」
「本日はよろしく頼みますぞ。お嬢もよろしくと言っておるのです。
「そうなの?なんかムグムグ言ってるのしか聞こえないもふよ。
「言っておるのです!お嬢は人見知り故気になさらず。ではお嬢、あちらに行ってみましょうぞ!」
そう言い、爺はお店の各場所や働いているこけし娘達の中、お嬢を連れまわすのだった。
爺がひたすらにあれこれ説明しているが、お嬢は緊張からかムグムグと口ごもるばかりである。
そんなところに、鳴子こけしの“ゆさこ”がやってきた。
「わお。すごい服だね。わたしゆさこ。その服『
ど根性ガエル』みたいね。」
「お嬢!!チャンスですぞ!さあ、友達になるべく会話をするのです!さあ!!
「ムグ・・・あたし・・・ムグゥ」
「ええい!!爺が代わりに申しましょう!お嬢は津軽は黒石の・・・」
そのときゆさこは、何かウズウズし、丁度持っていたミカンの皮を爺の眼の前でビシュっとつぶしてみた。
「ぐおぉぉ・・・汁が・・・目に・・・」
「おお!この服凄い良くできているね。ちゃんと反応するのね。
悶絶する爺をみて、お嬢は何だか面白くなり、緊張も解けたようである。
「爺がうるさくてごめんなさいね。私はお嬢です。ゆさこちゃん、友達になってくれる?」
「うん、いいよ。早速『クウネル』(マガジンハウス)貸してあげるよ。」
爺はしみる目に堪えながら、「やりましたな、お嬢!!」と涙を流している。
それらの顛末を遠くからみていたもっふんママは、
「あの爺はいない方が良いもふ。」と思っていた。
つづく
お嬢
○渾名:お嬢(津軽系)
○工人:阿保金光
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とても愛嬌のある表情の阿保金光工人のこけし達は、
その口元はなんとなくムグムグっとした感じのものが多いようです。
口下手な娘を補うように、熱血漢の達磨が雄弁にサポートしているかに思えました。
達磨の目は涙をためているようにも見え、お嬢の成長を噛みしめているかのようです。
達磨付きのこけしは、上下関係性を色々想像でき
そういう目で見ているとなかなかに楽しいです。