もっふんママが朝からそわそわしていた。
今日は月1回ある顧問役員の店舗視察の日で、しかも新年一発目である。
顧問役員というのは第11話でも述べたように、こけしの業界団体から各店舗に
割り振られる後見者のことであり、クラブこけしにに於いては大ママがその任についていた。
しかし何かの都合で大ママが来れなくなり、代わりになんと“キイチ姉さん”が来るとのことであった。
“キイチ姉さん”と言えば、キイチ一族の中でも頂点に君臨する、伝説の姉さんである。
大ママならば、ぬるぬるとやり過ごそうと思っていたもっふんママであるが、
姉さんとなると気を引き締めねばならぬと、奥で精神統一をしているもっふんママであった。
そんな時、カランコロン
「お邪魔するョ。もっふんママはいるのかィ。
キイチ姉さんアップ
キイチ姉さんが現れた。たまたま近くにいた事情を良く知らないナオシ(第25話)が出迎えた。
「ママ~、なんか派手なおばさんが来たよ。」
奥からもっふんママがダッシュでやってきてナオシを無礼者とつねり上げる。
「イタイイタイ!ちくしょう。またか!」
キイチ姉さんは微笑みながらそれを見ていた。
「なんだいママ堅い顔して。緊張してるのかィ。別に妾(わたし)ァ何も取って食いやァしないよ。」
「失礼な娘で申し訳ないもふ。」そうしてナオシを奥へ放り出すもっふんママであった。
「で、どうなんだお店の調子は?」
そうして、最近の経営状況を話しあうのだが、キイチ姉さんのはんなりとした身のこなしや、
その気風の良い口調からはすごいオーラが出続けている。
間が持たなくなってきたママは、ゆさこに二人分のお茶を持ってくるよう言いつけた。
しかし、出てきたお茶はぬるい上に薄い。ゆさこご自慢の茶葉少なめの
倹約茶である。
気まずさを感じたママは想定より早く奥に向かって叫んだ。
「キイチちゃーん。お姉さんがきているもふよ!
「はーい!あ、姉さん!!今日はどうしたの。
奥から出てきたのはクラブこけしで働いている方の“キイチ”である。
どうだィ、皆さんに迷惑かけずにちゃんとやれているのかィ。
「はい!みんな良くしてくれるし、がんばってやってます!」
そうかィ、そりゃあ何よりだ。あんたのその顔が見れりゃァ妾も安心だよ。
じゃあママ、妾ァそろそろおいとまするョ。上には良くやってるって伝えておくさァね。

至らない対応で悪かったもふ。ところで大ママはどうしたの?
「ああ、あの人なら正月に餅を食いすぎて、お腹がいたいって、寝込んでますよゥ
自分の強いられた緊張に対し、大ママのお気楽な状態のギャップに
なんだか苛立ちを感じるもっふんママであった。
つづく
キイチ姉さん
○渾名:キイチ姉さん(弥治郎系)
○工人:佐藤喜一
=====================
念願だった佐藤喜一工人のオリジナルが手に入りました。
第9話での新山吉紀工人のものも元気がありそうな娘で良いのですが、
こちらの方はもう、「大人」って感じです。
妖艶でありつつも、品格があり、しかも気風も良さそうな感じがします。
もう、個人的に好きすぎて、筆舌に尽くし難いほどです。
ちなみに私は、一人分のお茶を1杯だけ飲むことが多く、
いつも茶葉少なめの倹約茶です。
茶葉を長時間お湯に浸すので少しぬるくなります。