少し前に、クラブこけしのスタッフ募集の貼り紙を見て面接をし、採用されていたこけし娘がいた。
名を“ゴヘイ”という。響きは勇ましいが娘である。
彼女は、決して仕事に対する情熱があった訳ではないのだが、
何か仕事はしなければいけない様な義務感は持っていた。
その仕事に直接のやりがいは感じなくとも、そこでの経験はいつか自分の為になると信じてはいる。
未だその成果を感じたことは無いのだが、そういった日常の積み重ねを、
面白くあろうが無かろうが、怠ってはならないと思っているような娘である。
面接時にそんな理屈をもっふんママに話したところ、
「めんどくさい娘ねぇ。とにかくやってみればいいもふ。」と言われ、採用された。
そんなゴヘイではあるが、先輩のボクッ娘(第4話)とは馬が合ったようである。
二人とも根底にうっすら“イヤイヤ感”を持っている者どうしである。
ゴヘイとボクッ娘
「ゴヘイちゃん、どう、仕事慣れた?」
「ああ、ボクッちゃん。まあね。慣れるも慣れないも、やらなきゃって感じだよ。」
「そうだね。僕も母の手前もあるしね。」
(ボクッと母については第4話参照)
「ところでさ、たまに『好きなことで、しかもお金がもらえて幸せ』とか言う人いるけど、どう思う?」
「好きなことだけでお金がもらえるわけないじゃん。嘘が多分に交じっているよ。」
「やっぱりそうかなあ。でも、凄い笑顔で言ってたよ。本当だったらなんかすごい悔しいよ。
不毛な会話である。こんな類の話を二人はよくしているのである。
しかし、そんな話をするゴヘイの顔は、面接時よりも柔和なものになっている。
「ゴヘイちゃん。この件については実例を挙げて、もう少し検証してみようよ。」
「そうだね、ボクッ娘ちゃん。ある程度はっきりさせないと、なんだか遣りきれないよ。
「じゃあ、仕事終わったら、いつもの喫茶店でね。」
うん、わかった。
そう言ってそれぞれの仕事に戻る2人であった。
そんなやりとりを柱の陰からうかがっていたのはもっふんママである。
何を思ってか、嬉しそうにもふもふしている。
「得難きは時、逢難きは友よ。もふぅ。」
そう言って立ち去るもっふんママである。
最近は怠慢な一面が目立ち、あまり皆に顧みられていないが、
もっふんママは、クラブこけしのママを張るだけの深い器量を持っているのである。
つづく
ゴヘイ
○渾名:ゴヘイ(鳴子系)
○工人:小松五平
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小松五平工人のこけしを他の実物や資料で見るのですが、
嬉しそうな顔をしているのを見たことがありません。
なんとなくつまらなそうな、不満そうな顔をしています。
口元の描き方がそんな感じに思わせるのでしょうか。
しかし、胴のくびれや、ひょろひょろっとした菊など、
そんな顔立ちも含めて、とても魅力的なこけしです。