クラブこけしのママ、もっふんママの家柄は大変に格式が高く、
この家の娘達は若き日より読み書きそろばんから、芸事、教養等、幅広く学び、
それぞれ立派なこけし娘となるよう日々研鑽を積んでいる。
しかし年頃の娘などは、そういった家柄に反発をし、はねっかえりとなる者もいる。
そんなわけで、最近の一番の問題娘が“ナオシ”であった。
彼女は隙を見ては教室を抜け出し、仙台に遊びに行ってしまう。
を焼いた教官たちは、もっふんママに連絡をし、ナオシを現場でたたき直してもらうよう頼んだ。
その方針を聞かされたナオシは、
「え!もっふんママのところ!?・・・」と、青ざめガクガクし始める。
かつて先輩であったもっふんママには大層厳しい指導を受け、それはトラウマなる程だったのだ。
「せっかくあの鬼ばばがいなくなって清々していたのに!」
しかし、それなら尚更だということで強制的に東京に送りだされるナオシであった。
ナオシとママ
クラブこけしに着いたナオシ見るや、もっふんママがゆらりと立上り言う。
「あら、ナオシちゃん。大層やんちゃしていたようねぇ。一から鍛え直すもふ。
早速あそこのお皿全部洗って。

「私まだ着いたばっかなのに!・・・ううぅ・・・はい。」
しぶしぶ皿を洗い始めるナオシであるが、タイミングを見ては逃げだそうとする。
しかし、そこはお見通しのママが即座に捕まえ、ナオシをつねり上げる。
「イタイイタイ!ちくしょう、この鬼ばばあ!私はパルコに行くの!
せっかくの東京なんだから、東京のパルコに行きたいの!!
「うるさいもふ。パルコなんて10年早いもふ。次は雑巾がけよ。
そうなのである。もっふんママは同門の娘、特にナオシにはすこぶる厳しいのだ。
しかしそれは(昔の私を見ている様)という隠れた思いからくるママの愛のムチなのである。
そうしてもっふんママによるナオシ再教育が始まったのである。
その間何度も逃げ出そうとするナオシだが、その都度のママの体罰や、スタッフの慰めによって
なんとか引き留まり、1ヶ月後、やっと休みをもらえたナオシであった。
「いやっほーい!パルコよ!今日こそパルコに行くのよ!!」
そうして、仲良くなったゆさことパルコに行ったナオシは、もう大はしゃぎだったという。
「ゆさこちゃん、私パルコがあれば頑張れるよ!今度ラフォーレ行こうね!」
本当は家でゴロゴロしてたいゆさこは生返事をするが、
どうやらナオシが前向きになった様で安心するのであった。
しかし、その後もナオシとママのやりあいは相変わらずであるという。
つづく
ナオシ
○渾名:ナオシ(蔵王高湯系)
○工人:岡崎直志
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同じ岡崎栄治郎型のこけしでも、工人が違うととイメージが大変異なるものです。
このこけしの表情からは大層なやんちゃぶりをイメージしてしまいます。
デザインは堂々とした風格があるのですが、その表情から、
名門であるが、はねっかえり娘といった感じがしました。
なお、私は久しくパルコには行ってませんが、出が田舎者なので、
かつてはパルコと聞けば、その都会的響きに何やら胸躍ったことを思い出します。