クリスマスも近づき、クラブこけしのオーナーは愛人へのプレゼントに苦悩していた。
オーナーの愛人(モデル事務所社長)はそれなりに目が肥えており、
ちょっとやそっとの物では例年喜ばないのである。
悩みながら、とある百貨店のクリスマス催事場をうろつくオーナーであった。
近くにラッピング専門のコーナーがあり、通りかかかったオーナーは声をかけられる。
「お客さん、リボンひとつでプレゼントは化けますよ!いかがですか。
声をかけてきたのは、前髪にリボンを付けた、こけし娘のラッピングスタッフであった。
リボンのリボン
おや、こけし娘か、と思うのであったが、その娘に不思議な何かを感じ、
オーナーはむむっと唸りながらよくよく見いるのであった。
(鳴子娘か・・・?遠刈田娘か・・・・?バランスは鳴子っぽいが・・・。
しかし、このリボンはいったい・・・?)
気になり娘に聞いてみるオーナー。
お嬢さん、出身はどちらかな?
「はい、蔵王です。リボンといいます。」
「なんと!蔵王とは!想定外だのう。しかし、リボンでかわいく化けたものよのう。
「うふふ。そうなのです。リボンマジックなのです。プレゼントも同じですよ!」
「なるほど。プレゼントも素敵にラッピングしておいて、中身は女子大好きマカロンでも入れておけば、
きっと“かわいい”と言って、泣いて喜ぶに違いない!

「ええと・・・それはどうか・・・」
「うむ、決まった。ありがとう。そして、そんな素敵な助言をくれた君はクラブこけしに引き抜きじゃ!」
かくして、百貨店と交渉し、はれてリボンはクラブこけしに引き抜かれるのであった。
たまに前髪のリボンを外して、鳴子こけしに化けるリボンの一発芸は、
鳴子こけしのゆさこにばか受けしているという。
なお後日、オーナーは美しくラッピングされたマカロンを愛人にプレゼントしたが、
激しく却下され、説教まで受け、再びのプレゼント探しがクリスマスを過ぎても続いているという。
つづく
リボン
○渾名:リボン(蔵王高湯系)
○工人:秋山一雄
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某こけし屋さんでこのこけしを見たとき、
隣には秋山一雄工人による鳴子型の同寸のものが並んでおり、
知識のなかった私は、なぜ蔵王系の工人さんがこんな作り分けをしたのだろうと思いました。
一雄工人の父慶一郎工人は鳴子の出身だということを、そのお店で知り、
なあるほどと思ったものでした。
しかしながら、頭の形や肩の丸み等、木地が特徴的で、
鳴子の顔や模様をまとっても、やはり鳴子のこけしとは一線を画している様に感じ、
その化けきれない感じがとてもかわいく思いました。
ただ、このリボン型が途絶えてしまった型であるのはなんとも寂しい気持ちになります。